ハメました 3
引かれたところで、いくら駄々をこねたところで。
保険屋さんも、昔からの累積や経験から、対応が決まっており。
黙って、決まった金額をひねり出すだけ。
その金額は、痛い思いをして、病院に入院し。
保険屋さんと、めんどくさいやり取りを続け。
療養に努め、完治するまでのスパンの経費は出るとはいえ。
まともに働いた方がマシだと、思える金額で。
大抵の場合は、示談書に判子を押すことになるだろう。
事故にあってしまって良い理由も、うま味も。
もう、どこにもないのだ。
保険金目当ての当たり屋が、いなくなったのを見れば、分かりそうなモノだが。
あたらしいと言われている常識が、平成初期のモノでしかなく。
法律も何もかも、10年もあれば変わり。
平成30年が終わりを告げ。
令和の現実と、遠くかけ離れていることに、早く気づくべきなのだが。
気づくときは、自分自身の体を使って、経験したときだけなのだろう。
保険金として出て行く金額が、決まり。
低くなったのだから。
毎月払う、保険料が安くなって当然。
ルールしか存在しない車道と、車の台数の多さが、人の思考を鈍らせ。
古い常識と車の自身の性能が、判断すら鈍らせていき。
交通量が多い道路を、真横に横断するという、行動に走らせるのだろう。
法も条例もルールも規制も。
土地に生きる人のモラルが、ベースなのだ。
横断歩道以外を歩くわけがないと。
車道を走る車は思い、アクセルを踏踏んでいると言うのに。
スマホを見ながら運転するドライバーも、チラホラ見られる中。
歩行者は、車は、人が運転しているから、見ていてくれるから大丈夫だ。
なんて、どうして思えるのだろう。
認識が、ズレ過ぎている。
某、有名ゲームが、おこしたブームだけで。
高速道路・一般道路。
どちらも事故率が急激に上がり、死亡事故すら出たというのに。
原因を作った、そのドライバーを信用している、安全だと思っている。
その判断が、すべて間違っていると、どうして気づけないのか。
歩きスマホで、前を向いていないと。
その背後から走るドライバーは、どうやって気づけるのだろう。
ドライバーは、あなたの隣にいる友人なのだから。
電話が鳴れば、よそ見をするし。
お腹が減れば、片手が塞がってでも、食事をするのだ。
運転は疲れるから。
ブレーキペダルを、すぐに踏めない座席ポジションにしていても、おかしくない。
一秒もあれば、人がミンチになるというのに。
どこまでも、モラルの問題だ。
お互い、道路を行く人々が。
相手に無責任に投げ捨てた責任が。
常識のギャップを生んでいく。
だからこそ、無駄とわかるまで。
ガルフは、車を押し続けるのだろう。
できないハズがない、できるハズだ、大丈夫だ。
そんな、あやふやな言葉が、常識を狂わせている。
常識外の存在である車でも、自分の常識の物差しで、測っているのだから。
無理だと教えるにも、伝える言葉も方法も思いつかず。
琴誇は、その無駄な行動を見ているしかなかった。
お互いに、見ているしかないだろう。
問題が起きるまで。
思ったよりも、そのときは、早く訪れた。
ガルフは、車から、ゆっくりと手を放したのだ。
無駄だと分かったのだろう。
そのまま車内に連れ込もうと、琴誇は、足を一歩踏み出し。
一歩、近づいたガルフから、声が聞こえ。
前髪で隠れた顔半分から、見えた色。
まるで、蛍日のような、金色の輝きがチラつき。
体を大きくのけ反らせ。
ふんわりと舞う、髪の下に隠れた、ふだんは閉じられている左目が開かれ。
金色は瞳の色だと、朝もやの中、琴誇は理解した。
「リアル中二、びょ…」
琴誇は、最後のひらがな、「う」を口から出そうとしても。
喉から出てこなかった。
急に、何かを喉につめられたように。
琴誇は、自分の変化に戸惑い。
もう一歩、踏み出そうとしていた膝は、子鹿のように震えていた。
何が起きたのかわからず。
右手を、顔の前まで上げるだけでも、相当な労力を必要とし。
ようやく、視界に映した手は、小刻みに震える。
もう、何が、何だか、分からないまま。
膝から下に、力を入れることすら難しくなり。
力なく膝を折り、しりもちをつく。
自分に何が起きているのか、再度、自分に意識を向ければ。
胸を締め付けるような、強い感覚。
そして背筋を、ゆらりと上ったものが、頭に到達したとき。
ようやく琴誇は、理解し始める。
そして、再度、ガルフを目にし、確信に変わっていく。
「怖がっている? 僕が? なんで?」
これを恐怖と言わず、なんだというのか。
体全身に広がっているモノは、間違いなく、恐怖心だ。
それも、生易しいものではない。
交通事故で、人が、簡単に、ひき肉になった一部始終を。
助手席という、特等席で見せつけられた、ときの恐怖。
それすらも、上回るかもしれない。
生涯、恐怖だけで、ここまで体が萎縮してしまうことは、そうはないだろう。
「面白い!」「続きを読みたい!」など。
少しでも、思った方は。
ぜひ、ブックマーク、いいね よろしくお願いします。
それだけで、皆様が思われている以上に
モチベーションが上がります。
異世界完全遭難のネリナル 白の章 完結済み
もよろしければどうぞ。
お読みの上で、何かお気づきの点や、ご意見ございましたら遠慮なく
ツイッター @chicken_siguma
URL twitter/chicken_siguma にて、DM または
chickenσ 公式ライン @729qbrtb
QRコード http://lin.ee/iH8IzAx にて 承っておりますので。
今後とも、長いお付き合いよろしくお願い致します。




