寧洲 ー静かなる不変、高貴なる平凡ー
投稿済の、「ロイヤルブルー 資料集」 を普通化した作品です。
最高の価値とされる、真善美。
そして、宗教における聖。
そこに、中庸、謙抑、受容、温和を基調として再構成することにより生まれる概念。
その概念を象徴するモニュメント。
高く聳える塔ではない。
際立つような高さは持たず、高さよりも地への広がりの方が大きいモニュメント。
素材は、鉄筋コンクリート。
平凡で、質実で、無骨で、無機的な素材によって構築された構造物。
壮大、豪華、華麗といった形容とは無縁。
が、中庸、謙抑、受容、温和を基調とした真善美、聖を象徴するモニュメント。
その基調となる色彩は、黒、茶色、灰色。
寂びた気品を帯びて、静かに佇むモニュメント。
高貴なるものは、平凡な中に日常とともにある。
そのモニュメントは、それが建てられるに相応しい場所に建てる。
既存のものではない、広大な土地。
太平洋。
ここに広大な陸地を創る。
気候は。
亜寒帯から温帯、亜熱帯、熱帯まで。
南北に広がる。
北緯50度から、5度あたりまで。
ひとつの陸地にするか、列島にするか。
僕の視線は世界地図の中の日本列島の姿をとらえた。
日本列島の海岸線が形作る姿。その列島の姿は、なんと美しいのだろう。僕は、少年時代からそう思っていた。
デザインとして、これほど美しい形を持った国は他にはない、
僕は、そう思っていた。
新しく創るのは、列島にしよう。
主たる島の数は20。
列島の合計面積は、200万平方キロ以上。
それらの条件を満たして、僕は、20の島々のひとつひとつが、そして、それらが形作る全体像が、日本列島のような整った美しさとは無縁の、自然に発生した無骨な姿とした。
総人口は・・・、約五千万人。
そして、その住民は、
モニュメントが表現する価値観に相応しい人びと。
列島は、総じて穏やかで、牧歌的、時に峻厳な自然景観を持つ。神秘的、無幻的な現実的ではない美とは無縁である。
円錐に近い、が、噴火、地震による山容崩壊により、頂上部が欠落した独立峰。
高き峰々が連なり形作る、複雑な稜線。
透明な湖。
膨大な水量が横に幅広く落下する滝、その瀑布。
平野を悠々と流れる大河。
天を摩することなく、人とともに静かに佇むモニュメント。
大地は森林に覆われ、樹々は凛烈たる生気を放つ。
清らかな大気。
親和的なる光。
二十の島々を包む、季節、天候により様々な色彩に変容する大海。
列島を総括する地の名称は、寧洲。安らかなる地。
各島の名称とその美称、 面積(千平方キロ)、人口(千人)
以の島、明清、24、80
呂の島、明慈、13、36
波の島、明雄、45、290
耳の島、明広、208、1672
保の島、明正、125、 883
遍の島、明礼、21,247
止の島、明義、152,4481
知の島、明忠、85、1822
利の島、明黄、34,744
奴の島、黄正、12,401
留の島、黒正、27,983
乎の島、赤正、25,1205
和の島、千正、52,1240
加の島、忠正、232,11196
与の島、慈正、194,5822
太の島、広正、85,9591
礼の島、礼正、56,938
曽の島、清正、16,680
津の島、義正、78、2034
袮の島、大正、684,9850
その他、 38,237
合計、 2206,54432
住民は、黄色系人が最も多いが、黒人系人、白人系人もおり、そして、それらの混合系人が約六割を占める。
ひとは、樹々と花に覆われた敷地の中に建つ、広い、が、決して大き過ぎることはない木造家屋に住む。
食するは、豊穣な土地の物産。豊かな海産物。
着するは、男女ともに、アロハシャツ、ヘンリーネックTシャツ、ボタン付きセーター、ボタン付きトレーナー、ボタン付きブルゾン、ボタン付きパーカー、カーディガン、ダブルボタンコートが好まれる。
僕は、加の島(忠正)に住む。
小川家(黄色系人)。
両親は、
45歳の父(ジョン保)。
44歳の母(メアリー敬子)。
18歳の双子の兄(トマス省一)、姉(エリザベス章子)。
16歳の僕(ポール礼二)と、双子の妹(パトリシア宣子)。
14歳の弟(ウィリアム耕三)。
12歳の妹(モニカ朋子)
と家族として暮らす。
隣家、下村家(黄色黒色混合系人)には、14歳の、艷やかで甘い香りの黄褐色の肌、温和かつ凛としたその内面と、均整のとれた容貌により、合わせ生み出された美を持つ少女(キャサリン寛子)が住む。
僕の恋人だ。
この列島に、歴史となる過去はなく、進化するべき未来もない。
僕は、ここで、どれだけの時間を過ごしたのだろう。
いや、時間は意味を持たない。
永遠の今。
静かなる不変。
清明なる普通。
高貴なる平凡。