表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/247

神 後藤 博文 6


 オマエは、向こうでは死んでいるのだと。


 結果論は。

 結果が出なければ、何一つ口にすることが、できないのだから。


 無感情に「事実」から、冷酷に現実を、すくい取ること。


 人は、それを科学。

 学問と呼ぶのだ。


「ねぇさんが、僕のことを好きっていうのは…」


「ウソなわけ、ないじゃないか。

 なんで、あんなにもキレイで、性格もよくて、スペックの高いおねぇさんが、だ。

 決まった相手を作らなかったのか、分からない君じゃないだろ?」


「誰かと付き合ってる暇が、ないからって…」

 神は、ひどく深いため息を吐き出し、足元の青年を見下ろす。


「じゃあ、なんで、暇がなかったのかな?

 そんなわけがないんだよ。


 学生が、スペックの高いおねぇさんが、時間を作れないわけが、ないんだ。


 むしろ、ほかの人と比べれば。

 同じモノを学んでいたからこそ、おねぇさんは、暇だったハズなんだ。

 余裕と時間は、作り出すものだとは、よく言ったもんだと思うよ。


 その暇を、ドコに費やしていたのかな?」


 口に出してしまうのも、恐ろしい事。

 口に出してしまえば、すべてが間違いで、見ていたものが、全てウソで。

 自分が思っていたことすら、無駄だったと、証明してしまう。


 ウソではないから。

 本当だったから。


 自分は、やり切ったと、言えるモノが、崩れ去る恐怖。

 すべて徒労、すべて間違いだったと、自分で認めてしまうことの恐ろしさ。


 だが、どうしても、口に、したくなってしまう。


 間違いだと、言われた事が怖くて。

 否定したくて。

 口は、無責任に、言葉を吐き出してしまう。


「僕と机を並べていたから…。

 できない僕に、運動まで、付き合ってくれたから…」


「そう、それが、だ。

 おねぇさんにとって、君で言うところの「姉弟」としての立場で、在り方だった。


 わざわざ、口実まで作って、一緒にいようとした。

 だというのに、君は、家に帰らなくなった。だから、余計に募っちゃったんだよ」


「これは、僕だけの!」

「琴誇君。「僕」じゃなくて、「俺」だろ?」


「そんなことまで」


「おねぇさんは、まぁ、言い方は悪いけれど、良すぎて目立っていた。


 だから、言い寄ってくる、誰とも知らないヤツにウンざりして。

 男の生理現象のような行動に、嫌気がさして。


 人当たりも良い、おねぇさんだったからこそ。

 その、いっさいを遮断して、一歩後ろに引き続けて。


 何事もないように、願えば、願うほど。

 広い身内に、波乱と衝突を生んだ。


 高スペックも、生きにくいんだよ、琴誇君。

 高スペックも、れっきとした、異物なんだから。


 みんな大好きな、平穏は。

 平均というグループに、つかず離れず。

 逸脱しないように努力しないと、不可能なんだ。


 個人が個人である以上、そんなヤツはめったにいないよ。

 すべてがスタンダードなのは、おそらく才能だということなんだろうね。


 まぁ、この状況をのりきれたのは、この場合。

 おねぇさんの、人ができていたのと、君という存在のおかげだな」


「だから、あのとき…」


「それでも、ツラくないワケがないよね。

 こうなると、友達・知人に、本心を明かすことが。

 できなくなって、くるんだから。


 で、その時期じゃないか?


 酒に酔って、軽くなった両親の口が。

 二人は、姉弟として問題ないと、安心した心が。


 ぺろりと、血のつながりは、ないと明かしたのは。

 そのときだよ。


 兄弟であろうとしていたからこそ。

 お互い、忘れていた事実を、思い出したんだ。


 おねぇさんの、君への目が変わったのは。

 認識が、少しずつ変わっていくのは。


 君と同じように。


 


 君は、おねぇさんが、好きだったのを許された。

 でも、おねぇさんは、君がよく知る「男」になった。


 甘えても良い、本心を口にしても。

 一つ抜けている自分を見せても良い「男性」だよ。

 何を言っても、害は、ない。


 「弟」なんだから。

 だから、おねぇさんは、素直な君に、身勝手な理想を押し付けた」


「だから、「僕」なのか…」


「やりすぎている自覚はあるのに。

 君は、嫌な顔もせず、素直で従順だった。


 そして、学校で友人に言われた一言が、すべてを形にしてしまうんだ。

 「彼氏」作らないの? ってね。


 その言葉を言われてしまったから。

 おねぇさんの中で、一番の男の座を、君は、勝ち取ってしまうわけだ。


 あとは、もう、姉弟と知らなければ、ただのラブコメみたいなんだよ、この話は」


「そんなことって…。あるのかよ?」


「ないと思うだろ?

