用心棒とか、必要だと思うんだ 8
これが、どこか一カ所の反乱であるなら。
それ相応の罰を、与えることができただろう。
だが、今回の当事者は、守護者全てだ。
守護者を止める者が存在しない戦争を、止める方法はない。
今回の場合。
唯一、この状況を鶴の一声で、解決できてしまうのは、青龍だ。
だが、青龍の立場からすれば、なにもしないだけで、得をしてしまう。
今回の事件を、難しくしているのは、この部分だろう。
青龍にしてみれば。
勝手に初めて、勝手にバカをやって。
勝手に自分たちで、自分たちを追い詰めた、愚かな有権者達だ。
全てが終わるとき。
それは、誰の目にも分かりやすく、断罪すべき結果が、出たときだ。
結果が出てしまったとき。
もう、それは。
完全に手遅れだ。
アリサが抱えた問題よりも。
この問題によって引き起こされる「事件」のほうが問題で。
作為的であろうとナンだろうと。
事件が起こってしまえば、善悪が曖昧な今の状況は、完全に変わる。
善悪で二分できてしまえば、断罪することがデキる。
断罪される側に、アリサが立たされるように、物事は動くだろう。
こうなれば、西・東・北は、発言権をかなり失うが。
南は、没落守護者の烙印が押され。
四人の守護者の中に、明確な上下が生まれる。
今、コウして。
青龍に、チクりに行こうとしている、アリサは。
事件で断罪されてしまえば。
家の名前ごと、各守護者に下に見られ。
他の守護者は、南の管理者に、無理な要求すらデキるようになり。
南の守護者としては、飲み込むしかなくなる。
「まぁ、こんな感じよ。私の今の状況は」
「頼むから、降りてよ」
「私、本当に死にたくないの」
捉えられて、スグに殺されることはないだろう。
アリサが死んでしまっては、断罪できなくなる。
アリサを十字架に、はり付けにして。
見せしめ公開裁判を行って。
火あぶりにすることに、意味があるのだから。
「僕、死線をくぐり抜けてくれ、なんて言われてないよ?」
「だから、説明したじゃないの。包み隠さず」
「まだ、全部、聞いてないよ!?
この状況、どうする気だよ!?」
「政治的に、何も起きてないんだから、何もできないわよ。
今、一番困るのは、妨害よ。
だから、この、好きな子をイジめるような。
ネジ曲がった感情ゆえの、イジめを止めさせれば、大成功だわ」
「具体的には?」
「今、南でやろうとしている、各町の街道整備を、もう一段階上げて。
新しい土地の開拓を、始めているところなの。
開拓・植民して村を作って、道をつなげて。
経済的に、活性化させようとしてるんだけど。
コレには、他の三守護者の協力が必要なのよ。
南だけで、やっても。
途中で道がなくなってしまって、無意味になるからね」
つまり、アリサは、他の管理区との貿易街道を作り。
旅の途中の宿場町、ないし村を作ろうとしているわけだ。
結局、中央大陸に行くにしろ。
なんにしろ、雪が少なく、比較的生活しやすい、南管理区を経由しなければ。
他の管理区は、外に手を伸ばせない。
「それが、どのように、解決につながると?」
「今回、密会を目撃したと言うカードは、非常に大きいわ。
私が死なない限り、この事案に、みんな、賛成せざるえないでしょ?」
「そんな嬉しそうに、テンションあげあげで、言われても…」
「で、可決、着手。
作業が半分進んだ段階で、私も不本意だけど、この話にのるわ」
「それって、さぁ…」
貿易街道を完成させるため、必要な管理区間の承諾を、獲るためのカードとして。
今回の事件を利用しようとしている。
はいと、言わせたら、そのあと、各管理者の話に乗り。
どうせ、何もできやしないのだから。
テキトーに話を合わせれば良いと、アリサは言っている。
直談判も、そのための布石でしかない。
直談判が通れば、否が応でも、守護者達は集まらなければイケない。
アリサの身の安全が、保証された状態で。
これが、アリサの思い通りに、全部うまくいったとして、だ。
アリサは、自分がやりたかった事業を。
有無も言わさず、まわりに納得させ、事業を開始し。
街道整備、植民による開発が進む。
作業半分で手のひらを返すのは。
作業が中途半端なまま放置すると、さまざまな問題が、発生してしまうからだ。
何事も、お金を投資した分は、回収しなければならない。
大きな事業であれば、あるほど。
駄目だと分かった時点で、早めに手を引くのは、赤字をおさえるためだ。
だが、半分も進んでしまっては。
手を引くにも膨大なお金が、かかるため、やりきってしまったほうが良い。
この段階に、なってしまえば。
何をしなくてもアリサが思い描いた事業は、完成に向かっていく。
できあがってしまえば、税収で、費用分を回収できる。
道と街の整備、殖民を大掛かりに進めるのだから。
各守護者は、無視するわけにはいかない。
自分の管理区にも、おいしい話であるのは、間違いないのだから。
最後に、守護者同士の話し合いにて。
その時点で、アリサの真意を暴露すれば、全ては丸く収まる。
今のように、アリサが、何をするかわからない恐怖心は。
東・西・北の守護者からなくなり。
おっかない追っ手は、なくなるだろう。
今の状況は、アリサにとって、ピンチであり、大きなチャンスなのだ。
現状の波を、どのような結果として、ピリオドをうつか。
それが、私の仕事だと、アリサの強い目は、琴誇に語る。
「今、青龍様に、私たちを認めていただくには、もう、これしかないわ」
放っておけば、青龍が何もせずとも、青龍の一人勝ち。
アリサの希望が叶えば、北の大陸は発展し。
荒れてしまった、今の守護者たちの関係も、一応は決着を見せる。
そして、そのためには、今の板挟みの状況を打破する、何かが必要だ。
その方法として、タクシーの速度なのだろう。
確かに、成功すれば、勲章をもらっても、おかしくない話である。
「無理が、ありすぎじゃないですか? アリサさん」
「分かってるわよ。でもいま、私の立場からできる最善手は、コレなのよ」
「いくら、陸路を行くのが早くても。
空を飛ぶモノには、勝てないでしょ?
戦う力は、絶対に必要になってきちゃうよ」
「私がやるわ!」
「いや、でもさ」
「私がやるの!」
強い覚悟が込められた顔に、ナビィは、言い放つ。
「じゃあ、傭兵をちゃんと、用意してから言えやぁ!
考えは分かったけど、準備が足りず、行き当たり、バッタリすぎるんだわぁ!
どうせ、焦って回りを見渡したら。
ちょうどよく、この車を見つけて、乗り込んだ、だけだろぉ?」
固まるアリサ。
その通りのようだった。
考えが立派でも、行動そのものは、直情的過ぎるのは否めないが。
成功すれば、これ以上ない成果をもたらすのも確かだ。
迷惑さえ被らなければ、異世界交通陣は、何も文句を言うこともなく。
アリサを、南の管理者として、尊敬できただろう。
「面白い!」「続きを読みたい!」など。
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異世界完全遭難のネリナル 白の章 完結済み
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