ハメました 2
真下から、岩石でも突き出てきたら、一撃で、車はオシャカだ。
魔法が存在する、この世界において、一番バレては、いけない弱点。
地雷などを用意しなくても。
魔法があるこの世界で。
タイミング良く、地面から岩を突き出されたら、アウトだ。
改造車でよく、車高を低くする改造があるが。
それは、あくまでも、サーキット上で速く走る工夫だ。
イレギュラーが、たくさんあるオフロードや。
キレイとは言いがたい道もある、公道を走るのに向いていないは。
コレを知っていれば分かる。
経年劣化ではなく、物理的に故障させる要因を、自ら作っているのだから。
嫌がって、車体裏に鉄板をはり付けるぐらいなら、車体を浮かせた方が。
メンテナンスのとき、余計なお金を払わなくて済むだろう。
琴誇が目にしている状態が、どれだけマズい状況か伝わっただろうか。
車のタイヤ前輪は、土に埋まり。
車体が地面に完全に接地してしまっている、この状況が。
車体が、前のめりに傾き。
正面から見ると、まるで砂浜のカメが、顔をのぞかせているようだ。
琴誇は、開けっ放しのドアに体を預け。
車内に顔だけをのぞかせる。
「終わった…。これは、無理だよ…」
「レッカーが、必要な感じです?」
「レッカーで引っ張っても、かなり苦労するレベル」
もし、レッカー車が、この場に来たのなら。
ミイラ取りが、ミイラになってしまうだろう。
いつもうるさいアリサが、空気を読んだ、静かな車内で。
ガルフの目が、ゆっくりと開かれる。
「…ならばどうする? 押せば良いのか?」
「もっと、沈みかたが浅ければ、押して何とかなるけど、これは無理ですよ」
「…なぜだ?」
「なぜって…。単純に、力が足りないからです」
「…そうか。ならば、問題はない」
そう言うと、ガルフは車から降り立ち。
一回転させた首から、コキコキと、イイ音を鳴らす。
「問題ないって…」
大ありだ、という言葉を、琴誇は飲み込んだ。
ガルフの着ているものが、ブカブカとしているため。
意識しなければ、そうは感じないが。
ガルフは、どう言いつくろっても、体格が良いとは言えない。
服から除く手首は細く。
身長も175センチある、琴誇と変わらない。
剣士をやっているのだから、戦いは強いのかもしれない、が。
戦いのスタイルが、力技ではなく。
スピードや技術を生かした、スタイルなのだと、その体格が思わせる。
純粋な力が、果たしてドコまであるのか。
それには、どれだけの体格が必要なのか。
素人目にも分かるほど、力のベクトルとは、真逆の体つきだ。
服の上からでも分かるほど。
戦いを、なりわいとする者としては、華奢すぎるだろう。
始めに受けた印象が、そのままガルフという人物の、在り方なのだ。
すべてが、儚いのだ。
その儚さを演出しているのは、ガルフが、まとうオーラだけではない。
立ち姿という、髪の毛一本から、足の先まで、全てで、表現している。
だが、ガルフは無言で、肯定するのだ。
琴誇を、まっすぐ視線を向けるガルフの顔には、少しの迷いもない。
「いや、ガルフさん。車って、そんなに軽くないですよ? 鉄の塊なんですから」
ガルフは、小さく頭を傾け、一言。
何かを、言ったように見えた。
琴誇には、理解できない言葉で。
そこで琴誇は、再度、気づかされる。
車外に出てしまっては、会話ができないと。
また同じ失敗を、また繰り返したと、車内の翻訳機をにらんだ。
すぐにガルフを止めなければと。
琴誇が、視線をあげたとき、ガルフは何も言わず、車を押していた。
当然といえば、当然の結果だろう。
ピクリともしない車体は、ガルフの力を、あざ笑うように左右に揺れる。
車道を走る車は、トンの重さがある。
そんな当たり前で、当然のことを、ガルフに伝える術がない。
トンと言う重さの物が、時速140キロ以上で走れてしまう常識。
だが、それはエンジンという、機械があるからできるマジックだ。
このマジックは、人の感覚に訴える。
車は軽く、すぐ止まるものだと。
ドライバーは、人を引きたくないから、勝手によけると。
車に、ひかれても、大したことには、ならないと刷り込んでいく。
車道を横切れば、早いという理由で。
凶器が走り抜ける道を、平然と横切るという愚考を、大丈夫だと思わせ。
後押していくのだ。
それで、大丈夫であるなら、交通ルールなど要らない。
当たり前すぎて、身近にありすぎて。
希薄になっていく常識は。
車に引かれれば、簡単に、人なんて死んでしまうという。
悲劇を自分の目で見たときしか、理解できないモノ、なのかもしれない。
車にひかれたら、お金が貰えるからから良いという免罪符が。
相手が悪いのだから、という免責が。
危険性を、希薄にさせているのかもしれない。
走る車は、ギロチンと変わらない。
人間、本気で車にひかれれば、挽肉になる。
首や、腕が、飛んでいく。
なぜ、忘れてしまうのだろう。
昭和から平成初期には。
事故保険金が、年間、兆円レベルで、お金が動いていた。
だが、そんな時代は、もう終わり。
このまま行くと、経済が破綻すると。
法整備と、取り締まりが強化された後、令和となった今。
もはや、三・四十年前の時代の常識は、古すぎる。
「面白い!」「続きを読みたい!」など。
少しでも、思った方は。
ぜひ、ブックマーク、いいね よろしくお願いします。
それだけで、皆様が思われている以上に
モチベーションが上がります。
異世界完全遭難のネリナル 白の章 完結済み
もよろしければどうぞ。
お読みの上で、何かお気づきの点や、ご意見ございましたら遠慮なく
ツイッター @chicken_siguma
URL twitter/chicken_siguma にて、DM または
chickenσ 公式ライン @729qbrtb
QRコード http://lin.ee/iH8IzAx にて 承っておりますので。
今後とも、長いお付き合いよろしくお願い致します。




