Sランク冒険者達
2023/10/02 表現を少し変更しました。
「よぅ!久しぶりだな。やっと取りに来たか」
「お前が推薦の条件として呼んだんだろうが…」
俺がリッケルトの冒険者ギルドに行くと、すぐにギルマス部屋へと案内されました。事前に話は通っていたみたいです。
そして、部屋に入った途端バルさんはこんな調子ですよ…。
「礼を脅してでも渡すってどういう感覚なんだ?」
「悪い悪い。普通に呼んでもなかなか来ないだろうと思ったんでな。利用させてもらった」
まぁ…確かに否定は出来ないけど…。
「レイオスで冒険者するならリッケルトでやりゃあ良いのに。何かリッケルトじゃ駄目な理由でもあるのか?」
「まぁな。理由は有るが秘密だ。それと、サリオンとハルトにも言ったがレイオスから移籍する気は無い」
「はっ。陛下にはレイオスなんてどうでも良いとか言っておきながら良く言うぜ」
おっと、王城での事がもう広まってましたか。じゃあ補足しておきましょう。
「別にレイオスに愛着が有る訳じゃない。ただ『今はそういう予定』だというだけだ。ビオス王国が敵対するなら予定は変えるさ」
「はいはい。そういう事にしといてやるよ。レイオスをどうこう出来る力なんて俺にはねぇから心配すんな」
バルさんはそう言うと、机の引き出しを開けて握り拳よりも大きな皮袋を取り出した。そして、それを俺に向かって放り投げてくる。とりあえずキャッチしたが…。
「これは?」
「ゴブリンロード討伐に関する礼だ。呼び出す理由に利用したが、渡したかったのは本当だからな。まぁお前には端金かもしれんが受け取ってくれ」
たぶん金貨かな。中身は100枚くらいだと思います。
「ありがたく受け取ろう。で?推薦を餌に俺を呼び出した理由は何だ?」
「あぁ。お前に言っておきたい事があってな。俺はSランクの奴等みたいな特殊な力は持ち合わせていないが、人を見る目なら負けてない自信がある」
「何が言いたいんだ?」
「まぁ、俺に出来る事が有るならいつでも言ってくれ。どちらとしてもな」
「………。」
どちらとしても…。1つはライトだとして、もう1つは…トールだよね?
「あ、もう1人にはライトから伝えといてくれ。お前さん…いや、お前達は色々と秘密にしたいみたいだからな。俺から言うのは控えておいてやる」
ぐぬぬぬぬぬぬ…。サリオンとハルトにはレフの事がバレる可能性があると警戒してたけど、バルさんも駄目だったか…。見くびってましたよ…。
ライトの正体がトールな事は、ゴブリンロードを倒した時から怪しまれてたっぽいしな…。仕方ない…。
「何を言ってるのか分からんが、了解だ」
「はははは。本当に分からなかったら了解しねぇだろ」
そりゃそうだ…。
「ほら、お前のSランク推薦状だ。持ってけ」
「あぁ。助かる。秘密についてもな」
俺はバルさんからSランク推薦状を受け取りました。
「もし緊急で俺と連絡を取りたい場合はもう1人に言ってくれ」
「気を使わせちまったな。あんがとよ」
「それじゃ、これで失礼する」
「あぁ、またな。たまには理由が無くても遊びに来い」
まぁ、時間があったらね…。
俺はゲートを開くと、リッケルトの東門で待ってるバレッタの元へと移動しました。
「バレッタ。推薦状を受け取って来たぞ」
「ライト様、ありがとうございます。内容も……問題ありません。確かにお預かり致しました」
「そうか、良かった。この後はどうなる?」
「予定通り3日後にレイオスの冒険者ギルドへいらっしゃって下さい。サリオン様が事前に準備して下さっているので直ぐに承認されるはずです」
「分かった。では宜しくな」
「はい」
やっとここまで来ましたね。これもバレッタのお陰です。実は1つ考えてる事があります。バレッタに俺の事はバレてないと思うけど…それで本当に良いのかな…?
