グリーンランド 3
「まぁ、そんなことは、どうでも良いとして。
みんな、車を降りるのですから、賃走はいったん、終了です。
メーターを切りましょう」
「全然、どうでもよくない」
「今、わかったから、全て解決です。メーターを切ってください」
「…どうやるの?」
「……」
「そんな、かわいそうな物を、見るような目をされる筋合いは、ないからね?
説明しないのが悪いでしょ?」
「なんでも教えてもらえると思うのは、平成生まれの悪い癖ですよ?
自分から学ぼうとする姿勢は、大事です」
「僕を、ここまでテキトーな扱いして。
ココに投げ込んだのは、悪くないって言うの?」
「はい、最善だと考えています。むしろ、感謝してください」
「……」
「言い返す言葉もないでしょう、そうでしょう」
琴誇は、眉間にしわを寄せ。
ナビィに言われるがまま、メーター機の操作をしていく。
支払いボタン、精算ボタンを人差し指が経由し。
琴誇は、メーターに表示されている文字に、眉間のしわを濃くさせた。
「なに、この表示」
「この世界仕様のメーターです」
「2・5・9・30って、言いたいことは分かるんだけど、分かりにくいよ?」
「単純に、既存のメーター表示を、この世界に合わせただけですからねぇ~。
金銭単位が、ほぼ一緒だから、点を、入れてるだけですけれど。
何か、文句ありますか?」
「本当にさぁ~。どうしてソコまで、君たちの仕事は雑なの?」
「おおらかなんです。早く、アリサさんに請求してください」
「じゃあ、アリサ。
ここまでの料金は、金2枚、銀5枚、銅9枚、鉄30枚になります」
「分かったわ。ツケといて」
と、アリサは、真顔でシレッと言い放つ。
車内にできた沈黙は、互いの間違いを指摘するには十分すぎる。
「え? ツケられないの?」
「え? お金、持ってないの?」
「え? また茶番なんです?」
三者三様の疑問は、車内空間に消えていき。
バツが悪そうなアリサの顔に、琴誇は、容赦なく切り込んでいく。
「アリサは、どうやって、ホテルに泊まろうとしてたの?」
「アリサさんに、今、それを聞く琴誇は、スゴいですね。
で、アリサさん、どうするつもりだったんです?」
「ツ、ツケで」
アリサは、良いお家のお嬢だ。
それどころか、この大陸トップ5に入るほどの大物なのだ。
この世界にも、貴族に不敬罪と言われ、殺されることがあるなら。
後払いを断れるはずもない。
むしろ、つながりがデキることを喜ぶべきだろう。
と言う、少し考えれば、分かっただろう。
忘れきっていた、ツケの重さが、車内に広がっていた。
じゃあ、と。
さすが、権力者といったところだろうか。
アリサに、なんとかするから、ついてきてと言われ。
仕方なく、アリサに言われるがまま。
琴誇は、宿の中へ連れて行かれ。
指さされるまま、案内された部屋の扉を開けた。
扉から広がる、一人泊まるには、少し広めの照明もない室内。
全面フローリング加工と言えば、聞こえが良いかもしれない。
だが、ワックスもかけられていない。
木目の床を、裸足で歩く勇気もない。
玄関という概念が、ドコにも存在しない。
土足で行けと、建物の作りが言っている。
そうでなくても、小砂利が地面に転がっているのだから。
全力でモップで掃除をしたら、水は真っ黒に染まるだろう。
靴を脱いで家に上がる日本家屋は。
畳という床に、どれだけ助けられていたか、かみしめる瞬間である。
土足文化は、何かがあったとき。
そのままスグに逃げ出せるからだと、本には書いてあったが。
この有様を見れば、ソレすら疑わしい。
裸足で室内を歩くとケガをしてしまうから、だったのだろうと。
そう、思えてしまう室内に、琴誇は、うなだれた。
床は、掃除されている痕跡が、あるとはいえ。
靴で、泥をこすり付けた色が、そう簡単に落ちるわけもなく。
木材加工も、そこまで手が込んでいるわけじゃない。
裸足で歩けば、刺さるだろう。
土足前提なのだ。
そして、外の地面は、舗装されていない、茶色い地面。
また汚されるのだから、掃除を、必要最小限に抑えていると言えば。
この部屋のありさまを、言い訳できるのだろうか。
アリサに聞けば。
この部屋は、すごくキレイだと言われるのが、想像できてしまい。
琴誇は、溜息を吐きだした。
室内に、ある家具は、ベッドと机と椅子だけだ。
こだわりを持って、すべて木目で、そろえたわけではないのだろう。
手っ取り早かったからだ。
家具もあるだけ、マシだと言われてしまうかもしれない。
もう、琴誇は、初めての連続で、くたくたなのだ。
雑魚寝うんぬんの話題を、今、聞きたくない。
これまた、木製の押し窓を開き、手を離したとき、事件が起きた。
外を、のぞき込んだ琴誇の頭を。
押し窓が室内に向かい、叩き返したのだ。
頭を抱え、目線を上げれば。
窓に使う、ついたて棒が、パタリと、倒れるところだった。
慣れない文化圏、生活感は危険がいっぱいである。
「風呂に入りたい…」
静かな室内に、ノックの音が響く。
顔を見せた中年男性が、何やら、話し始めたのだが。
男性の言葉が分かるわけもなく。
琴誇は、相手の言葉の最後だと思われるタイミングで、無言で頷き。
言語問題に決着をつけた。
すると中年男性は、にこやかに頷き、部屋から出て行き。
なんとか、難をしのいだと思えば。
しばらく時間をおいて、中年男性が、再度、部屋にやってきて。
お湯入りの桶と、キレイなタオルを、室内に置いて消えていく。
コレを、どのように使うのか、わからない訳もなく。
使用目的が分かってしまったからこそ、故郷が恋しくて、たまらなくなった。
「日本文化の重要性…」
「面白い!」「続きを読みたい!」など。
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