第69話 リアリスの内心は
「こうやって襲っておいて、勝手かもしれないけど、私たちフィニルド家を救って欲しいの!!」
真剣な顔でそう告げるリアリス。
困り顔の私たち。
そんな私たちを置いて、リアリスは話を続ける。
「とりあえず、フィニルド家の現状を知って欲しいの。
今から魔族領にある私の屋敷に案内するわ。そこで話を聞いて欲しい」
ちら、と横目でフォイルに視線を飛ばす。
「ったく……全部俺かよ。
わかったよ、とりあえず屋敷に行って、その現状とやらを聞かせてもらおうか」
フォイルは行くことに決めたみたいね。
まぁ、私はハナからそのつもりだったけど。
「礼を言うわ。ありがとう」
リアリスが頭を下げ、礼を述べる、
でもなぁ……。
なんで、言い方がちょっと上から目線なんだろうか……。
「あ、そうだ、リアリス。
まだ言うべきことがあったよ」
フォイルがリアリスを引き止める。
「あっ、はい、何でしょうか」
リアリスもなんかビビって口調丁寧になってるし。
「もし、君が俺たちを騙していたとしたらそこの俺のメイドにコマ切れにされるから注意しといた方がいいよ(にっこり)」
ギギギギギ……と油の切れた扉のようにリアリスが首を動かして私を見てくる。
そして、またギギギギギ……とフォイルの方へ首を戻し、言う。
「わ、わかりました」
コクコクと必死に首を縦に振るリアリス。
それを見て満足気なフォイル。
そして、気まずそうに私をチラチラと見るシリカちゃんとハヤト。
んー、解せぬ。
◇◆◇◆
「ごめんなさいぃぃぃぃぃぃ!!」
私が2人に殺られると思った時、繰り出したのは渾身の土下座だった。
いつか絶対に敵わないと思う敵に遭遇した時にはプライドも身体も地に投げ出して許しを請いなさい──────というパパの教えだ。
私たちフィニルド家は、恐れられてはいるが実際蓋を開けてみればそれなのにザコなのだ。
契約を重んじる家系とか言ってるけど、ぶっちゃけ契約して、主に魔力を提供されなきゃロクに戦えないクソザコナメクジなのだ。
なーにが契約を第一に考えるだ。
契約無しには家を存続出来ないんだから、そりゃ契約してくれた主にはヘコヘコしますよねって話よ。
それに、この間の人魔戦争でそれなりに戦えてたのも契約主の魔力量と質がエグいものだったからってのもあるし。
ダメね……家への愚痴は止まんないわ。
それより、現状をどうにかしないと。
とりあえず、話を聞いてもらって屋敷に招くことは成功しそうだけど……。
幸い屋敷には、魔神様との契約による豊富な装備、魔力、罠がある。
どーやって魔神様と契約を結んだのかわかんないけどある。
屋敷まで誘い込めれば……。
「もし、君が俺たちを騙していたとしたらそこの俺のメイドにコマ切れにされるから注意しといた方がいいよ」
すると、男……フォイルだっけ?にこう言われた。
考えが読まれたの?!
それより、あの女に……。
うぺぇっ?!
目が合った?!?!
怖いぃぃぃぃ!!!
無理無理無理無理!!
こんな人敵に回すとか無理ぃぃぃぃ!!
さっき目がめっちゃ怖かったもん!!
装備めっちゃキラキラしてんのに、目だけ鋭いし、澱んでるもん?!
私はひたすら首を縦に振ることしか出来なかった。
「あのーこれ、良かったら……」
気がつくと私は無意識に契約魔法を発動させていた。
内容は、私は今後一切あなた達を騙したり、危害を加えたりしません、というもの。
あー、私はやっぱりフィニルドの者なのね。
強い者に媚びを売り、契約を結ぼうとしてる自分の姿にフィニルド家の血筋を感じた瞬間だった。




