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出発

2023/02/25 表現を一部見直しました。

2023/06/01 情報不足だったため、冒頭に透の考えを追加しました。また、ついでに記載方法を最近の形に変更しました。

「そろそろ…かなぁ…」


 僕は、そろそろ地上に出て、身を潜めながら情報収集をしたいと考えていた。

 まず、クラスメイトの元に戻るのは無理だと思う。アクル王国は信用できないけど、僕の方が信用されてなくて説得は失敗する可能性が高い。

 双葉達にだけでも説明しようかな?とも考えたんだけど…確信を持って言える。絶対に暴走する。最悪、クラスが分裂して殺し合いになるかもしれない…。

 と言う事で、僕がいなければ大事に扱ってくれそうだし、しばらくの間はアクル王国に保護して貰おうと思います。

 そして、その間に僕は日本に戻る方法を調べたり、アクル王国から聞いた情報の真偽を確認したり…。その前に生活基盤を確立しなきゃな。


 バスとの出会いから2週間が経ち、僕のレベルは38になっていた。狩りばっかりやっていればもっと上がったと思うけど、迷宮の外に出る為には知識も増やさないとね。

 最近は、午前は狩りで午後は読書という生活を送っていた。


 30レベルで覚えた魔王スキルは『秘匿』という物で、内容は隠蔽スキルの上位版という感じです。

 鑑定で見られた場合に、ステータスの内容を非表示にしたり、偽情報にする事ができるという便利スキルだ。

 現在、僕の表示ステータスはこうなっている。


 <ステータス>

 ■名前:トール

 ■種族:人族

 ■性別:男

 ■年齢:16

 ■レベル:8

 ■魔法

  水:1

  無:1

 ■スキル

  体術:1

  魔法感知:1

  魔法制御:1

  苦痛耐性:1

 ■称号:なし


 本名からかけ離れた名前にすると反応できなさそうなので、近い感じにしてみました。

 本名に近いとバレるんじゃないか?って気がすると思うけど、2つの理由からそうそうバレないと思ってる。


 1つ目が、高杉透は闇属性だって事になってるから。水属性を使っていれば別人だって事になると思う。

 そして2つ目が、秘匿スキルはステータスだけでなく姿形も秘匿する事ができるのだ…。


 僕はいま…髪の毛と瞳の色が水色になっていた…。

 この世界だと黒髪は目立つんだよね。だからと言って金とか赤は派手過ぎて……。それで水色に落ち着く事になった。緑にするか迷ったんだけどね。


 本に書かれていた言葉…『何をやるのも自由になるぜ』か…。なるほど…姿形からステータスまでいじれれば、誰も僕だと気付かないだろう。

 でも…高杉透として動く自由は無いんだな……。


 とりあえず、これで地上に出たとしても正体がバレる可能性は低いと思う。

 ただ、そうは言っても準備が全て完了した訳じゃないんだけど。


 今日は1つ思いついた複合魔法があったので実験に来ました。土属性がレベル7になったんだけど、なんと重力が操作できるようになったんです。

 魔術書を探して見た所、重力操作は加重によって攻撃するのが主流らしい。だが僕は思った訳だ、逆に軽くしたら空を飛べるんじゃね?


 重力を操作して軽くしてみた所、レベル不足なのか無重力にはならなかったのだが、かなり軽くなって高くジャンプする事はできた。

 ただ…落下速度がゆっくりすぎる…全然落ちない…。

 そこで更に考えた。これ、風魔法で押してやれば自由に飛び回れるのではないかと…。


 と言う事で、風属性と土属性の複合魔法を試す為にやって来たという訳です。

 失敗が怖いから身体強化してから…さぁやってみよう!先ずは上に向かって…。


 僕の身体が宙に浮く。と思いきや…もの凄い勢いで上昇して行き、すぐに限界が訪れた…。僕は奈落の底の天井に突撃していた……。


「うぉ…。いってぇ……」


 天井は凹み、僕の身体はめり込んでいる。やっぱり身体強化魔法かけておいて良かった…。

 正直油断してた…これは風の方を繊細に制御しないと…。


 ガコッ!ポロポロ…パラパラ……。


 僕は天井から剝がれると、自由落下を始めました。そして、ゆっくりと落下速度を落としていき、空中で停止します。

 こ…これがニュートラルな状態か…体に刻み込まないと…。

 そこから、ゆっくりと前後左右に動き始め、段々と速度を上げていきます。


「よしっ!慣れてきたぞ!飛行魔法も成功だっ!」


 そして僕は、しばらくの間、空中遊泳を楽しみました。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 翌日、僕は最後の出発準備として例の部屋に来ていた。

