表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/247

用心棒とか、必要だと思うんだ 10

「アリサさんは、学生時代、勉強しか、してこなくて。

 社会的応力が低い人なんですかね?」


「良い大学出てきて、学力の高いけど、プライドが高くて。

 コミュ力低くて、正論を並べ続けて。

 まわりに嫌われるヤツって、言いたいんだね?

 しかも、そのくせ仕事はできない」


「琴誇も、分かってきたじゃないですかぁ~」


「興奮ぎみに言われても。

 学力と、人の能力は別ものだって、僕がやってた、バイト先の店長の格言だから」


「よく、その言葉を、鵜呑みできたモノですねぇ~。

 普通は、終わってしまった学力社会を自覚できないで、反論しそうなものなのに」


「アレを見ろと、先輩二人を指差して言われたら、反論できないでしょ」


「良い、社会勉強を、してきましたねぇ~」

「その場で出来上がった格言にしては、完成度が高すぎたなぁ~」

 と、後部座席のドアが開かれ、アリサが座席に腰掛ける。


「もう、僕が扉を開けなくても良いね。アリサ」

「ん。よく分からないけど、この人、乗せるわよ」

 流れのまま、剣士を乗せようとするアリサに、ナビィが叫ぶ。


「ちょぉおおっと、まったぁあ!」


「なによ。ちゃんと、つれてきたのよ。今度はなに?」

「ちゃんとつれてきましたね、はい。馬小屋から」


「そうよ、今度は、任務達成よ!」


「その人、汚いんじゃ、ボケなすが!」


「……」


「この乗り物を、なんだと、思ってやがりますか!?」


 剣士の身なりを見れば、小綺麗であるハズもなく。

 馬小屋に寝泊まりすると言うことは、屋根つきの路上で寝るのと、大差はない。


 アリサのように、お金に余裕があれば、ちゃんとした部屋に泊まるのだろうが。

 馬小屋が、宿として機能している以上。

 普通は、寝泊まりする場所に、ソコまでお金を、かけないのだろう。


 流れ者なら、おおよそ、お金がかかるのは、食費だ。


 寝泊まりする場所に、お金をかけるぐらいなら。

 良い食事をとりたいと考えるのは、自然だろう。


 風呂、寝室といった、一般生活に必要だと思われる、全てが。

 贅沢の部類に含まれる、と。

 すぐ近くに立つ、剣士の身なりが、琴誇に教えてくれていた。


「じゃあ、会話だけさせてよ」

 アリサの一言が、琴誇に、冷や汗を浮かばせる。


「アリサさん。なに、言ってやがるんです?」


「なにって。言葉が通じないから、ココで、ちゃんと話をしようと思って」


「言葉も通じない人を連れてきたんですか? 追われている自覚、あるんです?」


「……」


「もうさ、首だけでも良いから、中に入ってもらおうよ。話が進まないから」


 琴誇が促すと、剣士は、車内をうかがうように、車内を見渡した。


「すいません。お名前、イイですか?」


 前髪で隠れ、その奥からのぞく右目が、ピクリと動いたように、琴誇には見えた。


「…言葉が分かる?」


 ボソりと、剣士が、こぼした言葉を。

 琴誇は、あえて無視して会話を続けた。


 話が進まないからである。


「すいませんが、その人に付いて行って。

 着替えと、お風呂に入ってもらえますか。話は、それからにしましょう」

「…ああ。分かった」


「お名前は?」

「…ガルフだ」


「では、ガルフさん。そのように。アリサ」

「はいはい?」


「早めに戻ってきてね」

 琴誇は、つとめて笑顔でそういった。


「ね、寝ないわよ?」


 そう言って消えた姿が。

 再度、姿を見せたのは、日が落ちた頃だった。


「やっぱり、あのアマ、鼻毛でも抜いてやりましょうか?」

「ナビィの手が汚れるよ?」

「そっかぁ…」


 アリサと、ガルフを後部座席に向かい入れ。

「それで、何、してやがるんです?」

「私は、女なのよ!」

 言い訳は、健在のようだった。


「僕に、矛先が向くような発言、やめてくれないかなぁ?」


「私は服まで、ぜんぶ洗えとは、言ってないんですが?」


「汚いんじゃ、乗れないんでしょ!」


「アナタが、女子なのは認めます。

 男性の着替えも、なにもかも、待つしかない。当然ですね。

 だけど、服が乾くまで待て、とは言ってないんですよ?

