いけいけ、たくしぃ~ 3
歩きやすければ。
それが道だと、言えてしまうのには、明確な理由がある。
なんで、人も馬車も。
同じ道を、法律というルールなく、往来しているのか。
この世界の道で。
馬車が、人をひくこと「も」あるのだろうが、ほとんど、問題にならないからだ。
荷馬車は、人を見落とすほど、速度が速くないから。
早く馬を走らせるのも、ヒドく限定的で。
馬が疲れてしまい、動きが取れなくなるから、そんなコトは、めったにない。
現代日本に、めんどくさく感じるほど、信号機が、なぜあるのか。
道路標識、道交法なんていう細かいルールが、なぜ必要なのか。
なぜ、行動を。
罰則と、免許で行動を制限しているのか。
現代社会で、生活道路すらアスファルトがしかれ。
車の存在そのものが、身近すぎて。
意識していない事実が。
今、明確に、琴誇に訴える。
「殺してしまう」
「この乗り物は、人をひいてしまうと、走れなくなったりするの?」
「ほとんど無傷だと思う。それで、そのまま、走り続けられる」
アリサは、顔に疑問を広げた。
「乗り心地は、馬車より快適よ。
なにより、どんな乗り物より、速いわ」
「うん、そうだろうね」
「でもこれ、「乗り物」なの? 「兵器」じゃなくて?」
琴誇は、次に返す言葉を失った。
このまま、町中に、この速度のまま突入すれば。
運転する車が、大量殺戮兵器になる。
頭で理解していたハズの。
そんな、当たり前の事実が。
琴誇の背中に、重くのしかかる。
交通事故を。
いくら、本や、テレビで見せられたところで。
理解など、できていなかった、と。
話として、ありふれすぎて。
起こったとしても、大したことには、ならないと。
理由もなく、思い込んでいたのだ。
「自分は」そんなことに、なりはしないと。
兵士は、自分が死ぬ、そのときまで。
自分が死ぬとは、思っていない。
悲惨な事故映像を見せられ。
なんの緊迫感もない場所で、道路上の危険性を言われても。
笑いながら、応急救護を学んでも。
良い悪いの話ではなく。
身の回りには、作り話と、脚色された事実が多すぎた。
人なんて、劇的に死ぬほうが珍しい。
家で飼っているだろう、ペットのように。
新聞紙で、たたき潰したゴキブリのように。
簡単に命なんて、無くなってしまう。
当たり前すぎて。
忘れていた事実を、理解することは、できない。
そんなことは、「自分には」起きないと、思っているから。
いつまでも、響かない。
身の回りの情報が、悲劇の安売りを行った結果。
ただの聞きなれた、ニュースでしかない。
「死」すら、ネタでしか、ない。
画面の向こうの、虚像だと、すり込まれてしまっている。
琴誇は、アリサの純粋な疑問に、問いかけに。
返す言葉もなく、黙るしかない。
今、乗っている車を、何者にするか。
決めるのは、誰でもないドライバーだった。
眼前に迫る、木造の門。
琴誇は、答えを、行動で示した。
「いや、これはタクシーだよ」
ガタガタと流れる車窓は、止まり。
ナビィは、フロントガラスごしに。
町の名前が彫られた、木製の門を、ゆっくりと見上げた。
琴誇の右足は、左のペダルを、深く踏み込み。
左手は、ガタガタとギアを「P」に、迷いなく入れていく。
シートベルトを外し、ハンドルに、もたれかかれば。
深い息と声で、琴誇は、アリサに停車したと伝えていた。
静かな振動だけが車内に響き。
アリサは、静かに、何度も、両手をうちならし。
琴誇に、小さな喝采を送る。
「お疲れさま」
「ありがと」
と、ボンネットで、矢が弾かれる音が、車内に響いた。
「わっ、わすれてたぁ!」
ナビィは、後ろを振り返り、アリサを見据え。
「琴誇は、仕事を全うしましたよ? アリサさん」
アリサは、その言葉に笑顔を作り、深く頷いた。
「素晴らしい仕事だったわ。じゃあ、私も仕事をしなきゃね」
余裕をもって、後部座席を振り返ったからだろう。
琴誇は、始めて。
アリサの表情から服装まで、ハッキリと、見ることができた。
肩にかかった黒い髪が、露出した両肩にかかり。
耳飾りだと思っていた、竜の羽のような、髪からのぞく両耳は、小刻みに動く。
暗いワインレッドの瞳を、まぶたに隠し。
きれいに整えた化粧が。
声と言葉だけできあがった、アリサという人物のイメージを、うち壊した。
二の腕から、手首まで巻かれた、細かい装飾を施された腕巻きが。
細い腕を浮き彫りにし。
長い両手は、ピッタリと体に合わせられた、赤いドレスの胸元に、かけられる。
スカートから伸びる、組まれた細い両足は、大きく開かれ。
まるで、どこかのオヤジが、仕事終わりだと。
シャツとネクタイを、外すがごとく。
大きく体を開いたアリサは。
胸元を、ボタンごと、はじけ飛ばす乱雑さで、大きく、はだけさせた。
「よいせっと」
「……」
琴誇の視線を感じたアリサは、品のない体制のまま、ほほを赤らめ。
「普段は、寒いから隠してるけど。
公の場に立つには、龍紋を見せる決まりなのよ」
「いや、僕が言いたいことは、そんなことじゃない」
「面白い!」「続きを読みたい!」など。
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