暴れる子供と汚い空 2
「……」
「琴誇! 門番として、正しい反応ですからぁ!」
「うん。切り返しが、あまりにもサマになってて、ビックリしただけだよ。
じゃあ、街道以外の道があるのか、知りたいんだけど?」
「眉間にシワを寄せながら、言う台詞じゃないですね?
素直に受け入れた方が、イイですよ?」
「ナビィ、僕は抗ってみせるよ。どうなの、ウルドさん?」
「それは、ドラゴンスキン住宅区。
住宅・路上管理部に、行ってくだせぇ」
「……」
琴誇の様子を見かねてか、アリサが、援護射撃を撃ち放つ。
「ウルド。ちなみに、今夜、泊まるところがないんだけど。
なにか、良い場所ある?」
だが、玉は、見事に海の藻屑へと還る。
「南住宅区、観光管理部に、行ってくだせぇ」
「ねぇ。ウルドさん。いつもそんな感じ?
ちなみに、アリサの龍紋を見て、なんて言ったの?」
「え? 中央のドラゴンスキン管理総括部に、行ってくださいと。
そしたら、コノお嬢さんが、来なさいっていうから…」
アリサが、機嫌悪そうに、後ろで声を上げる。
「ね? ソオしか言わないのよ、この男。
こっちへ来て、説明してって言うと、すごく嫌な顔するし」
「アッシは、何も悪くないですぜ?」
「うるさいよ。役所の受付親父が!」
「琴子の口も、悪くなってきましたねぇ~。
私は、嬉しいです」
「あっし、もう、戻ってイイですかい?」
「確認しなくても、もう、戻ってイイよ」
「では、コレを」
通行許可証なる、木板を差し出すウルド。
木板を受け取ると。
琴誇の手の平は、感じ取る。
非常に埃っぽく、変にベトつく感触。
そそくさと、ウルドは、定位置の椅子に腰かけ。
また腕を組んで、目をつぶった。
「どうしたんですか、琴誇。」
「なんで、コレ。ジャリっとしていて、埃っぽいのかなぁ?」
琴誇は、周囲の空気が、変わったのを感じた。
「たぶん。そこらへんに、掘り投げてあったんじゃない?
さっき、私の顔を見てから、足元を、ガサガサしてたから」
何事もないように話している、アリサの体は。
琴誇から、少し遠ざかっているように見える。
「なんで、ベトついてるのかなぁ?」
琴誇は、ヒラヒラと、木札をアリサの近くに近づける。
「絶対、私にちかずけな__。」
アリサが、言い終わらないうちに。
木板は、アリサの鼻先三寸で。
日の光を、よくわからない、テラつきで返していた。
「きゃゃややあああ!!」
初めて聞いた。
女性の力加減を考えない悲鳴。
手に持った木札が、琴誇の不安を煽り続ける。
「そんなものを、僕に握らせたの?
ねぇ、アリサ?
そんなモノを、僕は持っているの?」
「そ、そんなことは、ないと思うわよ」
「取り繕った姿に、説得力ないですねぇ…」
「まさかとは、思うけどさぁ?
これ、ウルドの、いろんなモノじゃないよねぇ?」
「ち、違うと思うわよ?」
「足元をゴソゴソしてたって。
その、ゴソゴソとしてたのは、ドコ?」
「……」
「なんで、顔を背けたついでに、体を引いたの? ねぇ?
答えないと、コレ、アリサに投げつけるよ」
「それだけは、絶対にやめて!」
「なにそれ、その頑固たる否定。食べさせるよ?」
「食べれるわけ、ないじゃない、そんなもの。」
「人が優しく言っているうちに、早く白状したほうが、イイと思うなぁ?」
「分ってて、言ってるでしょ!」
さて、話についていけない皆様に、ココで補足説明をしよう。
ウルドが、腕を組んで座っている、民家。
この民家は、六畳ほどの小さな敷地に建てらおり。
街道側の窓は、大きく開かれている。
ウルドが出入りするのは、琴誇達から見て、裏から。
そこで、一つ疑問が浮かぶ。
街道側の大きく開いた窓は、受付するためだろう。
だが、そのせいで。
この民家には、プライベートスペースが、全くない。
民家の中が、すべて見渡せてしまう。
ベット、水瓶、タンス、転がっている彫刻刀。
生活感全てが、筒抜けなのだ。
人が済むには、絶対必要な施設が、ドコにも見当たらない。
この民家の隣や裏に、他の建造物はなく。
見えるのは、井戸だけだ。
窓際カウンターは、テーブルとしても、使うのだろう。
この家の見えないところは、受付の足元だけだ。
腕を組むウルドの、上半身は見えるが。
どの角度からも下半身は、のぞき込めない。
汚いウルドの姿から、何を想像できるだろう。
ウルドが、住む民家の周りには。
風に、そよいでいる雑草ぐらいしかない。
ほかの建物は、遠くに、ポツポツと建っているだけ。
そして、ウルドは、門番なのである。
家の中に、ベットや、水釜は見えるが。
コレでは、生活に数時間で困るのは、誰にでも想像できる。
門番の職務が交代などなく。
関所兼自宅なら。
家の中にも外にも。
ドコにも存在しないモノが。
テーブル下に、隠れているとしたら。
「それは、僕が言いたいセリフなんだけどなぁ?
知ってて受け取らなかったでしょ、この札」
「し、しらないわぁ?」
「すごい、白々しいねぇ?
じゃあ、コレをアリサは、両手で受け取ってくれるね?」
「できるわけないじゃない! こんな汚物!」
そう、ウルドの家に、トイレが見当たらないのだ。
「いったなコノヤロウ? ついに、汚物って言ったな!」
「汚物以外の、何に見えるって言うのよ!」
「面白い!」「続きを読みたい!」など。
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