 あったんだから仕方ない。


 ほとんどない可能性と、切り捨てたモノが。

 こうやって形作られるから、未来は分からないと、俺ですら、思うんだ。


 誰かが、とか。

 皆が、とか。

 普通は、とか、が、黙って封殺する可能性。


 あったんだよ、琴誇君?

 君に関して言えば、三文小説もビックリの展開が。


 お互い好きだけど、姉弟の関係を壊したくないから、踏み込まない。

 片方が離れるたび、離れた分、片方が近寄ってくる。


 いつまでも、一定の距離感を。

 作為的なんじゃないかと思うぐらい。

 箱の中身を知っていたら、はがゆいほど。

 姉弟を保ち続けた、ラブストーリーだ」


「ねぇさんは、僕の事故を見た後、その後、どうなったんだ!?」


 神は、足元で必死に叫ぶ子供を優しく見下ろし。

 ひどく優しい口元で、やんわりと。


「もう、それは、琴誇には、関係ないことだよ?」


 と、後藤の足元で顔が凍り付き。

 言葉すら出なくなった顎に、滴が垂れる。


「なにをいって…」


「なにをって、そのままの意味だけど。

 もう、君は、何を知ったところで、何もできない。


 向こうに未練を残したところで。

 今度こそ、本当に、かなわない願いだよ。


 良いかい? 琴誇君?

 もう、君の遠距離恋愛は終了しました。


 飛行機は飛び立ったし。

 君は、一緒に乗ることができなかった。


 それどころか。

 もう、飛行機は、ドコとも知れない海に墜落して、消息不明なわけだよ」


「言ってくれたって、良いじゃないか!」


「なに、期待してるんだよ?

 なに、すがっちゃってるんだよ?

 俺は、この世界の神であって、向こうの神じゃない。


 君が、考えなければいけないのは。

 せっかく生きながらえて。

 こうしてやって来た、この世界で生きることだよ。

 向こうの何か、じゃない。


 もう、君の葬式は終了してる。

 君の体は火葬場に行ってだな? 納骨すら、終了してるんだわ。

 もう、君は、この世界の住人です。ココで、生きてください」


「納得できるかよ!」


「納得なんて、求めてないよ。

 さて、君を怒らせた、お詫びに、ガスは無料で満タンにしておくから、さ。

 ちゃんと、俺の願い通りに生きてくれよ」


「なんだよ、それ!」


「楽しく生きろ」

 神の右手の親指が、笑顔と一緒に突き出される。


「それって、それってさぁ」


「そうそう。ガルフも、コッチに送り付けたとき、同じこと言った。

 ああ、ついでだから、言っとくね?


 ガルフの記憶は、極力消しておいたから。

 アイツにも、楽しく、生きてもらいたいんだ」


「じゃあ、ガルフさんも…」


「もう、説明する必要は、なさそうだな」

 と、神の姿が光へ変わっていく。


「おい、待ってよ! ここで、退場するのかよ!」


「今回は、ココが引き際だろ? 

 追っ手に追いつかれる前に、さっさと走れよ! じゃあな!」


 片手を大きくあげた、男らしい別れの挨拶は。

 シルエットへと変わり、光は四散した。


 道端の雑草は、サワサワと、風にもてあそばれ。

 車内から、騒音を垂れ流している人物の声が耳に入る。


 琴誇の視界には、緑の地面しか映らず。

 背中を見下ろしているだろう、皆の視線すら。

 どうでも良いモノになった。


「考える時間ぐらい、くれたって、良いじゃないか…」


 ここで、立ち止まることを許さないのは。

 神のいじめなのか、分からないまま。


 琴誇は、短くない時間で涙をぬぐい、ドライバー席に消えていく。


 もう、聞きなれたエンジン音。


 説明しなさいと、必要なまでに迫りくるアリサ。

 何も言わず見上げるナビィは、すべてを、察したように頷き。


 ガルフの目は、再度、閉じられるだけだった。



「面白い!」「続きを読みたい!」など。

少しでも、思った方は。

ぜひ、ブックマーク、いいね よろしくお願いします。


それだけで、皆様が思われている以上に

モチベーションが上がります。


異世界完全遭難のネリナル 白の章 完結済み

もよろしければどうぞ。



お読みの上で、何かお気づきの点や、ご意見ございましたら遠慮なく


ツイッター @chicken_siguma

URL  twitter/chicken_siguma にて、DM または


chickenσ 公式ライン @729qbrtb

QRコード http://lin.ee/iH8IzAx にて 承っておりますので。


今後とも、長いお付き合いよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