それから約束の日まではクエストをして過ごそうと思っていたのですが…トールとして行ったらバルさんから『さっそく遊びに来たのか?』とか言われたので、イラっとしてそのまま帰りました…。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「バレッタ。約束通り来たぞ」
「ライト様、ご足労頂きありがとうございます。特別応接室の方へお願いします」
「ん?分かった」
あれ?他に誰か来るのかな?いつも2人っきりの時には使わないんですけどね。
俺は言われた通り特別応接室へと向かいました。うん、誰もいない…。とりあえず座るか…。
すると、バレッタが遅れて部屋に入って来ます。やっぱり1人ですね。
「他に誰か来る訳じゃないのか?」
「いいえ、2人です。人の目がある所ではお見せできない物がありますので、こちらに来て頂きました」
「なるほどな。それは何だ?」
「その前に…」
バレッタは深々とお辞儀をしてから言いました。
「ライト様のSランク昇格申請について、冒険者ギルド本部による承認が下りました。ライト様は7人目のSランク冒険者になります。本当に…おめでとうございます」
そして、バレッタが銀色の板を渡して来ます。どうやらギルドカードの様ですね。
「こちらはミスリル製のSランク専用ギルドカードになります。どうぞお受け取り下さい」
「ありがとう。ついにSランクか。長かったな」
「ふふふ、何をおっしゃいます。冒険者ギルド登録から1年未満は最短記録です。しかも圧倒的な」
1年どころか4ヶ月くらいだもんな…。これもバレッタのお陰だ。そんなバレッタに嘘をついてて良いのだろうか…。
俺はバレッタの事を全面的に信用してる。感謝してる。それを伝えるためには…。
俺は…自分が被っている愚者の仮面にそっと両手を添えた…。
「あ…駄目です!ライト様!」
俺は愚者の仮面を外すと、そのままアイテムボックスへと仕舞った。そして、金色になっている髪の毛を水色に変更する。
「すまないバレッタ。リッケルトでは知らない振りをして」
「いえ…。リッケルトを案内して頂いた時に気付きました。トールさんはライト様だと。私こそ気付かぬ振りをして申し訳ありません」
え…あれ?バレてたんだ…?いったいいつ…。これは恥ずかしいな…。
「あと…俺の本当の名前は高杉透と言う。アクル王国に召喚された異世界人だ。一緒に召喚された仲間を助けたい。そして、元の世界に帰る方法を探している」
「そ…そんな秘密を私なんかに話してはいけませんわ!私がお金欲しさにアクル王国へ密告したらどうするんですか!?」
「バレッタはそんな事しないさ。それに、もしやったとしてもバレッタなら許せる。だが、一方的に秘密を押し付けてしまい悪かった。俺に出来る感謝と信頼の証として、これ以上の物が思いつかなかったんだ…」
バレッタは、一瞬泣きそうな顔をすると後ろに振り返ってしまいました。
「ヤ…ヤバいですわ…。悪かっただなんて…気になさらないで下さい。ライト様にここまで信頼して頂けた事、とても嬉しく…本当にとても嬉しく思います…」
バレッタはこっちを見てくれません。顔を見られたくないみたいです。
「ありがとう。そう言って貰えて助かるよ」
「では、これからはアクル王国や異世界人に関する情報も集めますね」
「それは助かるな。バレッタ、今後とも宜しく頼む」
「こちらこそですわ。あっ…」
バレッタが何かを思い出したみたいです。そして、反対側を向いたまま、後ろ手に1つのファイルを渡して来ます。
「最初に話しました『人目がある所ではお見せできない物』です。Sランクの方にしか公開してはならない事になっております」
俺はバレッタからファイルを受け取ると中を見てみました。
「ビオス王国レイオス支部所属。二つ名、暴君。氏名、ライト。これは、Sランク冒険者の個人情報一覧か?」
「その通りです。ただ…あくまでもギルドが把握している情報になります。ライト様の名前も本名ではありませんし…」
「なるほどな。しかし…暴君って俺の事だったのか…」
暴君…ちょっと悲しくなりますが、ライトの目的からすると望ましい二つ名ですね…。まぁ大した情報は無いんだろうけど、続きを読んでみましょう。
「ふむ…百識のサリオン…え?サリオンって帝国の侯爵なのか?」
「その様です。私も初めて知りました。Sランク専属職員の特権ですね」
「聖槍のハルト。本名がラインハルトなのは既に周知の事実だけど…。えっと…公爵子息?公爵って基本的には王族の分家だっけ?じゃあミレーヌとは親戚なのかもしれないのか」
「ミレーヌ様とラインハルト様は曽祖父が同じですので、2人の関係は再従兄弟になりますね」
「なるほどな。それであんなに仲が良いのか」
この資料、思ったより面白いかも。
「剣聖…獣王…聖女…。聖女?特性『聖女』は千年出てないんじゃなかったか?」
「特性は聖女ではないのですが、まるで聖女様の様だと二つ名が聖女になったそうです」
「そうなのか。もし本物の聖女が出て来たら…どう思うんだろうな…」
そして、次のページを見た俺は……つい笑ってしまった。
「くくくく…。なるほど、あーさんね。全く…ふざけた奴だな…」
俺は改めて資料に目を通した。
アクル王国ドルワ支部所属。二つ名、太陽。氏名、ああああ。
こいつには確実に会いに行く必要がありそうです。
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
ブクマして頂けたり、↓の☆で皆様の評価をお聞かせ頂けるととても嬉しいです!
あと、下にある『小説家になろう 勝手にランキング』をクリックして貰えると助かります!
ランキングサイトに移動しますが、そのサイトでの順位が上がるみたいです。よろしくお願いします!




