グリーンランドは、あっち! 4
ガタガタと、琴誇の左手が、車のギアをドライブに進め。
ブレーキを踏んだ足が、アクセルを踏んでいく。
そして、車体は。
アリサ以外、望まない方向へ走り出した。
奥歯を噛みしめたドライバーと。
本気で焦り出したナビィの気持ちを、森の入り口に、投げ捨てて。
ガコン、ガコン、ギィギィ。
なんて言う擬音が、口からではなく、車からシッカリと聞こえる車内。
奥歯を噛みしめ、ハンドルを必死に、左右に回し。
車体を安定させようと、紛争する初心者ドライバー。
「くぅううう」
ダッシュボードの上で、転げ落ちいないよう。
体を低く保ち、ドライバーに助言する、ナビィ。
「絶対に、速度を40以下にしちゃダメです!
勢いで、つき抜けるんです!」
後ろで、何も知らないからこそ。
今を楽しむ、お嬢様アリサ。
「なにこれ、速い速い! もっとイケェ~」
三者三様、違う思いを乗せ。
異世界交通のオンボロクラウンは、大陸随一と、言われる「道」を行く。
オフロードカーと、一般車の違いはなにか。
聞かれて即答できる方には、この怖さが、存分に伝わるのだろう。
ゆるく、柔らかい土の上を走るというより、移動しなければならない物体は。
タイヤが大きいか、走行用ベルト、キャタピラを装備しているモノだ。
柔らかい土の上。
車ぐらいの重量物にとって、それは、雪の上に立つ人と、同じコトだ。
深く積もった雪の上を、人が歩こうとすれば、足は雪に沈む。
人ならば、歩きにくいだけで終わる話だが。
車の場合、沈んだら動けなくなり、走行できなくなり。
その場に、くぎ付けにされ。
雪が溶けるまで、動けなくなってしまう。
そうならないために、沈まないよう。
大きな大きな足、キャタピラという、スキー板を履くのだ。
「琴誇! アクセルを踏むのを、躊躇しないでください!
絶対にゆるめたら、ダメです!」
ナビィが必死に、琴誇のしぼんだ心が。
なるだろう、最悪を否定する。
「この道は、本当にまっすぐよ!
突き抜けて行きなさい!」
大陸随一である、森中の道は。
できてから、しばらくたっていると、お嬢様が言われる通り。
カーブがなく、道幅が広い。
だからこそ、一般車両でも走り抜ける、方法が一つだけあるのだが。
「止まる、止まる、止まる!」
高速度で駆け抜ける、ノンストップ走法だ。
つまるところ、力業である。
タイヤが沈もうが。
雨などの沼になった地面のように、柔らかければ、無理だが。
車体に速度にのっていれば、慣性の暴力。
勢いで、はまったタイヤは、強引に車体に引き寄せられ。
激しい衝撃、上下運動を繰り返し、車体は、転がり続ける。
グリーンランド、南北道、南側。
この、ユルいこの道も、作られてから、しばらくたっているからこそ。
今まで通っただろう、荷馬車や人、騎馬が、地面を踏み固めている、が。
現代のように、ロードローラーが、均等に押し潰している訳ではない。
踏み固めた、固さには、ムラがある。
車のタイヤが、まともにグリップするか、滑るか、はまるか。
道がまっすぐだと、分かっているから通じる手段だ。
この力業は、走行、ではないだろう。
まともにグリップする場所を、いかに引き当て、速度を上げ。
衝撃や蛇行によって、停止しない速度を維持するか。
ほんとうに、ギャンブル走行だ。
ハズレを引き続けると、速度がなくなり、停止してしまう。
力業には当然、力が必要となってくるが。
何を隠そう、今、走っているのは「タクシー」である。
平成生まれの方々も、子育てしている世の中で。
昭和・平成初期性能の、タクシー専用トヨタ製クラウン。
タクシー専用ではない、クラウンは。
誰もが羨む高級車として、名を、はせた名車だが。
タクシー仕様だろうと、一般仕様だろうと。
アスファルトの上を、優雅に走ることしか、考えられていない。
高級車なのだ。
高級カーに乗るような人物が。
車で走るべきではない、乗り心地の悪い場所を、走るわけがない。
タクシー仕様に改造された、LPガスエンジン・クラウンは。
ガソリン車より、馬力がない。
燃料として、純粋にLPガスの方が、爆発力。
エネルギーが、低いからだ。
LPガスと言われ、ピンと来ないだろうか。
都市ガスがない地域で使われ。
ガスコンロで、鍋の湯を沸かしている、ガスだ。
それに加え。
琴誇が乗るのは、タクシーにしては、新車と言われる。
累計走行距離、30万キロ越えの車体だ。
ちょこちょこ直しているとはいえ。
10万キロも走っていない、ピカピカの車体と比べれば。
レスポンスは落ちる。
新人タクシー乗務員が、一番苦しむのは、道を覚えることだけない。
ボロく、ピーキーで、遊びのありすぎる車で。
いかに、運転技術一つで。
今の車と同じように、利用者に感じさせながら。
接客をし、メーターを、自分で用意したお釣りを、管理し。
LPガスと、走行距離を気にしながら、走行し。
陸運局に提出する日報を、一回一回、書き込まなければならない。
お客を乗せなければ、なにもする必要はないが。
乗せると同時に、業務が一気に押し寄せる。
この、ギャップだ。
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