鉄鋼街ドラゴンスキン 5
ドラゴンスキンの町のつくりは、
必要な施設が、一塊に、なるように作られている。
採掘・工業地が中央で、一番外が住宅・教育、といった具合だ。
一番中央に近い職人が、モノを売りに、一つ外の、商業区に行き。
商業区から商人が、一つ外の住宅地へ。
住人からすると、商業区までしか、行く必要がない。
人の流れが、非常にわかりやすく。
立ち入りを規制するのも、容易だ。
工業地域は、高熱のかまど等、危険物が多数、存在する。
無用な地域に、足を、向けないようになっているのだ。
身分証明があることにより。
足を踏み入れることが、できるのは、決まった資格を持った人物だけだ。
このように、管理することで、流れを円滑化、不正の排除すら容易にした。
各職業の立場から言えば、それ以上のことを、しなくて構わないと言うことだ。
不正を、考えさえしなければ。
自分が、どのようにして生活すれば良いのか。
分かりやすい形が示されているのだから、それに習って、仕事をすれば良いだけだ。
余計なことは、ほかの資格者の分野と思っていれば、それで良い。
あとは、ドラゴンスキンの自警団と、南の常駐軍で。
工業区域・商業区域・住宅区域・発掘区域。
治安の安定を図りながら、不正者を洗い出させれば、それで町は回っていく。
警察が自警団なら。
軍は、警察以上に権限と自由が許されている
治安部隊と、考えて問題ないのだが。
「え! ちょっと待ってよ」
ゆるやかに、流れていた車窓は。
ここまで長い説明を、悠長に進めた、アリサの口によって、止まった。
「だから、話の腰を折らないでよ」
「うるさいなぁ、このバカちんが!
今、とんでもないことを、自分で言ったの、気づいてる?」
「え? 何か言ったっけ?」
「この、科学者脳が! なんで、一つの事しか、考えられないんだよ!」
「何で、私は、バカにされてるの?」
「…当然だな」
横から不意に聞こえてきた、ガルフの声に驚き。
アリサは、疑問を解決する為、背後を振り返る、琴誇の顔を覗きこむ。
「軍隊いるじゃないか! しかも南の!」
「そうねぇ」
「そうねぇ、じゃないよ!
なんで、さっきの話し合いで、ソレを、言わないんだよ!」
「え、なんで?」
なにか、話が、かみ合わない。
「……ん? ああ、そう言うことなのか?」
琴誇は、深くうなずき。
そして、表情が変形していく。
「うわぁ~。マジかぁ…」
軍隊と言われ。
自衛隊と言われ。
何を想像するだろう。
銃・戦車・戦闘機・戦艦の、いずれだろうか。
鍛え抜かれた戦士たち。
殴られたら殴り返す、暴力的な組織が、頭に浮かぶのが、普通だろう。
だが、アリサの軍隊という組織の認識は、便利屋なのだ。
琴誇・ナビィは。
戦争を、少なからず作り話で触れ。
軍隊という組織が、どういう物か、どういったときに、必要か、知っている。
軍隊とは、暴力に対する、抑止力であり、対処法だ。
軍隊を、なくすということは、この二つを、失うと言うことである。
武器が、あるから争いになるのだ。
もう、これは、言葉遊びでしかない。
今日もドコかで、犯罪が行われ、警察が動いているのに。
その中、警察を失えば、歯止めが利かなくなる。
論点のすり替えなどではなく。
本質的には、全く、同じことになるだろう。
軍隊をなくした場合は、分かりやすく最悪だ。
国土か海域侵犯を止められないので、やりたい放題。
国を通して、何とかしようとしているうちに、手が付けられなくなる。
行くとこまで行った先には、もれなく。
皆の首に、ポチという首輪が、つく未来が待っているかもしれない。。
現代において、戦い・破壊行為が表面化した時点で、止める術はない。
核兵器など使わなくても、だ。
一日で、国にある首都・インフラ施設は、確実に消滅するだろう。
焼野原になった後、無抵抗に殴られて。
戦争になった時点で、経済戦争の負けが、確定しているのに。
その上で、国民を守れもしない国家を。ドコの先進国が、信用するのだろうか。
政治が政治でなくなり。
国民が何を言おうと。
取り返しがつかなくなれば、頭を下げるしかなくない。
みな、おとなしくポチに、なるしかない最悪の未来を、回避するために。
抑止力・対処法は、必要なのだ。
力を持っていないヤツに、わざわざ力を使う必要はない。
殴って黙るなら、わざわざ説得する必要がない。
銃で、頭をこずき。
邪魔なら、打ち抜いて、捨ててしまえば良い、だけ、の話なのだから。
軍隊は、戦争をしないために、誇示し、維持・強化し続けなければならない。
目に見える、国家技術レベルであり、力の象徴なのだから。
ガルフに至っては、戦いの真っ只中にいたハズである。
そう、この車内で、アリサ以外、この世界の軍隊を知らないのだ。
アリサの話す、軍隊は。
一度でも、拳を振り上げただろうか。
強烈な龍信仰がおこした、軍という組織の変化。
大戦時、龍によって、強制的に、戦うものは排除され続けたのだ。
軍隊は、その筆頭に並ぶモノだったのだろう。
なのに、なぜ、軍隊は、いまだ、存在できているか。
理由なんて、シンプルだ。
軍が、軍で、なくなったからだ。
各国間で力を誇示する必要を、龍が奪い去ったのだ。
各国を龍が統治しているのだから、国家間戦争が起こりえない。
隣大陸へ行く手段を限定され。
外交、そっちのけで、内政だけでも、最悪の問題が、起こらない環境が。
軍という組織を、大きく変えたのだろう。
国はあれど、四龍が世界統一したのだから、こうなるのだろう。
戦後復興の流れから。
軍は、そのまま、行政執行部隊になったのだと、考えるべきだ。
現代日本に存在する、市役所や消防、税務署等々。
国として、必要とする施設や、役目を行うモノを。
全て「軍」と、表現していただけだ。
軍施設とは、戦うために用意するか思えてしまうが。
この北大陸では、行政施設である。
「戦い」という概念が、そもそも、この北大陸から、欠落しているのだ。
それでも、隣国とのやり取りはあるのだから、
最低限の軍事力は、見せる必要は、あるのだが。
戦争前提で構えているのと、体裁を整えるだけの軍隊では。
全くの別物だ。
アリサが、琴誇達の言葉を否定しないのは、一応、理解があるからだろう。
「琴誇。どうしたの? 急に、面白い顔になって」
「なんか、その言葉に、腹も立たないや。アリサちゃん、軍っていうのはね…」
「なに、今更、あらたまって」
「アリサを、守ってくれるんだよ?」
「……。え?」
自衛するための力だとか。
けん制だとか。
威圧とか、究極に仕方ない暴力だとか。
軍が、そういった使われ方を、されてこなかった弊害だろう。
琴誇は、ここまで、さんざん聞いた。
アリサの、バカだと思える発言の数々が、納得できてしまった。
ここは異世界で、そもそも、常識が違いすぎるのだ。
常識が違えば。
物事の考え方も、感じ方も、結果も、すべて変わって、当たり前だ。
この世界に、やってきたメンバーは、勝手に勘違いを、していただけ。
アリサの立場からなら、そう言えてしまうだろう。
「面白い!」「続きを読みたい!」など。
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