理解なんて、最初から求めていないんだ… 6
ガルフに刻まれたモノ。
後遺症は、これから味わうことになるのだと、奥歯をかみしめ。
何事もなかったかのように、琴誇は務めた。
「どういうことですか?」
「…盲点、だということだ」
「え~。ちょっと待って…。
今、敵は、ドラゴンスキンに行くと、思っている。
後ろからきてる遠征隊も、まっすぐ王都まで向かってる。
内陸街道から、遠征街道経由して。
東・西どちらかの首都を、何食わぬ顔して通り抜けて、王都に向かえば。
相手の意表がつけて、しかも、後ろの遠征隊を気にしなくて良い、ってことね?」
アリサが言う通りの経路で走れば。
後ろを気にせず、王都を目指すことが可能になる。
この先、ドラゴンスキンにいるだろう、敵さんの攻撃を考えれば。
東・西どちらかの首都を経由して、東・西管理区で攻撃を受けるのも変わらない。
なら、後ろの追っ手がなくなり、リスク回避ができる分。
東・西どちらかの首都を経由し、走り抜けてしまったほうが、安全性は高い。
「でもそれって、さぁ?
遠征隊を差し向けるなんて、回りくどいことしなくて良いから。
東・西で追われた場合も、全力戦闘覚悟って、ことじゃないの?」
「そういうことに、なるわね」
「いずれにしても、針のむしろ、じゃないか」
「…分かったようだな」
つまるところ、どちらを選んだところで、最終局面の盤面は、一緒だ。
琴誇は、何か良い方法は、と。
頭をひねれば、ポンと頭に浮かぶ。
「じゃあ、アレだ。
どっちにしろ最終的に同じなら。
まだ土地勘があるだろう、南の管理区で戦ったほうがマシだよね?
戦いたくないけど」
「そうね」
「じゃあ、ドラゴンスキンに行っちゃおう」
一瞬、時が止まったようにアリサが固まり。
かわいそうなモノを見るような目線を隠さず、琴誇の背中に向けた。
「…。ちょっとまって、話が、一周したんだけど?」
「アリサにだけは、そういうこと、言われたくない」
「また、バカにしてぇ~」
「本当に、めんどくさいなぁ~。素直に、まっすぐ行くと思う?」
「また言った! めんどくさいって、また言った!」
「ドラゴンスキン南側に着いたらね?
そのまま、きびすを返して、内陸遠征街道に向かおう。
そのあと、遠征街道まで行って。
もう一度、ドラゴンスキンに戻ってきて、そのまま、スルリと抜けていこうよ」
「ガルフ言う通りなら、追いつかれちゃう、じゃないの!」
「…雇い主。俺は、雇われ先を変えるべきだな」
「ガルフも、何、言ってるの!」
「…それは、実現可能な策だ」
アリサのキョトンとした顔が、ガルフに向けられる。
「追いつかれるんじゃ、ないの?」
「…先見隊とは、ぶつかるが、問題ない。
南で剣を抜けるほど、青龍が恐ろしくないのか?」
「それは…」
ドラゴンスキンに、一度行くことで。
東・西に分岐する道、どちらに行くか見ている、監視役の目に触れることになる。
そこで、東西内陸遠征街道、分岐手前まで戻り。
本隊とは別に動くだろう、追っ手の少数部隊と接触しても。
戦闘になる可能性は低い。
先見隊は、戦うのが役目ではなく。
勝つために、周りを見渡すのが、役割なのだから。
アリサを目にしても、なにもないような顔をして、通り過ぎていくだろう。
そもそも、小戦力で、アリサを止められるとは、誰も思わない。
アリサを抹殺するには。
不意打ちが、一番、重要なポイントなのだから、相手も慎重になるだろう。
そのまま車は、内陸遠征街道から、海沿いの遠征街道に抜け。
自分たちの存在を、大きな町で姿を見せることで。
東・西どちらかの管理区を通るとさえ、思わせれば。
相手は、東か西の首都に、力を入れる。
そのスキをついて、ガラ空きになった、ドラゴンスキンを抜ければ良い。
何よりも、コチラには。
このプランを実行できるだけの、速度が出せるのだから。
強みは、最大限使うべきだ。
「ちなみに、ドラゴンスキンの先の町は、あと幾つあるの?」
「あと一つ。うちの実家がある、首都レーレシアよ」
「なんか、まともな町の名前を、初めて聞いた気がする」
「うるさいわねぇ~。首都は、先代の名前が、ついてるのよ」
「初代、守護者ってこと?」
「そういうこと。決まったなら、さっさと、走りましょうか」
ニヤニヤと笑い、調子を取り戻しつつある、アリサに、琴誇の腹の虫が騒ぎ出す。
「なんでだろう、すごい腹が立つ」
「なんでよ?」
「なんでだろう?」
「そりゃ、何もしないヤツに、速く走れと、上から言われれば。
誰でも腹が立ちますよぉ~」
ダッシュボードの上で、ナビィは、アリサを突き刺した。
「私は、お客よ!?」
「きゃぁくぅ?」
「なによ、なにかあるなら、言えば良いじゃない」
「都合の良いときだけ、客面されてもねぇ~。
もう、客ですらないこと、自覚したら、どうですかぁ?」
「え、どういうこと!?」
「まぁ、ちゃんと、あとで頂くものは、頂きますけどね」
「……」
車は、太陽がランランと降り注ぐ、ガタガタとした、街道を突き進む。
車内の温度を守っているクーラーの小さな音に、誰もが気づかないほど。
数十分前からは、想像できなかった、うるさい車内。
まだ、何一つ、解決していない賃走譚は、まだまだ続く。
黒い車体に。
異世界交通という金色文字と。
「異交」という丸いアンドンをつけた車は、土埃と泥で、黒い車体は汚れ。
走り出したときの、ワックス輝く、車体の見る影もない。
ブルーリバーで、生活に困り、何とか見つけた、お客様。
乗せてしまった、南の管理者様。
竜族であらせられる、アリサ=デリエッタ=シモン、十九歳と。
柊 琴誇十九歳と。
成り行きで雇ってしまった、とんでもない剣士、ガルフ、年齢不詳と。
「琴誇。私の存在、薄くなってません? 私のキャラ、薄いですか?」
「……。え?」
「ムカつきますねぇ~。
何が言いたいのか、分かってしまうのが、なおさら、頭にキますねぇ~」
自称ナビゲーションシステム、ナビィとの異世界賃走譚が。
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