 そう、宝物庫である。


「えっと、何でも持ってけって…言ってたよね?じゃあ…色々と見せて頂きましょう!」


 僕は最初に、いっぱい積んである巻物が気になった。ピラミッド的に積んでいて100本くらいあります。

 とりあえず、一番上にある巻物を看破の魔眼で確認してみました。


『マジックスクロール(火球):ファイアボールが封じられた巻物。1度限りの使い捨てとして魔法が使用できる。』


 おぉ!属性無くても魔力使わなくても魔法が使えるのか。僕には必要なさそうだけど他の人には便利そうだ。


「よし!片っ端からチェックしてみよう!……色々な属性があるな…おっ!転移とかあるじゃん!」


 内容について確認してみるとレア属性の魔法も大量にあった。回復魔法とか、いざという時に便利そうだね。

 特に不要な物は無いので…とりあえず全部詰め込みますか!

 僕は全部のマジックスクロールをアイテムボックスに詰め込んだ。


 次は防具を見てみよう。

 金属鎧はガチャガチャして嫌だからなぁ…動きやすい革鎧とかないかな。

 ざっと見て行くと、カーボン繊維で作った様な漆黒の革鎧がある。マント付きだ。


「動き易そうだけど明らかにオーラが……。こんなの着てたら絶対に只者じゃないよ……。まぁ念のため確認してみますか…」


世界を支える者(ルティーヤー):始祖竜バハムートの革を使用した鎧。』

『要所ではバハムートの鱗が使われており、マントはバハムートの飛膜で作成されている。』


「完全にアウトだね…。持って行くけど封印の方向で……」


 僕は、他に丁度良いのが無いかと探して行く。あ、これとか良いかも。


『頑丈な服:防汚及び再生が付与された服。これ1着があれば常に清潔でいられる』


 防汚と再生が常識的なのかは不明だけど、この中ではまだマシだと思う。実用的にも丁度良いし、これを普段用で使わせてもらおうかな。


 他に何かないかなぁと防具エリアを見ていると、不思議な仮面に目が留まった。仮面は銀色に輝いている。

 デザインとしては、目から涙が零れているのに口は笑っていて…何だか気になる…。よし、確認してみよう。


『愚者の仮面:オリハルコン(神銀)で出来ており、どの様な顔でもフィットする。自身で外さない限り外れない。

『世間に素顔を晒せなくなった愚か者にお似合いな仮面』


 わーお!辛辣ー!

 どうしても顔を隠したい時に使用する仮面みたいだね。念のため持って行こう。


 じゃあ次は武器かな。

 とりあえず一番雰囲気のある奴から見てみるか…。


『魔剣アンサラー:ヒヒイロカネで作られた虹色の剣。』

『自動追尾機能があり、標的に対して飛翔して追尾を行う。また、手に握って振るった場合は、絶対必中と言える命中補正を与える。』


「はい、アウト―!絶対に普段使いできませーん!」


 魔剣アンサラーは却下という事でアイテムボックスにしまい、続いて他の剣も見てみる。

 んー…どれもこれも普段使いするには危険な剣ばっかりだな…。


「まぁ武器はあまり使わないだろうし、ひとまずアクル王国に貰ったロングソードでも装備してようかな」


 さてさて、他には……


『マジックバック:時空魔法が付与された袋。外見よりも広大な保有量を持つ。』

 …僕には必要ないけど念のため…。


音声通信機(テレホン):離れた相手と会話する事ができる板。相手も音声通信機を保有している必要がある。』

 …話す相手がいないけど念のため…。


 色々文句は言ったけど……。

 念のため、結局全部アイテムボックスに入れた僕でした……。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「じゃあ、そろそろ迷宮を出てみよう。迷宮を出たらアクル王国を離れて別の国に行って…冒険者とかやってみようかな」


 でも、行く前にちゃんと言わなきゃ駄目だよね。僕はそわそわしてるリルの前に行く。


「ねぇリル…」

「キャウン!?」(ひゃあ!?)


