神 後藤 博文 6
オマエは、向こうでは死んでいるのだと。
結果論は。
結果が出なければ、何一つ口にすることが、できないのだから。
無感情に「事実」から、冷酷に現実を、すくい取ること。
人は、それを科学。
学問と呼ぶのだ。
「ねぇさんが、僕のことを好きっていうのは…」
「ウソなわけ、ないじゃないか。
なんで、あんなにもキレイで、性格もよくて、スペックの高いおねぇさんが、だ。
決まった相手を作らなかったのか、分からない君じゃないだろ?」
「誰かと付き合ってる暇が、ないからって…」
神は、ひどく深いため息を吐き出し、足元の青年を見下ろす。
「じゃあ、なんで、暇がなかったのかな?
そんなわけがないんだよ。
学生が、スペックの高いおねぇさんが、時間を作れないわけが、ないんだ。
むしろ、ほかの人と比べれば。
同じモノを学んでいたからこそ、おねぇさんは、暇だったハズなんだ。
余裕と時間は、作り出すものだとは、よく言ったもんだと思うよ。
その暇を、ドコに費やしていたのかな?」
口に出してしまうのも、恐ろしい事。
口に出してしまえば、すべてが間違いで、見ていたものが、全てウソで。
自分が思っていたことすら、無駄だったと、証明してしまう。
ウソではないから。
本当だったから。
自分は、やり切ったと、言えるモノが、崩れ去る恐怖。
すべて徒労、すべて間違いだったと、自分で認めてしまうことの恐ろしさ。
だが、どうしても、口に、したくなってしまう。
間違いだと、言われた事が怖くて。
否定したくて。
口は、無責任に、言葉を吐き出してしまう。
「僕と机を並べていたから…。
できない僕に、運動まで、付き合ってくれたから…」
「そう、それが、だ。
おねぇさんにとって、君で言うところの「姉弟」としての立場で、在り方だった。
わざわざ、口実まで作って、一緒にいようとした。
だというのに、君は、家に帰らなくなった。だから、余計に募っちゃったんだよ」
「これは、僕だけの!」
「琴誇君。「僕」じゃなくて、「俺」だろ?」
「そんなことまで」
「おねぇさんは、まぁ、言い方は悪いけれど、良すぎて目立っていた。
だから、言い寄ってくる、誰とも知らないヤツにウンざりして。
男の生理現象のような行動に、嫌気がさして。
人当たりも良い、おねぇさんだったからこそ。
その、いっさいを遮断して、一歩後ろに引き続けて。
何事もないように、願えば、願うほど。
広い身内に、波乱と衝突を生んだ。
高スペックも、生きにくいんだよ、琴誇君。
高スペックも、れっきとした、異物なんだから。
みんな大好きな、平穏は。
平均というグループに、つかず離れず。
逸脱しないように努力しないと、不可能なんだ。
個人が個人である以上、そんなヤツはめったにいないよ。
すべてがスタンダードなのは、おそらく才能だということなんだろうね。
まぁ、この状況をのりきれたのは、この場合。
おねぇさんの、人ができていたのと、君という存在のおかげだな」
「だから、あのとき…」
「それでも、ツラくないワケがないよね。
こうなると、友達・知人に、本心を明かすことが。
できなくなって、くるんだから。
で、その時期じゃないか?
酒に酔って、軽くなった両親の口が。
二人は、姉弟として問題ないと、安心した心が。
ぺろりと、血のつながりは、ないと明かしたのは。
そのときだよ。
兄弟であろうとしていたからこそ。
お互い、忘れていた事実を、思い出したんだ。
おねぇさんの、君への目が変わったのは。
認識が、少しずつ変わっていくのは。
君と同じように。
君は、おねぇさんが、好きだったのを許された。
でも、おねぇさんは、君がよく知る「男」になった。
甘えても良い、本心を口にしても。
一つ抜けている自分を見せても良い「男性」だよ。
何を言っても、害は、ない。
「弟」なんだから。
だから、おねぇさんは、素直な君に、身勝手な理想を押し付けた」
「だから、「僕」なのか…」
「やりすぎている自覚はあるのに。
君は、嫌な顔もせず、素直で従順だった。
そして、学校で友人に言われた一言が、すべてを形にしてしまうんだ。
「彼氏」作らないの? ってね。
その言葉を言われてしまったから。
おねぇさんの中で、一番の男の座を、君は、勝ち取ってしまうわけだ。
あとは、もう、姉弟と知らなければ、ただのラブコメみたいなんだよ、この話は」
「そんなことって…。あるのかよ?」
「ないと思うだろ?
