4話 いけいけ、たくしぃ~ 1
それは、ちゃんとした段階を踏んで始まった。
なんとか走り続ける車内で。
気をつかい、黙っていたアリサが。
急に、二人の珍騒動に割り込む。
「ねぇ? 今、何か降ってこなかった?」
「え、ちょっと待って! ソレって!」
言葉にしてしまうと、本当になってしまう。
琴誇の中に、わいた思いが、口にするのを躊躇させた。
「雨ですか?」
ナビィが、ハッキリと口にすると、琴誇の背中に寒気がはしる。
フロントガラスから広がる路面に「雨」が降る。
ドライバーにとって、これ以上ない恐怖の始まりを意味した。
「これ以上、地面がダメになったら、走れる気がしないよ!」
雨で、学校の校庭が、使い物にならなかった経験は、ないだろうか?
校庭のグラウンドは、土の下にコンクリートを打ち。
水はけが良いように、作られている。
それでも、雨はダメなのだ。
なにも、手が加えられていない土路面に。
雨が降ると、どうなるのか。
山が近くにあるなら、想像しやすいだろう。
土の神様、ミミズ様が沢山いるだろう。
森中の地面ともなれば、歩くのさえ困難だ。
吸水性が良すぎるのだ。
地面に吸われた水が、草木を育て、微生物を生かし。
ひいては、動物たちへ還元されるのだが。
水は火で沸騰させなくても、蒸発している。
雨がやんだあと、土は蒸気を吐き出し、霧を作り上げるのだ。
そこまで吸水性の高い土が、水を吸うと。
より柔らかく、ねんどのように変化していく。
押し潰したスポンジに、水を大量に、かけるようなものだ。
スポンジと違い、液状化するため、天然の土ローションが完成する。
ローションの上で、いくらタイヤを回そうと、ブレーキをかけようと。
タイヤと、地面の間に、ローションがあるのだから。
操縦不能となるのは、想像にたやすいだろう。
グリーンランド南道は、ただでさえ、悪路なのだ。
雨が降った瞬間。
それは、今の琴誇にとって。
地獄のかまどに、正面から、突っ込んでいくようなもの。
そこへ琴誇の耳に。
はじめて、望んでいた言葉が届けられる。
「琴誇、違うわよ」
「よかった! 本当に!」
「ふってきたのは、物よ」
撫で下ろした胸に、ナイフが、深々と刺さるのを、琴誇は感じた。
「物って…」
と、車体前方に、一筋の影が通過したのが見え。
前方に集中していたからだろう。
その形を、ハッキリと、とらえることができた。
先端に金属。
そこから伸びる木の棒、最後部に、チラりと見えた、白い羽。
「もっと、ヤバイものが降ってきた!」
不定期に、ピュンピュンと、刃が落ちてくる。
「なんで!? 弓矢で打たれなきゃ、イケないの!?」
車内に沈黙が広がり。
手繰り寄せたバックミラーに写るアリサは、顔を背けていた。
「アリサだな! 間違いなく、アリサのせいだな! 何をしたんだ!」
「こ、心当たりがありすぎて、ドレのことやら…」
「一番、可能性の高いヤツを、言ってみなよ!」
すると、アリサは、助手席に抱きつき。
琴誇の耳元で、聞きたくない言葉をつぶやいた。
「私、追われています」
「そんなことだろうと思ったよ! 知ってたよ!
でも、なんで!? 仮にも、南の管理者様でしょうに!?」
「北と東と西に、ケンカ売っちゃった。てへっ」
わざとらしい笑顔で、舌をだし。
右手を頭にそえるのは、琴誇に、きっと、ケンカを売っているだろう。
「かわくないから!
北の大陸の管理者様は、全部で、4家紋じゃなかったの!?」
「そうよ? さっき、そうやって、話したじゃない」
「じゃあさぁ? 僕の思い違いじゃ、ないんだね?」
「思い違いするほど、数は、ないと思うれど?」
「全部じゃないか!」
「私、スゴいでしょ!」
「この話題で、フザけないでよ!」
「フザけてなんか、いないわよ。全部、大マジメよ」
「なお、悪いよ!」
「いけいけ、たくしぃ~!」
「カタコトが、だんだん、ムカついてきた!」
地面に突き刺さる、矢の数が増え。
ギャンブル走行は、大勝負に移り変わっていく。
「これ、車体に当たったら、どうなるの!?」
ナビィは、琴誇に、冷たく言い放つ。
「空き缶を、走っている車に投げつけるのと、変わらないですねぇ」
「つまり…」
「割れるか、へこむか。最悪、鉄板が薄いところに当たったら、刺さる」
「ヤバすぎるじゃないか!」
「ちなみに、ジャックポットは、後部トランク、貫通です」
「なんで?」
「ガスタンクがあります」
「なんで、そんな怖いこと、シレっと言えるの?」
「え? だって、運悪く、フロントガラスを突き破ったら、一撃必殺ですよ?」
「面白い!」「続きを読みたい!」など。
少しでも、思った方は。
ぜひ、ブックマーク、いいね よろしくお願いします。
それだけで、皆様が思われている以上に
モチベーションが上がります。
お読みの上で、何かお気づきの点や、ご意見ございましたら遠慮なく
ツイッター @chicken_siguma
URL twitter/chicken_siguma にて、DM または
chickenσ 公式ライン @729qbrtb
QRコード http://lin.ee/iH8IzAx にて 承っておりますので。
今後とも、長いお付き合いよろしくお願い致します




