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メイドちゃん、冒険者始めました!!~スキル≪生活魔法≫も極めたら存外最強!?~  作者: こんぶもずく
第3章 異世界との出会いは突然に
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第72話 フィニルドと人魔大戦

 ランベルはゆったりと話し始めた。


「皆さんが知っているフィニルド。それは約700年前の人魔大戦の頃の話でしょう。

 神暦267年。かの大戦は人間と魔族間で起こりました。

 戦の原因は人類側の魔族の子供の誘拐及び、その奴隷化だと記録に残っております。

 まぁ、魔族側の記録なので真実かどうかは確かではありませんが」


 ランベルのその言葉にフォイルは頷く。

「確か.....王国に保管されている歴史書では『魔族による陰謀が原因である。』と書かれていた。

 しかし、当時の反王国派が遺した書物によれば、今ランベル氏が言ったのと同じような事が記録されていたはずだ。

 だから元々の原因は人類側──王国にあったのだろうな」


 そうなのか.....。

 詳しくは知らなかったね。

 人類側がきっかけで歴史に残る種族間での戦争が起きたのか。


「人類側でもそのような記述をしている方が居るのですね.....。

 それはさておき、その頃のフィニルドというのは、正に『悪魔の王』を名乗るのに相応しい勢力と実力を備えていたのだよ。

 それこそ、人類側に付いても誰も反抗出来ない程にね」


 そりゃそうだ。

 それ程の力がなければ人類側に付いた裏切り者として魔族から攻撃を受けても家系を存続出来ているはずが無いのだ。


「あ、あのいいですか......?」

 シリカちゃんがおずおずといった感じで手を挙げる。


「どうぞ、お嬢さん」

 ランベルが優しい笑みを浮かべ答える。


「ありがとうございます。

 疑問なんですけど、何故フィニルド家はそれほどまでの権力と武力を持ち、そして人類側に非があることを知りつつ王国に付いたのでしょうか?」


 まぁ、そこを疑問に思うのは尤もだとは思う。

 悪魔って変にプライド持ってるとこあるって聞いたことあるし。

 偏見やけど。


「ふむ……。

 確かにお嬢さんの意見は的を得ていると思います。

 しかし、我々にはそれ以上の信念があったのです。

『契約は必ず遵守されなければならない。』という信念が」


 そしてそのままランベルは古の契約について語り始めた。


「かの人魔戦争より昔、フィニルド家がまだ名もない弱小貴族だった時のことです。当時、非常に困窮しており、一家存続も危ういと思われていた我が一族。

 領地からの税収も減少傾向にあったそうです。

 その時でした。王国側がフィニルドに取引を持ち掛けたのは」


『力をつけたいか。金が欲しいか。ならば我らが与えよう。その代わり、我らに三度協力をしてほしい』


「これが当時の国王の言葉でした。

 困窮していたフィニルドはこれしか手はないと王国との取引に応じ、莫大な富と土地と武力を手に入れました。

 そこからです。フィニルドが『契約の悪魔』として名を馳せるようになったのは」


 淡々と語るランベル。


「なるほどね。王国との取引で得たお金を使い、新たな契約を結び、勢力を広げ、たちまち一大貴族として成り上がったってわけね」


 少ない税収で一応なんとか家を首の皮一枚で繋ぐほどの手腕の持ち主ならば、一山の財産が有ればたちまち何倍にでも膨らませられるのだろうね。

 彼?彼女?の存在がなければ、フィニルドは今頃存在していなかったんだろうね。


「その通りです。当時の当主様の見事な采配のおかげで我らの家は続いております。

 その当主は、当時の男尊女卑の悪魔社会の中で、桁違いの魔力、並外れた商才でズタボロの家をなんとか繋いでいました。

 悪魔社会での小規模な戦争に赴いては自身の魔力を以て戦場を制圧。

 また、商業の場に於いても頭脳で制したと言われています」


 なるほど、まさにチート魔力とチート頭脳を持ったチート当主だったってわけね。


「その彼女が居ても、フィニルド家はギリギリだったの?そんだけ凄腕ならどうにかなりそうなものだけど」


 そんだけの腕を持つなら……と考えてしまう。

 しかし、ランベルの口から出るのはまぁ、予想通りの言葉だった。


「えぇ、確かに彼女は優秀でした。しかし、いくら優秀と言えども限界がありました。

 男尊女卑の世の中で女性である彼女が自由に使えるものは少なかったのです」



「やはり、世の中は残酷なものだったわけね」

 優秀な女性だろうと、性が女である以上、下に見られるクソッタレな世の中であった訳だ。



 はぁ、何故優秀な人材を素直に評価することができないのか。

 そこは人間界も悪魔社会をなんら変わりはないということか。


「でも、彼女が築いた地盤は盤石なものだったのでしょう?

 なのになぜ、フィニルド家の現状はこうも無残な結果になっているわけ?」


 私のストレートな物言いに若干の困り顔を浮かべつつやっと物語の本質たる部分を話し始める。


「それは、お恥ずかしいことに身内の裏切り、そして戦争に負けた魔族達の恨み。

 これらが徐々にフィニルド家を蝕み、ここまで追いやったのです」



「やはり、か。

 それだけの富があれば金に目が眩む奴が居てもおかしくは無い。

 それに、人類側に着いたわけだ。魔族側に何も不満がなかった、という訳にも行かないだろう。戦争後の戦力が削られた所を総出で攻めれば堕とすのは簡単だろうさ」


 最後に、まぁ、それで尚家系を途絶えさせる事無く存続させているのはさすがと言えるがな。と付け加える。


 こういう時はしっかりしてるのはおかしいよね、ほんとに。

 まぁ、しっかりしててもらわんと困るがね。

 普段からしっかりしてて下さいよ。


「んで、今に至るってわけね。

 娘にダンジョンで冒険者と戦わせてレベルを上げないといけない程には緊迫してる感じか……」


 ふーん。


「結局私たちに何を求めるというわけ?」


 前置きが長すぎるんだよ。

 助けてもらうに至った経緯を聞いたのは私だけどさ。

 でも長い。

 先に結論聞いときゃよかったぜ。


「長らくお待たせしましたね。

 フィニルド家が求めるのは契約です」

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