いけいけ、たくしぃ~ 2
高速の上、または、広い国道の上にある歩道橋には、例外なく柵がついている。
転落防止のためと思われがちだが。
一番の理由は、モノを、道に投げ込まれないようにするためだ。
歩道橋ぐらいの高所から。
何の気なしに、路上に向かって空き缶を投げ、車に当ると。
フロントガラスが割れ、ドライバーの目の前が真っ白になり。
視界を奪われた車が大暴走し、大事故につながる。
不意に、モノを落としてしまっても同じだ。
モノが落ちて、車に当たると、二次・三次事故を呼び込む。
大惨事にならなくても。
車に当たれば、車のボディは、簡単に変形、脱落してしまうだろう。
ゴムのタイヤで走る乗り物が、ありふれてしまった現代社会では、忘れがちだが。
乗り物を、人が操作している限り。
道路上の安全は、ソコを通る歩行者から運転手。
すべての人のモラルだけで、安全が保たれている。
安全の保証など、ドコにもない。
死んでから、賠償金を求めても、残るのは、お金だけだ。
「それも、ジャックポットじゃないか!
なんでそんなに、ノリが軽いの? 死ねちゃうじゃないか!」
「車は頑丈、なんて事は、ないですよ。
コストダウンさせるための企業努力が、ですねぇ?」
「聞いてない! 聞いてないから! そんなウンチク。
今、聞いても、心が苦しいだけだから!」
「そっかぁ…」
「言葉に困ったら、ソレ言えば良いと思ってるでしょ! もう許さないよ!?」
ナビィは、右に傾げた首を、左に傾げ。
全く変わらない真顔を、琴誇に返す。
「そうかぁ…」
「用意してたでしょ? 絶対、用意してたでしょ、そのセリフ!」
フロントガラスの向こう側に。
木で造られた、鳥居のような門が、琴誇りの目に映り。
「あれ、入り口でしょ?」
「そうよ、あれが、グリーンランドの入り口よ」
「やったぁああ!」
やっと見えた、明確なゴール。ギャンブル走行の終了。
それだけが、琴誇の頭の中、すべてを支配していく。
マラソン選手のような達成感が、次第に、こみ上げ。
鳥肌がたつほど、興奮しているのを、琴誇は自覚した。
そんな琴誇を。
悲しそうな瞳で見つめる、三等親の彼女に、琴誇は、胸がザワつく。
「琴誇? グリーンランドに、車は、止められるのでしょうか?」
悪い期待を裏切らない、言葉だった。
ナビィの言葉に、琴誇の頭は真っ白になり。
一瞬、運転を忘れたドライバーのせいで、車体が大きくフラついた。
畳み掛けるように、ナビィは続ける。
「アリサさん? グリーンランドの地面は、どんな感じですか?」
まるで、裁判官の判決を待つ、囚人のような。
まるで、いけないことをした、子供のような。
一世一代の告白して、答えを待つような。
次の言葉を待つことに、これほどの緊迫感を感じることは、そうはない。
グリーンランドと聞いて、どういった町を想像するだろうか。
森の中にある、人の多い町を、想像するだろう。
街道の途中にある、大きな町と言うだけで。
その町を歩く姿が、脳裏に浮かぶ。
無意識に思い浮かべた、その地面は。
固く踏みならされているか、石造りか。
どちらだろう。
勝手な思い込みは。
想像でしかない。
とてつもないオチを用意しながら、口を開いて、待っていた。
そう、アリサは。
一言も、そんなことを言っては、いないのだから。
勝手な想像ではなく。
アリサの言葉から、町の風景を思い浮かべるのは、簡単だ。
森に住んでいた、いろいろな部族を一ヶ所に集め。
中央に住まいを作らせ、人口を密集させ、グリーンランドと名付けた。
その町の主食は、ヌーブラと言う草食動物であり。
放牧しておくだけで、数が増えるほど、自然いっぱい。
そんなグリーンランドを、中央に。
大森林の南北貫く、大陸随一の道を通した。
この時点で、気づくべきだったのだ。
ココは、異世界であっても、ゲームの中の世界ではなく。
何気なく見ている画面に映る背景・景色を作っているデザイナーなど。
ドコにもいないのだから。
激しく文化レベルの低い、地球以外のドコか、なのだ。
翻訳された「町」という言葉を、鵜呑みにしてしまうと、痛い目にあう。
そう、アリサが、言葉をもって、琴誇に宣告した。
外の地面を指差し、「こんな感じ」と。
「とりあえず、グリーンランドで、停車できないことが判明しましたよ。琴誇」
「え? どうするの? どうすれば良いの?」
米粒のように小さかった門は、次第の大きく見え始め、決断を迫っていた。
「迂回? 迂回すれば良いの? このままじゃ、町中に入っちゃうよ!」
「かといって…。 あ、ダメですよ? 何があっても、アクセルゆるめちゃ」
ナビィは、真顔で琴誇の足元を指差した。
「僕に、どうしろと?
このままじゃ、人が、いっぱいの町中を。
ノンストップで、突き抜けなきゃ、イケないじゃないか!」
ナビィは、首を捻り、アリサに視線を送る。
「アリサさん、迂回できるんです?」
「迂回? できるわけないじゃない。
言ったでしょ? 畑と牧場を、道に作るなって言うのが、大変だったって」
「つまり、町へ入るのも出るのも、この道しかなくて。
迂回しようにも、まわりは、畑と牧場だらけだと?」
「そう言うことよ。止まれないなら…」
「はい。止まれないなら、どうすれば良いと思います?」
アリサは、ガタガタと上下する車内で目を閉じ。
再度、目が開いたとき、顔に広げたのは、焦りだった。
「それって、マズくない?」
聞いたナビィは、琴声を見つめ。
「それって、マズくない!?」
「聞こえてるよ!
少しでも、期待してた僕が、バカみたいじゃないか!」
路面状態が悪く、駐停車できず、迂回もできない。
道は、町から上下に真っすぐ延びているのだから。
残された選択肢は、一つだけだ。
「正面突破、するの?」
アリサが、始めて見せた、真面目な顔に、琴誇は息を飲む。
やたらうるさく感じる車内。
目の前に迫る門は、もう時間がないと再度、琴誇の目に訴え。
正面突破せざるえない状況が、心と体を震え上がらせる。
「琴誇。この、たくしぃで、人を、ひいてしまうと、どうなるの?」
そう、アリサは、知りもしない。
この世界に、陸路を、自動車のように速く走る乗り物など、ないのだから。
「面白い!」「続きを読みたい!」など。
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