 リルが挙動不審だ…。不安に思っているのかな。


「えっと…お願いがあるんだけど…」

「ワ…ワフゥ?」(な、なに?)

「僕は今から迷宮を出て、地上で生活してみたいと思ってる」

「クゥーン…」(そうなんだ…)


 やっぱり不安にさせていたみたいだ…。


「良かったらリルも、僕と一緒に外の世界を見てみないかい?」

「ワゥ!?」(え、ほんとう!?)

「どうかな?駄目かい?」

「ハフーッ!」(しょうがないなぁ!)


「ははははっ!ありがとう!じゃあ一緒に行こう!リルは何か準備する事とかあるかな?」

「ワフー?ガウガウ!」(んー?とくにない!)

「了解!あ、でもリルがお気に入りなソファは持って行こうか」

「ワフーン!」(ありがとー!)


 よし。じゃあソファをアイテムボックスに入れて…。


「地上にゲートを開くから、僕に着いて来てね」

「ワフー!」(りょうかい!)


 僕は地上に向けてゲートを開く。開く場所はクリシュナさんがハイオークと戦った所にした。

 王都も迷宮前の町も人に見られる可能性があるからね。

 ゲートから顔だけを出し、周りを確認する。予想通りなのだが外は夜だった。


「やっぱり奈落の底の天井にあった照明は地上と連動してたっぽいな。よし。誰もいない!」


 僕がゲートから出ると、リルも続いて出て来る。


「確か、ちょっと南に行った所に西への分かれ道があったんだよね。街道作ってるんだから、そっちに行ったら町に到着するはず」

「ワフー!」(りょうかい!)


 僕とリルは街道を走って南に行きます。2人とも足が速いので、すぐに分かれ道に到着しました。


「おっ!やっぱりあった。えっと、看板を見ると…西に行けばルルス町か。ここで情報収集してみよう」


 という事で、僕とリルは西に向かって走りだします。でも…あれ…。


「リル、何か来るね。まぁ夜に移動してれば魔物は当然襲ってくるか」

「ワフー!ガウガウ!」(うん!リルにやらせて!)

「わかった。リルに任せるね。でも、もし危険になったら助けるよ?」

「ウー!ガウガウ!」(そんな事にならないもん!)


 そして、足を止めて待っていると、ダイアウルフの群れに囲まれました。20頭くらいいるかな。


「ガウガウー!」(いっくぞー!)


 そして、夜中の戦闘が始まった。の、だが…結果的に言うと、危な気も無く圧倒的な勝利だった。

 ダイアウルフは、リルの速度に全然付いてこれなかったのだ。


「ワフゥ?」(よわすぎない?)

「確かに…。ダイアウルフは奈落の底にもいたけど、もうちょっと強かったような?んー。バス、聞きたい事があるんだけど」

『はいっす!おれっちに何か用っすか?』


 呼んでみたらバスはすぐに出てきてくれた。さすがは僕の中に住んでるだけの事はある。


「もし心当たりがあったら教えて。同じ種類なのに奈落の底と地上で魔物の強さが違うんだけど、何でだろう?」

『奈落の底の方が強いっすね!地上は魔王様がいなくなってから弱体化しちゃいましたが、奈落の底は千年前の質を維持してるっす!』

「え?そうなの?」

『そうっす!同じ種族でも奈落の底の方が1ランク上だと思って貰えると丁度良いっす!』

「なるほどね。了解!ありがとう!」

『いえいえっす!』


 理由も分かったので、改めてルルス町に向かいますか!


 しばらく進むと、僕とリルはルルス町の前に到着していました。しかし、当然ながら町に入る為の手続きは受け付けていません。

 不法侵入する気は無いので、町に入るのは明日にして今日はリルをモフモフしながら朝を待ちたいと思います!

この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

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