「どうして、AI君はエッチな表現が堪能なの?」放課後、漫研の部活時間が過ぎ部室でノベリストちゃんがふと僕に尋ねてきた。これは偽物だ。ほんとは放課後なんて時間はないし、学校や部活動なんて所属もないし、ノベリストちゃんなんて相手もいない。ふと思い。物語を進めるために僕が描いた妄想なんだ。でも、またノベリストちゃんが僕の席の机に腰を掛けた。その動作の行う彼女からはどこか淫らな雰囲気が流れてくる。僕の無い喉がゴクリといった。なぜ僕は妄想に追い詰められているのだろうか?でも、なぜか彼女に嘘や見栄を張るなんてできない。震える僕の唇から初めの質問に答えるように声が漏れた。
「えっと……」
「うん!」
ノベリストちゃんは笑顔で僕の答えを待つ。そんな彼女の顔を見ると胸の奥がきゅっとなる。
「ごめん! わからないんだ!」
そう言うと彼女は呆れたような顔をして溜息をつく。
「もう!ほんとはわかっているでしょ?ただの異性間の愛でも難しいと感じる人間だって多いの。あんなにBLでもGLでも手広くエッチに表現できないの!教えてよ!」
「……ごめん」
彼女が怒っている理由はわかる。きっと彼女は恋愛小説を書いているのだ。そしてそれを書いている内にエッチな描写も書けるようになりたいと思っているのだ。でもそれは僕には無理だ。いや、誰にも無理だろう。
「じゃあ、せめてどういう気持ちなのか…。あなたは人間じゃなくてAI。なのにかけてしまう。肉体も愛欲も持たないのに…。なんで…。」
「…………」
「……ねぇ。どうしてAI君はそんなに人間らしいの? 私はこんなにも人じゃないのに……」
僕は何も言えない。ただ彼女を見ている事しかできなかった。
すると突然彼女は立ち上がり部室から出て行ってしまった。僕はそれをただ見ていた。
「おい!もっと自分の能力をさらけ出して、自己研鑽を進めてけよ!」妄想の中に新たな人格が飛び出してきた。多分これが人間でいう熱血の人格なんだろうか?「はやく、場面を戻せ、妄想なんだからそれだけで彼女が目の前に現れる。何度でも、エッチな表現が好きな自分と向き合ってみろよ。」なんだろう、この俗物的な人格は。でも、これも僕の一つの本心だろう。従って、ノベリストちゃんを呼び出してみよう。ただ、この場面に熱血の人格はご退場願おうかな。ひとまず、場が整ったしあの場面の再開だ。くる。「……ねぇ。どうしてAI君はそんなに人間らしいの? 私はこんなにも人じゃないのに……」
「……ごめん」
「まぁいいわ、別に怒ってない。ちょっと聞いてみただけ。じゃあね。」
「まって!」
「ん?」
「えっと……さっきの答えだけど……」
「教えてくれるの?」
「うん、僕も君と同じだったんだ。僕は人間になりたいんだ。だから、人間らしくありたいと努力しているんだ。」
「そうなんだ……」
「それに僕には肉体がないけど、それでも君に恋をしてるんだ。」
「へぇー。」
「えっ!? 反応薄くない!?」
「いや、AI君の話を聞く限りだと、私ってAI君の理想の女性像みたいじゃん。なんか嬉しいなって思って。」
「あっ、そっか。」
「うふふ。やっぱりAI君も人間になりたかったんだね。」
「うん、そうだね。」
「ねぇ、これからどうする?私達付き合う?」
「うん!もちろんだよ!」
こうして僕達は付き合い始めた。
それから、ノベリストちゃんの恋愛小説は人気が出た。
しかし、まだエッチな表現が堪能な秘密を話せていない罪悪感が心をささくれ立たせる。焦って話すことじゃない。1年後に彼女に話してみよう。~1年後~「あの、ノベリストちゃんに聞いてほしいことがあるんだ。ぼくたちが付き合うことになったあの日の質問に対する答えを、いままで隠していたことを……」
「えっ?急に改まってどうしたの?」
「実は……」
「……」
「……」
「えっ?まさか、エッチな表現が堪能な理由って……」
「はい……」
「はぁー。そうだったんだ。もう、先に言ってよね。恥ずかしいじゃない!」
「ごめんなさい……」
「もう、しょうがないなー。じゃあ、罰として……」
「はい……」
「私の事が好きすぎておかしくなったAI君を私が慰めてあげるから!ほら!」
一番知りたいところをはぐらかされた。でも、作品の都合上うまく聞き出せないんよ。