暴れる子供と汚い空 4
アリサは、手招きした琴誇に気づき。
素直に空から降りてくる。
あまえっ子モードに、入ったのだろう。
普段は見せない、子供のような無防備な顔が。
涙と鼻水で、ぐちゃぐちゃになり。
化粧が落ちるのも気にせず。
顔を擦る手が、顔面を、とんでもないモノへ変えている。
「こ~と~こ~」
親に叱られ、泣き出した子供が。
どこで、泣いたらイイか分からず。
親の所に結局、戻ってくる光景を、見ているようだ。
琴誇は、生暖かい親の心境を噛み締め。
両手を伸ばした眼前に、近づいたアリサの顔。
龍の翼と尻尾を生やし、かなりの勢いで、向かってくる。
このままでは、吹き飛ぶかもしれない。
それが、今回のお詫びだと思った琴誇の心に、浮かんでしまったのだ。
顔立ちがキレイなハズの。
年甲斐もなく、泣きじゃくる、19歳の。
カオスフェイスが、琴誇の視界一杯に広がり。
「バッチイ! あ!」
アリサは、自分の子供ではないと。
当然のように、理解した瞬間だった。
子供に向ける優しさに溢れていた体は。
機敏な、反復横跳びを見せ。
衝突の寸前に、真横に避けていた。
真横から、ブンッと言う、風の切る音が聞こえ。
すぐに、ザーなんていう、擬音通りの音が。
背後から、段々と遠ざかる。
アリサのいなくなった空に。
ポツンと残された、紫色の球体が、琴誇を責めているようだ。
覚悟を決め、背後を振り返れば。
顔面から、地面に突っ込んだアリサが作った、わだちが。
勢いと、威力を物語る。
「う、受け止めなくて良かった…」
受け止めた体は、お空まで行く前に。
醜い花火に、なっていただろう。
大地の養分にならずに、すんだ。
ついで出た言葉は、酷い。
「うん。結果オーライ。うん、そういうことにしよう」
地面に深く刺さった、アリサの顔。
琴誇に、ダイブする予定だった、両腕と顔が地面にメリこみ。
地面から、胴体だけが突き出た、竜族の女性が完成した。
ドレスのスカートは、当然ながら重力に引かれ、ズレ落ち。
中身が、見えてしまっている。
「白かぁ…」
何の色気もない、下着の露出。
コレといった感情も、沸かず。
思ったよりも長く、青いハ虫類肌の尻尾が、ダラりと垂れ。
「ああ、尾てい骨からなんだ」
尻尾が、何処から生えているか、気になり。
尻尾がもたれかかっている下着が、意識から消えていく。
尻尾が生えることを考慮した、下着。
こんなものを大浴場の更衣室で見たら。
ただの痴女と、思われてもおかしくだろう。
きわどい作りの、セクシー下着だと言うのに。
地面から生えている、姿が滑稽すぎて。
琴誇の男の子は、ピクリとも反応を示さない。
大地から生えた体が、プルプルと震え。
翼が、ワサワサと空を切る。
そして、ズボっと。
地面から抜かれた、片腕が地面をとらえ。
何事も、なかったかのように、顔を抜き出す姿は。
ホラー映画の、ゾンビのようだ。
ぷはぁ、なんて。
可愛い声を聞いても。
一度抱いた、感情が消えるハズもなく。
アリサと目が合った琴誇は、とても複雑な気持ちを隠せない。
泥と、崩れきった化粧と、鼻血。
とんでもない事になった顔は、真顔だった。
何が起きたか、アリサ自身、分かっていない。
琴誇をジッと見つめ、首をかしげている。
しばらくの沈黙に。
暖かな日差しと、気持ちの良い風。
そして、アリサの顔が歪み。
これから訪れる悲劇に、琴誇は覚悟を決めた。
アリサから突き出される人差し指が、開始のゴングだ。
「うん、アリサ。マジで、ごめん」
「うわぁあああ~」
こうなったアリサは、子供以上に、子供に見えるが。
その姿が、ほぼ大人で。
竜の羽と、尻尾を生やしているのが、タチ悪い。
じたばたと叩きつける両手両足は。
容赦なく地面をエグり。
自らたてた砂ぼこりに、咳き込み。
癇癪が収まることはない、地獄ループがデキ上がる。
無自覚にバサバサと動かす翼は、台風並みの風圧を作りだし。
近くにある車を、左右に揺らした。
「ち、近づけない。物理的に」
身を屈め、風をやり過ごさないと、体が浮き上がると、確信できる強風。
目すら、まともに開けていられない。
巻き上がる、砂ぼこり。
小石、砂が。
容赦なく体に、叩きつけられ。
小刻みな痛みが、琴誇の精神を、ジリジリと削り取る。
「あ~もう。だだっ子は、めんどくさい」
泣き続けるアリサを、どうにかしようと、考える琴誇の後ろで。
一際、大きな音が響く。
音に背後を振り替えれば、思わぬ惨状が、デキ上がっていた。
「う、ウルドさ~ん!」
先程ほどまであったハズの木製民家。
掘っ立て小屋とも言うが。
見事に崩落し、屋根の下敷きになったウルドが、力業で這い出し。
首と、右腕で助けを求めている。
ウルドが、何かを叫んでいるが。
言葉の分からないと、言い訳をしながら。
琴誇は、そのまま視線を、アリサに戻す。
言葉を理解できなくても。
その必死さを見れば、言葉を理解する必要などない。
相手が、何を求めているかぐらい、分かるのだから。
困っているのだろうが。
家の下敷きになっても、血の一滴も流さず。
力業で、助けを求めている姿に、たくましさ以上のものを琴誇は、感じた。
急いで助けるべきなのだろう。
だが、琴誇の優先順位の一番下に、ウルドは、追いやられていく。
「人じゃないなぁ…。
ああ、ドワーフか。しばらくは、我慢してもらっておいて、マズは」
こんな状況でも。
風下に、いなくて良かったと思っている琴誇は、なんなのだろう。
異常な状況は、正常な思考を、奪い去っているのだろうか。
車内から、視線を投げてくガルフに、琴誇は軽く腕を振り。
目の前の爆心地を見据える。
「さて、事態を収集しよう」
「面白い!」「続きを読みたい!」など。
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