グリーンランドは、あっち! 3
グリーンランドは、北大陸・南の森林地帯にある。
元々、バラバラに住んでいた集落・村が集まり、始まった町らしい。
大きい森林地帯が広がり。
港から、ブルーキングのある、内陸部に入る、大関門と言われるほど。
寒い地域に生え、生きる動植物が。
通り抜けるには、危険な自然環境を作り出している。
この広大な大森林、緑の海を通らなければならない。
これを迂回するには、海路を使うしかないのだ。
最短で森を抜けるには、
異世界交通のスタート地点である、港町から、航路で大きく迂回するしかない。
まっすぐ森を抜けようにも、相当な時間と、運を必要とするため。
大規模な商隊、組織的な人数が安全に通り抜けるのは、至難のワザだったのだ。
「運、ですか?」
「まっすぐ進もうと思っても、進めないのが、森とか山なのよ」
「はぁ…?」
「遭難者が、絶えなかったのよ。森が大きすぎて。
土地勘がない人は、間違いなく遭難するわ。
迷わなくても、獣とか毒虫とか、盗賊とかに、やられたりするから。
だから、森の部族を集めて、町を作った上で、太い道を南北に通したのよ」
森人と呼ばれる部族を説得し。
彼ら主権の元、できたのが、グリーンランドだ。
森に詳しい部族たち集めてしまえば。
あとは、南管理者の立場を使い。
南から北へ道を通すため、伐採計画を推し進め。
伐採して、できあがった道を、公道という形で、一切の建築・農業を禁止した。
道に建物をたてない、邪魔なモノを置かない、植物を育てない。
当たり前のように思える、それらは。
この世界において、非常に困難なことだったらしい。
「大変だったらしいわよ? 偏屈親父どもを、龍紋で黙らせるの」
「それを聞いてると、本当にすごい人なんだなって、思いますね」
アリサは、琴誇の言葉に、花を咲かせた。
「信じる気になった?」
「信じるもなにも、最初から言ってるじゃないですか。
実感が、わかないだけだって」
グリーンランドへの別ルート。
迂回路が、ないことがよく分かってしまった、琴誇は。
覚悟を決めるため、アリサに言葉を投げる。
「アリサ様、この道を、どう思います?」
アリサは、琴誇の意図が読めず、眉間にシワを寄せ、目を閉じる。
すぐに、表情から余計なものが消えていき。
その、品のある口元は、力強かった。
「私達の努力の結晶よ」
「あ、はい、分かりました。行けばイイんでしょ、行けば」
「え、なに、その反応? 私の思いの丈を、ぶつけたのに!」
「もっと、良い環境を知っていると、「努力しました」が。
ここまで、心に届かないモノだとは、思わなかったので」
「なにそれ!? これ以上に良い道なんて、この北にはないわよ!
各大陸探したって、ここまで整備された道ないわ!」
琴誇の、正面に戻ろうとした上半身は、「え」という言葉と、ともに硬直する。
視線は宙を迷い、焦点が戻った視線は、顔ごとアリサを、見据え。
なにか言おうとした口元は、言うべき言葉を失い。
半開きのまま、アリサを見つめる、不思議時間が、できあがる。
「なによ。そんなに熱く見つめても、恋は芽生えないわよ」
「いえ、ああ…。そうか」
琴誇の体は正面に戻り。
最悪を突きつけられた絶望感を視線にこめ、ナビィを見つめた。
「言葉に出したら良いよ」
琴誇は、ハンドルにもたれ掛かり、頭を数回たたく。
「なにが、夢の異世界だ!」
再度、フロントから見える、各大陸随一の道が、森の奥まで伸びているのが見え。
ゆるそうな焦げ茶色の路面が、ゴムタイヤの形に変形したいぞ、と。
手招きしているかのようだ。
待ったなし、逃げ場なし。
反論しようにも、相手が目の前にあるもの以上を知らなければ。
正論は、ただの空想でしかない。
原油の絞りカス、捨てるはずのゴミで。
アスファルトを作れと言っても、通じないのだから。
琴誇は、恐怖心を足と一緒に、アクセルに乗せ、深く息を吐き出す。
今まで感じてきた物。
追い込まれ、もう無理だと、できはしないと、思った窮地。
修羅場と、琴誇が呼んできたもの。
大学に入学が決め、自家用車を新車で購入し、免許に至るまですべて。
青春という時間、全てを投資して積み立てた、数百万というお金。
我慢と忍耐と疎外感。
それら全てを飲み干して、やりきった時間。
つらく苦しい毎日を、くぐり抜けた琴誇であっても。
踏むのをためらう、アクセルの重さ。
ここまで、追い込まれたことがないとは、言い切れないが。
目の前にあるものが。
ここまでの圧倒的な、物理的にな問題として、立ちふさがることはなかった。
我慢さえすれば、なし得てしまう事柄の甘さを、琴誇は噛みしめる。
そして、最後の一歩を踏み出させる、背後のお客。
「私、自慢の街道を行きなさい!」
前を指差す、アリサの人差し指は。
フロントガラスを、突き破る勢いで、力強く突き出された。
「面白い!」「続きを読みたい!」など。
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