恋って、どうやって始まるの? 5
立場によって、見方によって、変わってしまう、曖昧なモノなのだから。
求めるべきは、正論、正解などではなく。
今、問題としているモノに対し。
具体的に成されるべき、最適な方法か、妥協案か。
これは一見、便利に思える、龍の知恵が引き起こしてしまった。
ちょっとした事件だ。
十二歳のアリサは、表情一つ変えず。
家のテーブルに並んだ有権者に向かい。
これだけの事を、真面目に言えてしまったのだから。
反論さえ。
一つ一つ、順序だてて説明を行い。
その上で、もう一度、反論ができるのか? と、返答するほどに。
具体策がない会議に。
結論が出ない話し合いに。
落としどころを、見極めようとしない人の集まりは。
あまりにも、時間と労力の無駄だと、言いのけてしまう。
「かわいくないなぁ~。
ああ、なるほど。だからアリサは、余計に、恋に関してそう思うんだ」
「知恵でも学んだんだけど、恋が沢山ありすぎて。
見ていくと、不思議な気分になったのよ。
それで、分かったのはね?
他人の恋が、私には、理解できるハズがないってことよ。
じゃあ、私の恋って、なんだろうって」
体験しても、理解できないモノは、ある。
恋・愛・恋愛。
個人個人の、ソレを見せられても。
明確な何かである、答えがないものは、体験だけで終わるのだろう。
「こじらせるわけだ」
「琴誇、恋したことある?」
急に飛んできた、投げ槍に、琴誇は表情を固くさせた。
「ない」と、答えれば良かったのだが。
そう言ったとき、アリサが、どんな反応するのか。
手に取るように分かり、琴誇の口は素直に開いた。
「あるよ」
「恋って、どうすれば始まるの?」
アリサは、「恋ばな」を、しているつもり、なのだろうが。
ディープな部分を、根掘り、葉掘り聞かれる「恋ばな」とは、また違う。
どう頑張ったところで。
この話は、琴誇の地雷に、たどり着かないと言う安心感さえあった。
だからだろう、完全に失念してしまうのだ。
恋は、どうすれば始まるか。
それを考えること、そのものが地雷だと。
そう、いつ始まったのか。
いつから、「恋」になったのか。
「それは…」
琴誇の脳裏に浮かぶ、昔。
両親が再婚すると言う、意味も分からないころ。
最愛の妻と、夫をなくした、片割れどうしが再婚する。
お互いに連れ子がいて。
まったく同じような境遇から、意気投合するのは、早かったらしい。
姉は父親の、琴誇は母親の子供で。
時間的・資金的に苦しかった二つの家は、四人家族になり。
苦しい生活が一変した。
それが出会いだった。
ちぐはぐな四人家族は、本当の家族になるため、努力していくことになる。
そして、四人それぞれの立場から見る、他の三人に対する感情が。
すぐに変わるわけもない。
だから、四人は。
分かりやすい肩書きを、相手に張り付けた。
父・母・姉・弟。
そして、各自が、そうあろうとした。
皆、苦しく、寂しい生活を経験しているからこそ。
デキ上がった、普通より上等な家庭を。
とても尊く思っていたのかもしれない。
それは、琴誇も例外じゃなかった。
昨日まで他人だった、目の前にいる人物を。
姉と呼ばなければいけない抵抗感は。
経験した人間にしか、分からないのだろう。
だが、それ以上に。
目の前の、姉と呼ばなければいけない人物は、かわいかった。
姉は、琴誇と同じ感情を抱いていたのだろうが。
子供の頃から、やたら、おせっかいな性格は健在だった。
血が、つながっていないだとか、今日から姉弟だとか。
そんなことすら分からない子供は。
姉弟だと言われ、素直に相手を、そのように思い込んでいく。
自由奔放だった琴誇。
おせっかいな「姉」は、性格と張り付けた役割が、見事にかみ合い。
誰に言われるわけでもなく。
違和感すら感じさせないまま、数日で姉弟になっていた。
少し思い出せば、スグに気づけたのに。
両親に言われるまで、血が、つながっていない事実は、どこかに消えていた。
いつ、「姉」を好きになったのか。
いつ、「姉」に恋していたのか。
琴誇には、その境目となるような、なにかが、思い当たらなかった。
なぜか、を。
ドライバー席に座わる、今、考えれば簡単な話だ。
当時、琴誇が何を思って「弟」なったのか。
何を考えて「姉」に近づいたのか。
それが、全ての間違いであり、全ての始まりなのだろう。
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