 本当に、追われている自覚、あるんですか?

 馬鹿なんじゃ、ないんですか?」


「だって、そうしなきゃいけないと、思ったんだもん」

 やはりお嬢様だった。


「ナビィ? もう、アリサの心は、いっぱい、いっぱいだって」

「で、ガルフさん。こんばんは」


「こんばんは、に込められたものが、アリサをなじってるよ、ナビィ?」


 急に話をフラれたガルフは、目線だけを、ナビィに向け。


「話は、聞きましたか?」

 ガルフは、小さく首をふる。


「え、マジです!? アリサさん!?」


「言葉、通じないんだから、仕方ないんだもん!」


「ガルフさん、この隣のアリサが雇い主で。

 護衛を頼みたいんですけど、どうですか?」


 ガルフは、すぐにうなずく。


「よかったね、アリサ。最悪の状況にならなくて」


 これで、ダメだと言われてしまえば。

 今日一日を、本当に無駄で終わる所だった。

 アリサにとって、こんなに、嬉しいこともないだろう。


 安心しきったアリサは、いつもの調子を取り戻したらしく。

 通常営業モードに移行した。


「護衛は、王都までなんですけど、給金は、いくら払えばイイですか?」


「…分からん」


 ガルフの静かで落ち着いた声は、ハッキリと車内に響き、全員の顔を凍らせる。


 まだ、負けだと決まっていない。

 それだけを胸に、アリサは、果敢にも、虎穴に踏み込んだ。


「えっと、ガルフさんは、言葉が通じないけど、ドコの生まれなのかしら?」


「…分からん」


 静かに首をふる姿だけでも、絵になるたたずまいは。

 言葉に、強い説得力を与える。


「アリサ? ちなみに、この世界に言語って、いくつあるの?」


「四龍様が現れてから、そういった問題を解決するために。

 ほぼほぼ、共通言語だわ」


 四龍は、細かい言語文化すら、調教したらしい。


「つまるところは、一つと」


「部族ごとに、独自の言語があるけど。

 基本的には、共通言語とセットで学ぶわ」


 国際言語、日本で言えば、英語のようなモノかもしれない。


「部族内にいて、共通言語を覚えていない人もいるけど。

 その場合でも、私には対応できるハズなのよ。コレがあるから」


 アリサは、自分の胸に手をあて、自信満々に言ってのけるが。

 彼女は、まだ気づけていない。


 彼女は、この世界にある言語なら、すべて話せると言っているのだ。

 だが、龍の知恵をもってしても、会話不可能な存在がいる。


 今、話しかけている、琴誇を筆頭として。


 車内の翻訳機が、気づかせないのだろう。

 この翻訳機は、便利なようでいて、不便だ。


「ガルフさん、生まれはドコですか」

「…分からん」


「面白い!」「続きを読みたい!」など。

少しでも、思った方は。

ぜひ、ブックマーク、いいね よろしくお願いします。


それだけで、皆様が思われている以上に

モチベーションが上がります。


異世界完全遭難のネリナル 白の章 完結済み

もよろしければどうぞ。



お読みの上で、何かお気づきの点や、ご意見ございましたら遠慮なく


ツイッター @chicken_siguma

URL  twitter/chicken_siguma にて、DM または


chickenσ 公式ライン @729qbrtb

QRコード http://lin.ee/iH8IzAx にて 承っておりますので。


今後とも、長いお付き合いよろしくお願い致します。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