あったんだから仕方ない。
ほとんどない可能性と、切り捨てたモノが。
こうやって形作られるから、未来は分からないと、俺ですら、思うんだ。
誰かが、とか。
皆が、とか。
普通は、とか、が、黙って封殺する可能性。
あったんだよ、琴誇君?
君に関して言えば、三文小説もビックリの展開が。
お互い好きだけど、姉弟の関係を壊したくないから、踏み込まない。
片方が離れるたび、離れた分、片方が近寄ってくる。
いつまでも、一定の距離感を。
作為的なんじゃないかと思うぐらい。
箱の中身を知っていたら、はがゆいほど。
姉弟を保ち続けた、ラブストーリーだ」
「ねぇさんは、僕の事故を見た後、その後、どうなったんだ!?」
神は、足元で必死に叫ぶ子供を優しく見下ろし。
ひどく優しい口元で、やんわりと。
「もう、それは、琴誇には、関係ないことだよ?」
と、後藤の足元で顔が凍り付き。
言葉すら出なくなった顎に、滴が垂れる。
「なにをいって…」
「なにをって、そのままの意味だけど。
もう、君は、何を知ったところで、何もできない。
向こうに未練を残したところで。
今度こそ、本当に、かなわない願いだよ。
良いかい? 琴誇君?
もう、君の遠距離恋愛は終了しました。
飛行機は飛び立ったし。
君は、一緒に乗ることができなかった。
それどころか。
もう、飛行機は、ドコとも知れない海に墜落して、消息不明なわけだよ」
「言ってくれたって、良いじゃないか!」
「なに、期待してるんだよ?
なに、すがっちゃってるんだよ?
俺は、この世界の神であって、向こうの神じゃない。
君が、考えなければいけないのは。
せっかく生きながらえて。
こうしてやって来た、この世界で生きることだよ。
向こうの何か、じゃない。
もう、君の葬式は終了してる。
君の体は火葬場に行ってだな? 納骨すら、終了してるんだわ。
もう、君は、この世界の住人です。ココで、生きてください」
「納得できるかよ!」
「納得なんて、求めてないよ。
さて、君を怒らせた、お詫びに、ガスは無料で満タンにしておくから、さ。
ちゃんと、俺の願い通りに生きてくれよ」
「なんだよ、それ!」
「楽しく生きろ」
神の右手の親指が、笑顔と一緒に突き出される。
「それって、それってさぁ」
「そうそう。ガルフも、コッチに送り付けたとき、同じこと言った。
ああ、ついでだから、言っとくね?
ガルフの記憶は、極力消しておいたから。
アイツにも、楽しく、生きてもらいたいんだ」
「じゃあ、ガルフさんも…」
「もう、説明する必要は、なさそうだな」
と、神の姿が光へ変わっていく。
「おい、待ってよ! ここで、退場するのかよ!」
「今回は、ココが引き際だろ?
追っ手に追いつかれる前に、さっさと走れよ! じゃあな!」
片手を大きくあげた、男らしい別れの挨拶は。
シルエットへと変わり、光は四散した。
道端の雑草は、サワサワと、風にもてあそばれ。
車内から、騒音を垂れ流している人物の声が耳に入る。
琴誇の視界には、緑の地面しか映らず。
背中を見下ろしているだろう、皆の視線すら。
どうでも良いモノになった。
「考える時間ぐらい、くれたって、良いじゃないか…」
ここで、立ち止まることを許さないのは。
神のいじめなのか、分からないまま。
琴誇は、短くない時間で涙をぬぐい、ドライバー席に消えていく。
もう、聞きなれたエンジン音。
説明しなさいと、必要なまでに迫りくるアリサ。
何も言わず見上げるナビィは、すべてを、察したように頷き。
ガルフの目は、再度、閉じられるだけだった。
「面白い!」「続きを読みたい!」など。
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異世界完全遭難のネリナル 白の章 完結済み
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