用心棒とか、必要だと思うんだ 2
「なに、自分だけ関係ないような顔、してるんですか?」
「私は、お客よ!」
「じゃあ、降りろや!」
アリサの反抗を、ナビィが、スッパリと切り落とす。
「今、メーター機、まわっていないですし。
料金も、後で、アリサさんの家まで行って、請求するとして。
今、私たちに、爆弾みたいな人物を、送り届ける理由も、ないですから。
琴誇、引き返しましょうか」
黙って聞いていた、琴誇が。
「ああ、そうか。それでも良いのか」と、つぶやいた声が。
アリサの耳に届き、顔に焦りが浮かぶ。
「え、私の味方はいないの! 琴誇は、コッチ側でしょ!」
「何を、勘違いしてるんだよ。線引きするとしたら、こうだよ?」
アリサの後部座席と、前列シートの間を、琴誇の手が通過する。
「なにそれ、ヒドいわ!」
「客って言えば、なんでも許されると思ってやがるヤツが、私は、一番嫌いです」
「ん。どうしたのナビィ。また、病気が始まったかな?」
「警察いないか確認しながら、右折禁止を無視していけ?
プロだからできるだろ?
右左折もできない、Uターンすらできない細路地を行け、とか。
永遠続く砂利道を、車に細かい傷が入るのに、走れとか。
他人の車だと知りながら。
悪路なのを知っていながら、よく言えるもんですよね?」
「いきなりどうしたの? ナビィちゃん」
「アリサが、スイッチ、いれたんでしょ…」
「いつも、500円で行けたのに。
600円もかかったから、もう二度と乗らないからね?
こっちから願い下げ、だっつうの!
タクシーは、定額料金じゃないんだから。
それが納得できないなら、最初から乗るなや!
料金の誤差だって、上下1000円ぐらい、全然あり得るってぇのぉ!
長距離なら、もっと誤差がでるわ!」
「琴誇、ナビィちゃんは、何を言っているの?」
「僕には、まだわからない、高レベルな愚痴だと思う。タクシーの」
「タクシーメーター金額が500円で。
交通量の多い、交差点の、ド真ん中で。
タクシー停めさせておいて、よく、1万札を出せますよね!
まわりの車に対する気遣いも、なにもできない、ゴミがぁ!」
「ヤバいよアリサ。今日の電波受信量、多い」
「でんぱ?」
「うん、イイや。何も言わないで」
「タクシー乗り場で扉を開けば、乗り込みもしないで、行き先を言うわ。
バスの乗り降りで、ホームまで近いからって、車の回りを歩き去るわ。
後ろで待ってる人のことは、どうでも良いんですか?
荷物で、車を叩いてキズでも入ったら、どうなると思ってるんですかねぇ?
最悪、ひき殺されるって言うのに!
死んでから、間違っていたって、気づくんですかぁ?」
「ん、ちなみに、それでキズが入るとどうなるの?」
「警察呼んで、客、ドライバー、傷を入れた通行人、会社の四すくみで。
話がつくまで、その場に、貼り付け確定ですよ?」
「琴誇、なに口だしてるのよ!?」
「三十分で済めば良いですね。朝の通勤時間に、です」
「めんどくさぁ…」
「本当に、知りたかっただけなのね…」
「ふぅ、そんな客には、降りてもらいます。
実車ボタンを押さなければ、あなたは、お客じゃないので」
ナビィは、背後のアリサを指さす。
「急に、矛先を向けるのやめて。琴誇も、なんか言ってよぉ~」
琴誇は、後ろを振り返ってこういった。
「そのほうが、普通に嬉しいよ?」
「ま、真顔…」
アリサは、前二人が、真剣に降ろそうとしていると、今さら理解する。
冗談めかしているが、ほぼ本心なのだと。
「ちょっとまって、そしたら私、どうしたら良いの?」
「知りません」
「え、助けてくれないの?」
「僕たちの仕事は、お客様を運ぶだけなので。
度を過ぎた慈善事業は、ちょっと…」
「え。え?」
「あまりにも、勝手が過ぎるので、ここが潮時ですね」
「望んで参加する話でもないし。アリサ、そういうことで」
パタリと開け放たれる扉に、アリサの顔つきが変わっていく。
アリサの抱える問題は、すでに、出来上がりすぎている。
そして何よりも、琴誇達に、この問題に付き合う理由もない。
踏み切りのトラバーが降り。
チンチンと、赤いランプが上下についている、線路内に。
自ら足を踏み入れ、電車を正面から、受け止めるようなものだ。
そんなことをしたいヤツ、するヤツは、自殺希望者ぐらいだろう。
琴誇達に、そんなことまでする理由がない。
借金まみれで。
家族に保険金を残すために、望んで事故死するようなことを、やる必要はない。
現場調査の結果。
事故死ではなく自殺でした、では保険金が下りず、目も当てられない。
かわいそうと、言う思いだけで。
命をかける必要が、ドコにあるのだろう。
アリサの問題は。
琴誇達にとって、言葉のとおり、度が過ぎている。
気軽に手を出せるほど、軽くないのだから。
全部なし得たとしても。
琴誇の生命線である、タクシー業務が、できなくなってしまっては、死活問題だ。
ドライバーと、お客という、短く、すぐ切れる関係。
一日足らずで、仲良くなったとは言っても。
いまだに、この関係を越えてはいない。
アリサは、目を閉じ。
一つ、息を吐き出すと、深々と頭を下げる。
「南のアリエッタ=シモン。
アリサの名前にかえても、そちらの望むものは、用意させて頂きます。
私のわがままに、どうか、お付き合いください。どうか、よろしくお願いします」
おふざけなど、ドコにも存在しない。
りんとした、アリサの立ちふるまいが、琴誇達の口を黙らせた。
「面白い!」「続きを読みたい!」など。
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異世界完全遭難のネリナル 白の章 完結済み
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