神 後藤 博文 4
「君も見ただろ、私の本。とある神のインデックス」
「……」
「神と言っても、できることしかできないし。
できないことは、どう曲がっても無理だと、君は知っているハズだね?」
「じゃあ、僕は。もう、本当に、何もできないの?」
「琴誇君。まだ、分かっていないようだから、言ってあげる。
今、君が、ショックを受けなければいけないのは。
そんな、かなわなかった恋とか。
届かなかった思いとか、約束を破ったとか。
そう言うことでは、ないんだよ」
「後藤さん、ドコまで?」
「俺は神だぞ。ドコ、とかじゃなくて、事情は、全て知ってる。
なんで、周りが見えないほど、暴走し続けたのか。
その理由も、なにもかも知ってる。
だから、君が、気にしなければいけないのは、そんなことじゃ、ないんだ」
「じゃあ…」
「その顔は、まだ俺が言っていることに、ついてきてない顔だなぁ~。
だから、俺の言葉を疑っている君に。
あきらめられない君に。
一言で、全部が嘘じゃないと、証明して見せようじゃないか」
「心を、のぞかれている気分だよ」
「心なんか読めなくても。
一人の人間のストーリーを、余すことなく見ることができれば。
おおよそ、察しがつくのだよ。琴誇君」
ストーリー、と、言う言葉が、琴誇には、究極に思えた。
もう、琴誇の人生は。
本のように、読み上げる事しかできないと、言われているようで。
「……」
「君は、フロントガラスで息絶えるのを、おねぇさんに見せつけた」
琴誇の顔から、表情が蒸発していく。
最後に残された無表情は、全てを飲み込んだと、後藤に教えた。
「そうだよ、琴誇君。結果は出てしまっている。
結果が出ているのだから。
何が間違っていたかを、明確に、君に伝えることができる」
そう、本は書き上げられたのだから。
完成品は、上がってしまったのだから、いくらでも評価できる。
批判も、賛否も、共感さえも。
過去を切り抜いて、物語にするのではなく。
もう、本のタイトルには、琴誇のフルネームが、刻まれているのだから。
琴誇の目は、まっすぐ、その先を促していた。
「おねぇさんと、血が、繋がっているべき、だったね。
そして、おねぇさんも、君なんかに、恋なんか、するべきじゃなかった。
小さいうちに、血のつながりがないと、知るべきじゃなかった。
知ったタイミングが、悪かった。
気持ちが大きくなる前に。
ありきたりな言葉が、なかったことに、してくれるハズだった」
「ねぇさんが、僕を?」
「君たち兄弟は、ハッキリ言って。
俺に言わせれば、異様でしか、なかったんだよ。
君たちの様子に、関係が深い人ですら、それが「恋愛」だと気づかなかった。
相思相愛だと、気づかなかった。
ただ、ただ、ブラコンの姉。
おねぇさんが、大好きすぎる、弟にしか見えなかった。
当たり前だよな?
姉弟という言葉から、まさか、肉親じゃないなんて、誰も想像もしない」
「僕が、聞いているのは…」
「最初は、ただの依存だった。
君の、何でも、できてしまう、おねぇさんは。
あちらの神が、多分、ステータスの調整を、忘れたんじゃないかな。
帳尻だとか、そういった言葉を忘れていたんだろうね。
でも、そういう帳尻は、大人になるにつれ。
周りにもまれて、価値のないものに、なっていってしまうハズだった。
いくら若いウチに有能でも、磨こうとはせず。
正しき努力は若いからこそ、できないからね。
皆とか、そういうものに飲み込まれていく。
そういう流れだったんだよ、琴誇君。
誰もが才能を望むが。
才能は、大概の場合。
誰かや、何かによって、黙って潰されていくモノなんだ」
「なにが、言いたいんですか?」
「そのストッパーを、君は、ことごとく、外していったんだよ。
おねぇさんが、心で限界を決めていく段階で。
君は、おねぇさんに、なんて言い続けた?」
「だから!」
「聞いているのは、俺だぜ? 答えてみろよ、いつもの口癖を」
「そんな…。そんな馬鹿が、あるわけがないだろ!?」
「そうだ、それだよ。
人の心なんて、そんなもん、なんだよ。
だから、君のねぇさんは、何でも、できるように努力してしまった。
本物が、努力してしまったときの容赦のなさは、君が、よく知っているよな?
だから、君は、そんなに、なっていったのだから。
そばにいることへの劣等感。
弟としての立場しか、相手の隣に立てない、自分自身への紆余曲折。
キッカケは単純だけど、すでに爆弾は用意されていた。
そして、琴誇君の、引いてはいけないトリガーを。
おねぇさんは、無自覚に、引いてしまったんだ」
「トリガー?」
「そうだよ、琴誇君。
君は、銃を向ける相手を間違え、トリガーすら、自分で引かなかった。
だから、冗談にも思える、バカみたいな一言が。
君に、静かに火をつけてしまった。
言ったでしょ? 人の心なんて、そんなものだよ。
それが君には、よくわかるハズだけど?」
「何を言っているのか、分からないんだけど」
「面白い!」「続きを読みたい!」など。
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異世界完全遭難のネリナル 白の章 完結済み
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