恋って、どうやって始まるの? 6
「弟」は、「姉」を、好きじゃないとダメだ。
子供じみすぎた、シンプルな答えが、「好き」を覆い隠していく。
大きくなるにつれ。
仲の良い姉弟だと、言われるようになり。
琴誇は、次第に違和感を覚えるようになった。
まわりが言う姉弟愛と、その、きずな。
何だかんだ、言っても肉親なのだから。
最終的に決着する、茶番のような出来事。
笑い、話す、一つ一つのできごとに、恐怖心を抱いていた。
そして、琴誇の恋の始まりを言うなら、それを、自覚したときだろう。
「ずっと一緒だったから、いつ、恋していたかなんて分からないよ。
ただ、アリサが言う、恋の始まりは、多分。
恋なんだって、アリサが思ったときだと思う」
まわりが良い年齢になれば、付き合う・付き合わないが話題に上がる。
恋することに憧れる世代。
恋に憧れるあまり。
相手の背後に、恋をしている自分を見ている時代。
恋をしている自分が好きで、これで私は大人だと。
優越感すら沸き上がる。
琴誇の耳には、そういった話題が、薄っぺらに聞こえ。
発言一つ、一つが。
自分勝手で中身のない、くだらない話にしか、聞こえなかった。
そして、火蓋がきられるのだ。
「お前のねぇちゃん、紹介してくれないか?」
たわいのない話でしかない。
話題として、彼女が欲しいトークを。
モテない男連中で、していただけだ。
冗談半分で、クラスメイトが言った一言に。
琴誇は、これ以上なく、動転している自分に気づいた。
一瞬でも、よぎってしまった想像が。
手を震わせるほど恐ろしい、一つの可能性として、琴誇に訴えたのだ。
姉はいずれ、自分の知らない誰かと。
笑顔で手を振りながら、ドコかにいってしまうぞ、と。
まわりが恋に憧れる時代に、琴誇は。
姉弟愛などでは、姉を、つなぎ止めておくことが、できないことを理解した。
何も考えず、「姉弟だし」と、口先で否定していた事。
それら全てへの、強い反抗心が沸き上がることに驚き。
無意識に蓋をしていたのは、なんなのか。
絶対に、姉は自分のそばから消えるコトはないと言う。
確証のない、安心感だったことに気づいてしまった。
ならば、この気持ちは、と。
悩める青少年は、認めたくない事実を飲み込むことになった。
認めてしまえば、すべてが壊れてしまうと、自覚して。
自分は、姉に恋をしていると。
「多分、恋だけを口にするのは難しいよ。
姉弟愛だって、立派な愛情なんだから。
ただ、ドコで、恋と自覚できるか。
たぶん、それが、大事なんだと思う。
言葉の上で愛し合っても、すぐ、飽きるだけなんだから」
「琴誇が、その人のことを、どれだけ好きか、伝わってくるようね。なるほど…。
恋と自覚できたときが、恋の始まりかぁ~。
琴誇は、その人のことを好き「だった」の?」
アリサは、こんな不自然な話し方は、しなかっただろう。
琴誇が周りを見ても、違和感なんて、ドコにもないと言っている。
だが「だった」だけが、琴誇の耳の中で、反響し続けた。
「だった…」
「初恋は、叶わないものだって、言うじゃない?」
何げないアリサの言葉が。
切れ味の良いナイフのように、スパっと切り落としていく。
アリサが言っていることは、なにも間違っていない。
初恋は叶わないものだと言うのは。
そもそも、初恋した相手と、実る可能性が、ひどく低いからだ。
恋だけでは、愛だけでは、思いだけでは、一緒には、いられない。
だが、琴誇の場合。
初恋で、ゴールを目指せる、数少ないケースだったにも関わらず。
「かなわないもの…」
「そうじゃないの? 琴誇の、その好きな人は、奥さんなの?」
「違う、よ…」
「じゃあ、かなわない初恋で、合ってるじゃない」
男女関係での常識の問題だろう。
好きになったら、夫婦になる。
そんな、時代錯誤にも思えるものが。
この世界では当たり前なのだと、アリサは言った。
「あって、る?」
「なんで、疑問なのよ」
バックミラーから、のぞいたアリサの顔は、いつも通りふざけている。
だというのに、琴誇は、つぶやくように「あって、る?」と、繰り返した。
いつまでも言葉が返ってこないことに、しびれを切らしたアリサは。
琴誇の返事も待たずに続けた。
「もう終わってるなら、合ってるわよ?」
アリサが、言い終わるのと同時に。
車内に鈍い音が響き、車窓は停止した。
ガタガタとギアが変わり、シートベルトを外した琴誇は。
再度、ミラーに写るモノを見て、ようやく理解した。
バックミラーに写ったアリサ顔、そして。
自分の泣き顔。
踏み込んでしまった地雷から、足を離せば爆発するだけ。
無自覚に、なにもわからず踏み、足が吹き飛ぶ兵器。
気をつけても踏みぬくから、地雷なのだ。
もう、琴誇は、高まっていく感情を制御する方法すらわからず。
ドライバー席側のパワーウィンドウスイッチを。
力加減も考えず叩きつけた、拳は、ただ熱く。
喉までせりあがる感情は、ただ、声になった。
「僕が、何をしたって言うんだ!!」
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