第70話 いざ、フィニルド家へ
「こっちです。着いてきて下さい!」
リアリスに連れられやってきたのは『悪魔の館』の《《97階層》》。
「このダンジョンがまさかこんなにも深かったなんてね…これ、一生未踏破なまんまなんじゃ……」
ダンジョンの仕様はやはりしっかりあるようで、層が深くなるごとに魔物の種としてのレベルも、単純にステータスとしてのレベルも段違いだ。
ついさっき通ったとこなんか火龍いたからね、火龍。
クソ硬そうな鱗を全身に身に纏っていましたからね、火龍。
「そうだな……」
まさかフォイルもこんなにも深いダンジョンとは思っていなかったようで、呆然としている。
「まぁ、あるあるだよね……ラノベの(ボソッ)」
最後の方は聞き取れなかったけれど、ハヤトの世界ではこれがあるあるらしい……。
どーなってんだよおい。
てか、ハヤトの元いた世界にもダンジョンとかあったのかね?
どうやろシリカちゃんも同じことを疑問に思ったらしく、ハヤトに聞いていた。
「ハヤトくんがさ、元いた世界にも魔法とかダンジョンとかあったの……?
前から思ってたんだけど、やけに詳しいなぁって」
シリカちゃん、また『ハヤトくん』呼びに戻ってるけど、可愛いから気にしないこととするのだ。
「あー、なんて言うのかな、ラノベとかゲーム……まぁ、俺の世界の娯楽の中に、この世界のような剣と魔法の世界を題材にしたものがいくつもあるんだ。
それを俺はたくさん読んだりしてきたから自然と詳しくなっただけだよ」
なるほど、理解した。
「だからハヤトがこっちに来た時はゲームがどーのこーのって言ってたわけね」
「そ。そういうこと」
うんうん、と頷く。
色々と話しているうちにどんどんと進んでいく。
途中、また別の火龍、土龍、氷龍なんかにも出会った。
リアリスによると、この龍たちは大昔のフィニルド家と契約を結んでおり、フィニルド家の人間と、彼らの客人相手には攻撃することは無いらしい。
流石は契約の悪魔の家系と言われることもある。
ま、やんちゃな子龍なんかはたまに攻撃してくることもあるみたいだが、その場合は親龍が止めに来るか、フィニルド家当主が軽く遊んであげているらしい。
子龍と言っても数十年ほどは生きているらしいけどね。
魔物の時間の感覚ってわからんね……。
そんなこんなで、やっとフィニルド邸に到着した。
「大きいねぇ……」
私の【異空間家屋】の何倍あるんだろう?
家だけの大きさでも数倍はありそうだけど。
プラス、庭の広さも馬鹿にできない程。
流石は太古から続く悪魔の邸宅と言った感じだろうか。
ハヤトが隣でぼそっと『やっぱ、魔族の屋敷はこうじゃないとね』とか言ってるけど、またゲームかラノベだっけ?の話なのだと思う。
「大きいね!リーンちゃん!いつかリーンちゃんの家もこれぐらい大きくなるのかなぁ?」
「んー、どうだろうね?ここまで大きくなっても困る気がするけどね……」
ここまで大きい家があっても正直、掃除とか行き届くかどうか……。
まぁ、私には≪生活魔法:カスタム≫があるから一瞬で掃除が終わるんだけどね。
他の人の分の家もこの大きさで、しかもめっちゃ広い庭付きとなると移動とかもめんどくさそうだし。
「まぁ、リーンのはスキルの中の権能だし、スキルレベルとか、それ自体の熟練値が上がれば十分有り得るんじゃねぇか?」
なるほど.....。
【異空間家屋】なんか毎日使ってるし、それこそ1番早くスキルレベル上がりそうじゃね.....。
掃除の問題はいい。
食事も皆で取ればいい。
でもさ、移動が面倒なんよ。
最悪、戦乙女で飛んでいけばいいんだけどね。
ギィィィ.....と荘厳な音を立てて門が開く。
「「「おかえりなさいませ、お嬢さま」」」
そして、待っていたのは執事&メイドのお出迎え。
何気に、辞めちゃった同期以外の同業者って初めて見たかも。
私と違って、動きが洗練されてて、無駄がない。
これが、本職のマジのメイドってやつか.....。
「お客様方もどうぞ、こちらへ」
先頭の執事さんに案内されるままついて行く。
少し長い門からの道を辿り、遂にフィニルド家の屋敷の前へと辿り着いた。
「ささ、皆様方、中へ。旦那様がお待ちでございます」
───────ッ?!
その執事さんの一言で私たちの間に緊張が走る。
「お、爺や、それは本当か?!父上が顔を見せるとは珍しいな!」
そんななか、1人嬉しそうなリアリス。
そして、るんるんで玄関の扉を開き、中へと入っていくリアリスの後を私たちはついて行く。
玄関を入ると、正面には円を描くように2階へと伸びる階段が2つ。
そして、上を見やると大きなシャンデリアが。
その階段の間には扉があり、そこをリアリスが入っていくところだった。
互いに顔を合わせ、恐る恐る中へ。
入ったところはいかにも普通のリビングとなっていて、右手には暖炉も設置されていた。
部屋の調度品も豪華なのは豪華なのだが、煌びやかすぎることも無く、逆に暖炉との雰囲気も、マッチしており、落ち着いた雰囲気を醸し出していた。
そんなリビングルームのど真ん中。
丁度、暖炉の正面に位置するこれまた大きなソファに腰掛けている男性が1人。
この男性にリアリスが声をかける。
「やっと帰ってきたのねお父様?」
そして、私たちの方を向き、告げた。
「この人がフィニルド家、現当主であり、私のお父様、ランベル・フィニルドですわ」
リアリスの紹介を受け、その男性.....フィニルド家、現当主ランベルは立ち上がり、口を開いた。
「どうも、皆様方。ようこそ、フィニルド邸へ。
私が現当主のランベル・フィニルドだ。以後お見知り置きを。
今日は存分にゆっくりしていってくれ」
私は、また生唾を飲み込んだ。




