神 後藤 博文 5
「そうか。じゃあ、エピソードとして。
君が、車の免許を取ろうとしたきっかけは何だ?
そして、君の、すべてを使ってまで。
金を稼ぐだけのパワーに、なったモノはなんだ?
普通じゃない、と、思えるバカが、生まれてしまった原因は?」
「それは、「彼女」が、欲しかったから…」
「何気なく、おねぇさんに聞いたときの。
「やっぱ車ないとダメなのかなぁ?」に、「あればうれしいよね」と。
笑顔で言われてしまった君が、「彼女」として想像した人物は誰だ?」
「そんなわけ…」
「「彼女」に、明確な人物像は、なかったのかもしれない。
だからこそ、君は知らないうちに、その人物像に、おねぇさんを当てはめた。
新しい恋に、あこがれてしまった弟は。
相手のない恋を探した君は。
君の中の歪んだ感情が、本心が。
純粋に恋愛をしたいとは、思わせなかった。
純粋であるコトが良いと思うのは、大きな間違いだよ、琴誇君。
真っ白で純粋だからこそ。
歪んで、苦しんで、一途だからこそ、間違え続けていくもんだ。
だから、君は。
君の中に、もともとある、純粋な感情を、ソコに押し当てた。
そしたら、何とも見事に、ハマったんだよ。自覚あるだろ?」
「……」
「だから、こうして始まってしまうんだよ。
始まりすらしなかった、君の恋物語が。
そんで、琴誇君は。
助手席で笑う、おねぇさんに。
頭の中で、何度も、つぶやいてもらったハズだな?」
「やめろ」
「叶うハズがないと呟くだけで、簡単に潰れてしまう。
おねぇさんに対する、恋愛感情。
それ以外の感情が、がんじがらめに、してたからな。
だから、どんなに体力的に追い詰められても。
君は夢のような、そのシーンだけを夢見て、前進し続けた。
それすら盲目的に、正解だと信じていた。
だって、初めて許されたんだもんな? 琴誇君。
そんな、わずかな希望にすがるしかなかった、小指の先ほどもない希望が。
可能性が、君を、たきつけた」
「やめろって、言っているだろ」
「君から告白することは、君自身が許すことができない。
君が、姉に恋すること、そのものを許容できない。
君が、おねぇさんの行く先を阻むことは罪だから。
何もできないと思い込んでいた、琴誇君は。
何でもできる、おねぇさんにつり合うハズもなく。
姉弟という壁を破る事とは、つまり。
唯一、保ち続けてきた、隣にいる理由を、失うことだから。
自分からは、絶対に踏み込んだりしては、いけなかった。
だから、こんなにも。
曖昧な想像が。
一つにして究極の方法を、君に気づかせてしまったんだよ」
「口を閉じてくれ」
「ああ、そうか。
おねぇさんが、告白してくれれば、すべてが丸く収まるのか、ってさ」
「違う」
「違わないでしょ?
だから、君は、馬鹿みたいに働いた。
馬鹿みたいに頑張った。
馬鹿みたいに、周りをいっさい気にせず、進み続けた。
ただ、望みが薄いシチュエーションを夢見て。
叶わないと思われていた、唯一にして、絶対の方法を信じて」
琴誇の、いつの間にか震えだしていた膝が折れる。
なぜ、足に力が入らないか、わからず、琴誇は「神」を見上げた。
なぜか縋りつきたくなっている自分に、違和感を感じながら。
「でね、ハッキリ言うけど、こんなことしなくても、よかったんだよ?
もう、君の人生において、大失敗と命題が、つけられちゃうんだけどさ。
君は、冗談でもよかったから。
一言、言えてしまえば、おねぇさんのトリガーを、引けたんだ」
「……」
「いらないんだよ、ロマンチックなムードも。
明確な、告白するための資格なんて。
告白を、大事のように思っているのは、告白しようとしている自分だよ。
気づかなかったでしょ?
ある時期を境にして、おねぇさんは琴誇君に対して。
大好きだとか、言わなくなっていたんだよ?
だからね?
君が、冗談で良いから「大好きだ、一生そばにいてくれ」と一言。
ホラでも吹けば、君が望んだシチュエーションは、百パーセント叶えられたんだ。
おねぇさんも、君と同じところまで、できあがっていたんだから。
君と違って、おねぇさんは、あと半歩で、完全に火が付いたっていうのに。
その半歩が遠かったね。
君が、あんなに頑張ってしまうから。
その半歩が、ズルズルと、遠ざかっていった。
いずれにしても、かなっていたハズの恋と言って良い。
さて、琴誇、もう一度、言うぞ?」
もう、疑いようもなく。
もう、冗談ですらなく。
琴誇は。
実感すら持てなかった、目の前の人物の肩書きに、ようやく合点がいく。
後藤 博文は、この世界の「神」なのだと。
まるで小さいころから琴誇を、見てきたような結果論。
目の前の神様の言っていることは「結果論」でしかない。
神が言っている通りにしても、そうはならなかった、のかもしれない。
わずかな可能性が、行動が、すべてを変えてしまうから。
忙しくても言えた言葉さえあれば。
だから、長い言葉を使い、神は、こう言っている。
「君は、フロントガラスで息絶えるのを、おねぇさんに見せつけた」
「面白い!」「続きを読みたい!」など。
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異世界完全遭難のネリナル 白の章 完結済み
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