グリーンランドは、あっち! 2
「アリサ様。ヌーブラは、どんな姿を、しているのですか?」
「ヌーブラも、知らないなんて、あなたの故郷には、何がいたのよ?」
「ハムスターとか、金魚とか、犬とか」
「は、はむすたぁ?」
何でも知っている貴族様は。
口から、弱々しいカタコトを、ひねり出す。
「え~っと。じゃあ、動物に、たとえるのは、やめるわ。
ヌーブラは、黒くて四本足で、大きくて、ふさふさの毛が生えてて…」
「ひとつ、良いですか?」
「なによ。今、一生懸命、考えてるんだから」
「何一つ、伝わってこないです」
「想像力が、足りないだけでしょ?」
「いや、抽象的すぎて、わからないんですよ」
「私が悪いって言うの!?」
「いえ、お互いが知らないものを、口頭だけで、説明するのは難しいです。
グリーンランドに着いたら、教えてください」
と、琴誇は、オチが見えない会話を、キレイに終わらせた。
時計を見れば、走り出して、もう、二時間が経過しようとしている。
走り出しの緊張からくる、余計な力も、しだいに抜け。
まだ、無駄な力が抜けきったと言うには、早いが。
慣れるより、慣れろという言葉の偉大さを、琴誇は痛感していた。
普通なら、もっと時間がかかるハズなのだが。
なにもない街道と。
よくしゃべる同乗者のおかげで、リラックスできているのだろう。
モノは考えようだ。
公道を、対向車も、ガードレールも、道路標識もなく。
ただ、運転していられる環境なのだ。
と、安心していた琴誇は。
不意に訪れた光景に、ブレーキを踏み、車を停止させた。
「ん? どうしたの、運転手さん? ココが、グリーンランドの入り口よ?」
「やっぱり、そうなんですね…」
大きく広がる緑。
道の先には、緑のトンネルが続いている。
これを、道と言えば、そうなのだろう。
獣道と言っても、誰も疑問は、持たないだろう。
道の両端は、ガタガタだ。
地面は、みんなで自然に踏み固めた程度の地面。
道幅は、一番広いところで見れば、乗用車・三台分はあるが。
コレを、道といったら、富士の山道も、公道だと言い切れてしまう。
道路というには、あまりにも、自然いっぱいすぎた。
「ここ、難関だとか、時間がかかるとか、言われていませんか?」
「良くわかったわね」
「こんなの、当たり前だよ!」
「しょうがないじゃない、木を伐採して、道を作ったんだから」
「管理する人とか、いないんですか?」
「この町の、木こりと猟師が。
通るついでに、生えてきちゃったヤツを、処理してるわよ?」
「いや、道そのものを、だよ!」
「だから、道の邪魔な物はね…」
「違うよ、このバカちんが! 路面の管理だよ!」
「ろめんかんり?」
「うわぁ、カタコトでちゃったよぉ…」
「バカにしてるの?」
「これは、ヒドすぎるから。
もっと、なんとかしないと、ダメですよ?」
「どうしろって、言うのよぉ~?」
「仮にも、南の管理者様ですよねぇ?」
「ようやく、信じてくれたようね」
「話を拾うところは、ソコじゃない…」
琴誇は、深いため息を吐き出し。
今まで感じていた違和感の正体に、絶望する。
この異世界で「道」とは。
目的地に行くまでの、道のりでしかない。
極論、たどり着けてしまえば、それが「道」だ。
コンパスも地図も持たず。
星や太陽から、方角を割り出さなくても、だ。
歩いていれば、目的地につく地面。
それが、この世界における「道」だ。
街道の存在意義は、コレで言い表せてしまうのだろう。
琴誇の前に「道」と言われた、この焦げ茶色の地面。
ココに、作物の種を植えれば、元気に育つだろう。
さすが、グリーンランドと、呼ばれるだけのことはある。
そうやって、感心している場合ではない。
人や、荷馬車が通れるか、どうか。
それは、路面の凹凸が、全てを語る。
何が通り抜けたのか、すぐ分かるほど。
柔らかく、クッキリと、車輪のわだち、人、動物の足跡が残されている。
道の両脇には、当然のように、木々が並び。
根っこと雑草が、道の両端を、占有してしていた。
邪魔だったのだろう。
切り株を、撤去したときにデキた、穴のあとが、そこらじゅうに見え。
道と言われて想像する、まっすぐのびた、アスファルト路面。
それが普通であった、日本の生活道路が。
いかに、車に合うように配慮されていたか、分かるというものだ。
生活道路を走る車たちは、オフロードカー、などではないのだから。
「誰か、道路公団、連れてきて…」
「琴誇君、ココが、ドコだか、口に出して言ってみよう!」
ハンドルに、もたれ掛かる琴誇は、深いため息を吐き出し。
「ここは、異世界」
「正解です」
「はぁ、文化レベルの重要性」
「まぁ、走るしか、ないんですけどね」
「ナビィ? コレ、走っても、大丈夫なの?」
「引き運が、悪くなければ」
「ギャンブル走行…」
「ちなみに、一つだけ言っておきます。
この世界に、レッカー車は、ありませんから」
「土に沈んだら、どうすればイイの?」
「え~。託された力を、使うしかないですねぇ~」
「あれ、有料じゃないか!」
「魔法と呼ぶには、資本主義的すぎるのは認めます」
琴誇は、最後の望みを求め、背後を振り返る。
「他に、グリーンランドにたどり着く道とか、迂回する道、ありませんか」
「ココしかないわよ。
迂回するも、なにも。
なんで、この道を、わざわざ作ったのか、教えてあげましょうか?」
「その言い回しから、期待している答えが、返ってこないのだけは、分かりました」
アリサは、怪訝な顔を浮かべるが、それでも勝手に説明を始めた。
「面白い!」「続きを読みたい!」など。
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