グリーンランド 8
まともになるには、どうすれば良いのか。
そんな考えすら、体に刺さる冷たい空気が、忘れさせていく。
車内に戻っても地獄、車の外も地獄。
これ以上、つらいことが重なる事を、想像すらしたくない現実。
追い詰められ、働きづめだったからこそ。
琴誇は、この先に待つモノを知っていた。
「疲れて、考えが鈍る前に、考えないと」
一時的な疲れは、一日休んでいれば戻るが。
慢性的な疲れは、ある一定以上の思考を殺していく。
頭の良し悪しを決める数値が、格段に落ちていく。
慢性的な疲れは。
一日、二日、休んだぐらいで抜けるような、生易しいものではない。
不意に、簡単なかけ算が、口から出てこなくなった時には、もう遅い。
ひどい時は、足し算・引き算すら、まともにできなくなっている。
元気な時、すぐに思い付いたであろう、ソレらは。
この次元までくると、浮かびすらしなくなってしまう。
そのなか、仕事をしなければと、絞り出すのだから。
今を乗り切る事だけで、毎日が終わり。
疲れた休日が過ぎ、一年が終わっていく。
そう、コレが、現代社会にはびこる、社畜の作り方だ。
「違う。違うよ、論点が全然違う。まずい、まずいよ」
と、このように、思考がそれていく。
こんな状態で、まともな正論なんて、出てくるハズもない。
琴誇は、頭を左右に振り、大きく息を吸い込んだ。
ゆっくりと吐き出した白い息は、馬小屋の臭いが含まれ、馬とは、そもそも。
「違う、違うから。馬じゃないから。問題は、この先、どうするかだから」
やっとクリアになった頭が、今を整理し始める。
自宅破壊事故から、スグにコチラの世界に飛ばされ。
中途半端な説明で、タクシーの運転を強要され。
やること、なすこと、大雑把なクセに。
逃げ道を、しっかり潰してある辺りは、さすがなのだろう。
タクシー運転を、下向きに開始してみても、お客が捕まらず。
車、食事、全てにお金が必要な状況が、労働を強制しているなか。
やっと捕まったお客がアリサだった。
で、このお客。
北大陸の南の管理者様で、東西と北の管理者様に、ケンカを売ってしまい。
何をしようとしているかは、分からならないが。
青龍に、直談判しようとしている。
だが、アリサは。
この大陸の、お偉い人ランキングの。
上から数えた方が早い方々に、嫌われているどころか。
排除したいと思われているらしく。
大絶賛、全力で追いかけられているらしい。
そのなか、手持ちのお金は、日本円で言うと、三万円しか持っておらず。
この現金で、500キロはあるだろう、道のりを、制覇しようと言うのだから。
かなりシビアな話だ。
「あ」なんて、馬鹿みたいな声を、静かな馬小屋横で吐き出した、琴誇の頭に。
想像できる危険が通過していく。
この世界に、車ほどの速度で陸路を行く物がないからこそ。
出発点ブルーリバーから。
あったであろう妨害を、難なく、くぐり抜けてこられた。
相手は、車の速度に対応できない。
その強みだけで、グリーンランドまで、たどり着けたのだが。
今、この強みが、なくなっていることに、琴誇は気づいた。
主に、アリサのせいで。
むしろ、アリサの短気のせいで。
アリサが、イライラした結果なのだが。
守護者としての力を証明するためとはいえ。
空に向かって、分かりやすすぎる、のろしを上げてしまった。
雲さえ蒸発させ。
空を赤く染めた光が、アリサは、ココにいますと、言っているようなものだ。
敵は、アリサの現在位置という、これ以上ない情報を手に入れた。
想像以上に、移動速度が高く。
厄介な力と、権力を持った相手が、王手をかけに来ていると。
王手とは、王都に、ついてしまうとことだ。
逆に言えば。
アリサが、王への直談判が成功してしまえば、すべてが変えられるということだ。
妨害するということは、都合が悪いということなのだから。
都合が悪いのであれば。
敵は、対抗手段をこうじてくるハズだ。
妨害で済ませているということは、時間が欲しい、ということだから。
つまり、敵は時間さえあれば。
アリサが、何をしても、問題なく対処できるだけの。
「何か」が、あるということになる。
この、南管理者と、抗争問題。
勝負の決着は、ひどく簡単だ。
敵の対抗手段が、完成する前に。
アリサが、王都にたどり着き、直談判すること。
速度と時間が、すべてを左右する。
アリサにとって。
タクシーは、これ以上ないカードだろう。
この世界に存在しえない自動車で、速度と時間を、作り出せるのだから。
だが、現在位置が知られてしまったのだ。
グリーンランドから先、敵は、妨害してくると、考えるべきだろう。
こちらの力を、不可抗力とはいえ、示してしまったのだから。
足が速いとばれてしまったのが、一番の痛手だ。
敵は、相手の力がわかれば。
それに対応するだけの距離と時間はある、と考えるべきだ。
手は最速で、うってくるハズである。
目的地まで、まっすぐ走りっぱなしで向かえば、一日かからない距離だが。
今の琴誇達に、一日で完走できるほどの体力と、資金は。
残念ながら、ないのが悩みものだ。
なら、この先で「方法」としての戦いは、十分に意味を成すだろう。
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