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青い夕陽の中で君は  作者: ヨルノオトモ
1/1

クマゼミと青

 夏本番。外は茹だるような暑さで、ワシワシと蝉が悲鳴をあげる。通学路から照り返す光が眩しくて、思わず目を細める。いつもの通りの道のりなのハズなのに、いつもよりものすごく長く感じる。



「おはよー!蒼!」

 突然、背後から急に背中を掴まれた。


「うおおっ!?」

 思わず前のめりになる。ふと横を見ると、見知った顔がそこにはあった。


「って、裕太かよ……。お前な、ビックリするからもっと普通に話しかけろよ」

「え、そんなにビックリした?ごめんごめん!」


 コイツは幼馴染の山上裕太。家の近所に住んでいて、昔から家族同士での付き合いがある。


「てかお前、近いよ……こんな暑いのに、ベタベタしてくんな」

「なーに照れてんだよ。幼馴染なんだからこれくらいいいだろ?」


 裕太は昔から人との距離感覚がバグってると思う。いくら幼馴染だからって、普通は男友達に抱きついたり腕を組んだりはしないだろ?でもコイツは、毎日平然とそれをやってくる。


「いいわけないだろ。離れろ、暑い!」

「あ、ヒドイあなた!わたし、傷ついたわ!」


 裕太は最近昼ドラにハマってるらしく、何かあるとすぐに団地妻のフリをしてくる。


「俺はお前の旦那じゃねえ」

「えー?ノリ悪いな〜。蒼も昼ドラ見なよ!ドロドロしてて面白いよ」

「いや、俺にはドロドロの面白さがわからん……」

「あのドロドロがクセになるのに……あ!てかさ、今日の宿題やった?」

「ん?やったけど。」

「さっすが蒼!俺やってないから後で見せて♡」

「お前、またかよ……昼ドラ見てる暇あんなら宿題やれよな」

「えへへ、ごめんってば」



 裕太は明るくて人懐っこい性格で、クラスでも人気がある。前述の通り人との距離感が異常に近いので、男女問わずモテるようだ。

 一方俺は、根暗で面倒臭がりで、口数も少ない。裕太が話しかけて来なければ、一日誰とも話さなかったって日もザラにある。


「毎回思うんだけど……別にわざわざ俺に頼まなくても、クラスの他のやつらにでも見せてもらえばいいんじゃないか?」

「え……なんで?蒼、そんなにイヤだった?」

 裕太が不安そうな表情を見せる。


「いや、そう言う訳じゃないけど……お前、せっかく友達も多いしモテるのに、俺みたいな陰キャとばっか話してたら誰も寄って来なくなるぞ?」


 裕太は一瞬キョトンとした後、ケラケラと笑いだした。

「……あはは!そんなことか!」

「そんなことって、お前な……俺は優しさで言ってんだぞ?」

「わかってるよ!でも俺は、そんなことで嫌われるなら別にそれでもいいよ?」

「いや、でも……」

「もー、そんなこと気にしなくていいから!早く学校行こっ!宿題うつす時間無くなっちゃう!」



 俺の腕を掴んで無邪気に走り出す裕太。暑いからベタベタするなって言ったのに、また忘れてるな……。


 俺はさ、俺のせいでお前が嫌われるなんて、そんなの耐えられないよ。だって、俺は……。


「……人の気も知らないで……」

「ん?蒼、何か言った?」

「……いや、何も」



 夏の朝、茹だるような暑さの中、蝉の声が頭に響く。まとわりつく熱気が息苦しい。この熱はいつ冷めるんだろうか。


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