用心棒とか、必要だと思うんだ 9
図星なのか?と、聞かなくても、分かってしまう、アリサの態度に。
琴誇は、ため息を吐き出し。
今、一番、聞きたくない言葉を、正面から受ける。
「ごめんなさい」
素直に下げられた頭が上がり。
恐る恐る、琴誇の顔をのぞきこむ、アリサ姿に。
威厳なんてものは、ドコにもなかった。
「マ、マジで?」
「事の重さと、行動が、釣り合ってませんねぇ~。さすが、アリサさん」
「マジで、寝てる場合じゃ、なかったじゃん!」
「え? だって、琴誇、疲れてたし」
それが当然と、アリサの顔には、迷いも何もない。
琴誇の心は、一つの確信を得た。
「ああ…。お嬢様なんだ」
「今更、気づいたんですか?」
「なんか、バカにされてる!」
「考えは御立派なのに、なんで、そんなに段取り悪いんだよ」
「時間なかったんだもん」
琴誇は、言おうとしていた言葉を飲み込み、首をかしげた。
「だもん?」
一度口からで出てしまった言葉を、消すことはできない。
アリサは、年相応に顔を赤くして、琴誇を見つめる。
「か、かわいいでしょ?」
「力とか関係なく、それが「じ」なんだね」
「もう、どうでもイイから。
とりあえず、話をまとめてもらって、イイですかね、アリサさん?」
「まとまらないのは、アナタ達のせいでしょ!」
「まぁ、とりあえずは、用心棒とか、傭兵とか。
雇うところから始めないと、ゴールできないね」
「この車を含めて、守りきる力がある人が。
この町にいる気が、しないですねぇ~」
「どうしろって言うのよ!」
「外のことは、アリサに一任するよ。
僕じゃ、何もできないし。やっぱり言葉って、大事だね」
「なんですか、ソレ?
長い時間かけて、話を一周させておいて、サボりやがるんです?」
「少しは、協力する意欲を見せてくれても、イイんじゃない?」
「いや、無理でしょ」
「いや、今でしょ!」
「ナビィ…。言いたいだけのヤツは、やめようよ」
無理だと、ハッキリ言いきられた、アリサの目線は宙へ逃げ。
また戻ってきた視線は。
琴誇でも、ナビィでもない、フロントガラスの向こう側に向かった。
アリサは、パタリと自ら扉を開け、車の外に消えていく。
急に行動を起こしたアリサの姿を、車内の二人は、無言で追い。
正面に目線が向いたとき、全てを理解した。
今、この車が止まっているのは、ホテル?の、馬小屋の脇である。
琴誇は、不意に。
ココが異世界なのだと、納得させられてしまった。
馬小屋だって、この世界では、立派な寝室なのだと。
馬小屋の前に立つ男。
セミロングの茶髪からのびる、胸の所まであるモミアゲ。
顔半分を隠すほどの前髪と、一緒に、風になびかせる男。
胴回りまでの丈しかない、赤いジャケットは、不思議な形をしており。
背の布だけ長く、くるぶし、までのび。
ジャケットの下からのぞく、黒い下着はダラりとしており。
大人の手ほどの太さがある、革製のベルトにかぶさる。
たるんだ白いズボンは薄汚れ。
適度に傷に入った、剣の茶色いサヤは。
彼が、長くソレを、なりわいに、してきたのだと語る。
剣士の印象は。
男から感じられる、オーラのようなものが、全てを結論づけていた。
よく語られる、豪傑とか、英雄だとか。
見れば感じるであろう、ソレが、まるで感じられない。
かわりに漂ってくる、胸をざわつかせる、哀愁に似たモノが。
どうしようもなく、周囲から、男を浮き立たせている。
本人は、何げなく、立っているだけだろう。
だが、その立ち姿からは、寂しさすら感じられる。
その人物が、なんであるか。
左脇から前後に伸びる剣が、琴誇に思い出させた。
アリサが、黙って走り出したのも、うなずけると言うものだ。
だが、ドコをどう見てみても、わけ有りなのは間違いない。
そんな男に、アリサは、迷いもなく話しかけている。
さすがアリサさん、南の管理者様だ。
恐れ知らずも良いところだな。
なんて、感想を外で言ったところで、伝わりはしないだろう。
「アリサさん、話しかけてますねぇ~」
「ナビィが追い詰めるから、見境、なくなってるよ?」
「私のせいですか?」
「今、笑顔で言わなかったら、否定できたのに…」
「そっかぁ…」
アリサが、笑顔で話しかけているのに対し。
剣士は、真顔を張り付けたまま、なんの反応も示さない。
しばらくして、やっと、剣士に動きが出た。
小さく首をかしげる、ワンアクション。
話が、うまくいっていないと。
これほど、まわりに訴えるモノも、多くないだろう。
アリサの曇っていく顔には、焦りが浮かぶ。
「必死ですねぇ~」
「誰のせいだよ」
アリサは、二・三言、会話をすると、すぐにアリサも首をかしげた。
額を指でたたき。
そして、車を指差し、剣士の腕をつかむ。
「強引にも、程があるでしょ、本当に」
「面白い!」「続きを読みたい!」など。
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異世界完全遭難のネリナル 白の章 完結済み
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