16話 あきらめる、と 1
甘えっ子アリサの魔術講座。
30分も、かけて行われたご高説に。
男連中の心は、感無量。
ドライバー席二人の心が、折れかかったと言う話だ。
ダラダラと、成人間近女子が語る。
幼稚園児のような台詞を、要約すればこうなる。
かなりの心労を伴って理解したモノが。
これだけの文章で表せてしまう事実に。
誰もが、ため息の一つ出るだろう。
一、魔法と魔術は違うもの。
一、魔法は、マナを必要とする。
一、マナが枯渇すると、生き物は、いきられない。
一、ドラゴンスキンを覆った、この魔法は。
壁の内側からマナを吸収して、今現在を維持している。
一、内側のマナがなくなると、この魔法は自然消滅する。
内側のマナを全部使うと言う事は、つまり。
「大ピンチじゃないか!」
「だから、マズいって、言ってるじゃないの」
「マナって、簡単に言ってるけどさぁ?
僕には、良く分からないよ?」
寺田は、口を開こうとするルインに。
手のひらを突き出し、言葉の先を止める。
「たぶん、混乱するだろうから。
琴誇君には、俺が、分かりやすく説明するわ」
「分かりやすく、お願いします。」
「曖昧なモノの話だから、感覚的に、掴んでくれれば良いよ。
結論は出さずに、「そういうもの」だって、言うのが、大事だからね」
「なんか、大人っぽいですね。」
「大人なんだよぉ? 琴誇君は、大学生だったね?
じゃあ、生物学のお話だ。
人間の絶対寿命ってあるんだけど、それは、なんだか分かる?」
「えっと…。
細胞分裂の回数が決まっているから、その回数が、絶対寿命ですね?」
「おお! ついてこれるねぇ~。
じゃあ、細胞分裂は、どうやってしているの?」
「ザックリ言えば。
寝ているときに食べた物を使って、体が、勝手にやっていることです」
「細胞は分裂を繰り返すたび。
分裂する力そのものが弱くなり、劣化コピーを繰り返しす。
だから、いつしかダメになる。
だから、人は老いて、弱っていくんよね?」
「ザックリ言えば、そうですね」
「じゃあ、細胞分裂に、マナが必要だとしたら?」
琴誇は、急にやって来た。
予想外の切り口に、言葉を失った。
「確かに、食べ物も睡眠も必要だ。
だけどソコに、もう一つ。マナが、必要なんだとしたら?」
「そ、それは…」
栄養素の一つではなく。
マナが、人間の細胞分裂に必要不可欠なものだとすれば。
マナが、枯渇すると言うことは。
細胞分裂が、できないということになる。
細胞分裂が、できない生物が、どうなってしまうか。
怪我が治るのも、病気が治るのも。
体が、心臓の脈拍同様、無意識にやっている事。
病原菌を排出、修復が、デキるから治せるのだ。
究極的に医学は、自己治癒力に依存している。
大前提として。
細胞分裂と言う、自己修復機能が体に備わっているから。
直すことが、可能なのだ。
なくなった物を。
元通りになるまで増やすことができるから。
人は、体を維持していける。
言ってしまえば、血液も、免疫力と言う抗体も、全て細胞だ。
細胞が増やせなくなる、と、言うこと。
それは、生命にとって死活問題だ。
細胞分裂が出来なくなった生物は、数日も、もたないだろう。
人間の体の細胞は、一週間もすれば、ほぼ入れ替わり。
風呂場や、トイレに、全て流れていっているのだから。
「死んでしまいます」
「そう。それが、マナだよ。
形のないものだから、こういった説明しかできないけど、ごめんね?」
「いえ。下手に言われるより、分かりやすかったです」
「だから、このまま、この魔法の内側にいるとね。
マナが枯渇して、この魔法が消滅したのと同時に。
マナが吸い付くされた、ドラゴンスキンだけが、残るってわけよ」
ソコは恐らく。
綺麗な建物と、傷一つない死体の山で埋め尽くされた、死街だ。
「だから、早く、脱出しなきゃって言う話ですね」
「そのとおり。良くできました。どうぞ、ルインちゃん」
「なんで、いちいち勘に触るのかしら。コイツ。
それで、できることは、消去法で一つしかないわ。
一つ一つ、一応、説明しておくわね」
「お願いします」
話が、アリサに行く前に促した琴誇に。
寺田が、心底感謝したのは、言うまでもない。
方法1 魔法の壁の一部を破壊して脱出。
その後、応援を呼んで、大多数の魔法師・魔術師による力業での破壊。
「壁に魔法を打ち込んでも、エネルギーに、変換しちゃうから。
破壊という方法事態、無理だわ。
大人数の力業で、破壊するにしても、ね。
この奇跡的に魔法発動した、このドームみたいなモノは。
大陸全ての人材を、かき集めて。
どうなるか、どうか、ってレベルなの」
「奇跡的?」
「紫色の光の玉が、なんなのかは、分からないわ。
誰が、どういう意図で魔術行使したのか。
ソコに、予想外の横やりが入って。
本人達も、収集がつけられなくなっているのが、今の現状でしょうね」
「ちなみに、元の魔術って、なんなのか分かるの?」
「魔術は、個人スキルみたいなモノが、多いから…ね。
でも、良くないモノだって言うことは、分かるわ」
「ルインさんの、予想だと?」
「あくまでも、予想だけど。
このドラゴンスキンを、意図的に隔離。
管理しようとした、って所じゃないかしら?」
「今と、変わらないじゃない」
「面白い!」「続きを読みたい!」など。
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