13話 この剣は、無敗の剣だ 1
黒だ。
真っ暗闇に、白い筋が走る。
いくつもの白い筋が、不規則に流れ始める。
ノイズ。
目をつぶり。
しばらくすれば、夢が見れると「思っていない」自分がいた。
夢を見れない。
そう思える事が、不自然なのに。
心は、深く理解しているような、感覚。
体験したハズが、ないのに。
記憶も、ないのに。
それが日常だと訴える体に。
そうだと伝える、感覚に。
心が、不自然を許容していく。
何の抵抗もなく、自然に、そうなんだと。
だんだんと、薄くなったノイズの奥から、音が聞こえ。
声だと分かった、次には。
心まで届く、感情を隠さない誰かの叫びが。
耳を、つんざいた。
砂嵐のようなノイズから、浮かび上がる映像。
見ている自分に、何かを訴えている。
髪を頭の両端で結び。
帽子をかぶった女性が、画面一杯に、神妙な表情を広げた。
「あなたが、生きていることに、意味は、あるのよ」
自分の声は聞こえず。
ただ、話しかけてはいるのは、相手の反応を見れば分かる。
目の前の女性は、一つ頷き、こう続けた。
「死ねないから、生きているだけ? なら」
の、先の言葉が消える。
だが不思議と、心を温めた。
そこで、自分の心は、こんなにも、冷えきっているのだと、気づく。
もっと、温もりに触れていたい。
だが、映像は砂嵐となって消え。
また別の映像と、声に移り変わる。
温もりに、触れていたいだけ、なのに。
次々と、ノイズから浮かび上がる、
なんの法則性も繋がりもない、断片的な映像。
それらは、すべて、自分の心を、エグり続けた。
「お前の生が。
どれだけ俺の生を、侮辱しているか、分かっているのか?」
セミロングほどの髪を、かきあげ。
右手のひらの奥に広がる、怒りと言う感情が。
肌から直接、自分に伝わってくる。
理由など、何一つ分からない。
だが、この男の全てが、ドレをとっても、気にくわない。
「お前を殺せば。ようやく、この呪いの意味が、見える」
構える右手の、鉄の塊のような手甲が、自分に向けられ。
この男の言葉を、奥歯で噛み締めては。
終わらせる事が、できる喜びが、心に広がっていた。
ノイズだ。
また、変わりゆく、一場面。
こんなに、嫌なモノばかりじゃ、なければ良いのに。
何を思おうと、容赦なく。
握り拳が、何度も、自分に向けられた。
「力を持ちながら。
何も求めない、お前の生きかたを、俺は、認めない」
薄い鎧姿の傭兵。
何気ない本心。
聞こえは、良いだろう。
だが、こんな言葉に、自分はヒドく、イラだっていた。
「俺の、全て。俺の生き方の全てだ。
お前という存在が、俺という人間を、否定している。分かっているのか?
お前が障害なら、俺に、存在しなかった未来を、見せつけるなら。
お前と言う存在を、真っ向から、捻り潰す」
目を、そむけたくなるほどの激情。
だが、夢を見ている自分に、瞼はない。
現実に逃げ帰るまで、見続けるしかない。
「希望は、願いだった。 なら、あなたの生は?」
両目を瞑り、杖で地面をつく、若い女性。
こちらを向いた顔の角度が、不自然だ。
彼女の言葉に、答える言葉が、自分にはなかった。
映像の中の自分は、ただ、静かに吐き捨てる。
ゴミにもなれない、何かだ、と。
聞こえた自分の声が。
この映像を見ている、自分と同じ声に驚き。
即答した言葉に、絶望した。
「私は、歌い続けてきた。
町を、人を、世情を。
でも、あなたを歌う言葉が、見当たらない」
髪が長く、スッとした女性が、ギターを、いじりながら語る。
「アナタは、英雄でも、傭兵でもない。
まして勇敢な戦士だなんて、歌う事が、できないわ」
こんなことを言われている自分は。
どういう人物なのだろう。
疑問は、次の言葉で、ザックリと解決する。
「その、腰につけた剣が、どれだけの意味を持つのか。
どれだけの重みを、もつのか分からない」
あきらめている言葉の羅列に。
また、このパターンかと、あきらめてみれば。
不意に、想像をこえた言葉が、返ってくる。
「でも、一つだけ。
私が、願いを込めて歌いたいものはあるのよ」
夢の中の自分は、ただ黙って、成り行きを、見守り続けていた。
言葉を向けられている自分が、すべて、悪いのかもしれない。
言葉を聞く前に。
相手の言葉を、あきらめている。
誰かに、何一つ、期待しておらず。
悪くなければ、それで良いと、思ってしまっている。
__よりは、マシだと。
__は、こうなって当然だと。
考える前に、納得してしまっている。
そうなるべきだ。
それは嫌だ。
なんて、微塵も思っていない。
相手の言葉の後ろに、自分が、常に構えているモノは。
ひどく劣悪なモノだ。
切り捨てるか否か。
物理的になのか、認識としてなのか、心持ちとしてなのか。
恐らく、そのすべてだ。
自分ルールとしか、言いようのない、自尊心だと言われても。
何一つ、遜色ない。
ピクリと心が動く前に、受け入れ、納得している。
くだらないモノが。
目の前の現実を、ゆがませていく。
どこに消えれば良いのか。
どうすれば、誰にも気づかれずに、過ごせるかを、考えている。
もう、こうして立っている自分さえ。
めんどくさいと言うのも、めんどくさくなり。
黙るという、最低の反応を、相手に見せているのに。
ギターを持った女性は、はにかみ、楽しそうに答えた。
「聞きたい?
それはね、胸が温かくなって、涙が出てくるようなバラードよ」
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