…頭が、よいのだろう? 2
「指じゃ、数えられない程度には、あるわね」
「…そうだろうな。ならば、なぜ、敵は攻撃してこない?」
「ココが、私の管理している区域だから、そんなに大きなことが、できないのよ」
「…大掛かりなのか?」
「何が言いたいの?」
「…まわりを見ろ」
アリサは、言われるがまま、外を見れば。
広い野原に、自分達の乗っている車が、あるだけ。
そのまま、視線をガルフに戻せば、スグに言葉が返ってくる。
「…ここで、殺せないぐらいなのか?」
「それは…」
言葉に、つまったアリサの返事を待たず。
次の質問が、アリサに投げられる。
「…この先の道は、どうなっている?」
「どうって…」
「…この先、道は、まっすぐなのか?」
「そんなわけないじゃない。真っ直ぐ行ったら、クレーターに落ちちゃう。
道は、クレーターを囲むようにできているわ。
安全のために、道は、結構距離をとって作ってある。
それが、どうしたって言うの?」
「…本当に、雇い主を狙っているのは、他の管理者だけか?」
「だから、何が言いたいのよ」
ガルフは、いぬくように片目で、アリサの瞳の奥を、のぞきこむ。
「…なるほど」
アリサは、ガルフの様子に身構え。
言葉を待っていたのに、拍子抜けし。
「なに、こんな時に、勝手に納得してんのよ!」
「…話しているほうだ」
「どこがよ!?」
ガルフは深いため息を吐き出し、めんどくさそうに口を動かす。
「…言葉を尽くそう。雇い主」
「なんで、そんなに偉そうなのかが、知りたい」
「…この先に、管理者以外の、反龍体勢側の襲撃がある」
アリサの、「え」と言う驚きは、二言目には、驚愕に変わった。
「…龍の知恵。大層な名前だ。
…自覚しろ。それは、人より、多くを、効率よく学べる力だ。
…秀才を最速で作りあげるのと変わらない」
アリサの顔が、疑問だけで埋め尽くされる。
ガルフは、眉一つ動かさず、ただ、あるがままを、口にしていく。
アリサの顔を、のぞく片目は。
「どういうことか分かるか?」と、訴えていた。
「え、と?」
「…頭が良いのだろう?」
この車内において、アリサが、完全に忘れてしまっていた感覚。
ガルフは、必要なことしか話さない。
そして、言葉に、いくつもの意味を込め、一口にしている。
一度も、アリサの名前を口にせず。
「雇い主」と呼び続けているのは、キャラなどではなく。
テーブルで、欲と利権が欲しいヤツらとの集まりで見せた姿を。
ガルフは求めていると、南の管理者としてのアリサに、訴え続けている。
アリサは、自分のスイッチを切り替えるように、目をつぶる。
その姿を見たガルフの口元が、少しだけつりあがる。
「龍の知恵が、秀才と変わらないって、どう言うことなの?
それが、一番わからないわ。龍の知恵は、現実味を持った、体験学習なのよ」
「…お前の体験ではない」
「そりゃそうよ、これは、誰かの記憶なんだから」
「…だからだ」
「ごめんなさい、何て言いたいのか、分からないわ」
「…他人の恋を、いくつも見た。…だが、雇い主は理解できない」
「え?」
「…それが、答えだ。…自分の言葉の矛盾に気づけ」
言葉の矛盾に気づけ。
龍の知恵は、体験学習で得られる知識なら。
なんでも、自分のことのように、学ぶ事ができる力だ。
そう、アリサは、琴誇に説明した。
ならば、なぜ、アリサは、「恋」を理解できないのか。
なぜ、「恋」に対して、こじらせていったのだろう。
「…雇い主。追われているというのに、お前からは、必死さを感じない。
…それが、違和感でしかない」
龍の知恵は、自分のことのように、体験学習できる。
だが、ココには、大きな落とし穴がある。
「…お前の学んだモノは、お前の体験では、ないからだ」
体験学習とは。
すごく臨場感のある、映画や、ドラマを見せられているのと、変わらない。
どこまで体験学習を進めた所で、ひどく、残忍な話だとしても。
結局、自分ではなく、誰かの体験であり、記憶なのだ。
スプラッタ映画を見て、どうして、殺される人の気持ちが、理解できるだろうか。
殺される一人、一人、へ対する、そういうモノだという認識が。
映画を最後まで見ても、一人の人生を奪ったと言う言葉は、出てこない。
死んだ一人は、大量に死んだ被害者の中の一人でしかない。
殺される人へ向けたもの、その残忍な光景に向けたもの。
今、一番知りたい、殺される人の気持ちが、ドコにも存在しない。
感情が伝わってきたところで。
こんなに苦しい思いをしている、で、終わってしまう。
龍の知恵は、使っている側の受け取りかたで、すべて変わってしまうのだ。
そこに、普通に机に上で行う勉強と、どれだけの違いがあるだろう。
ドコまで言っても知識は、知識だけ。
与えられるだけ。
知識の使い方を、教えてくれるわけではない。
修羅場を、くぐり抜けてきた戦士と。
体を訓練で鍛えぬき、勉強してきた戦士。
どちらが一対一で、強いのかは明白だ。
龍の知恵は、修羅場をくぐり抜けた戦士を、作り出すことはできない。
自分の力で、自分の体で、自分の全てを。
その場に、投じていないのだから。
どこか一つ間違えば、死んでしまう緊迫感が、ないからだ。
教えられる「死」と、目に訴えかけられる「死」は、それだけ別物だ。
そうでなくては。
甘さを自分で許す。
テキトーに運転するドライバーが、後を絶たない理由にならない。
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