第68話 リアリスへ事情聴取
私たちの視線の先にあるのは、名高き家系としてのプライドを捨て、体を地に投げ出した状態……つまり《《土下座》》するリアリスの姿。
彼女は謝罪の言葉を涙混じりに並べ、涙とともに鼻水も垂らしていた。
先程までの悪魔としての矜恃の塊みたいな姿勢はどこへ行ってしまったのだろうか……。
「ごめんなさいぃぃぃぃぃぃぃ!!」
未だ大声で謝罪を続けるリアリス。
「え、えぇ……?」
どうしたらいいんだ、これ。
ちらり、とフォイルに目線を送る。
私と目が合い、手を上げ、降参のポーズ。
フォイルも私同様どうしたらいいのか分からない様子。
「はぁ、リアリス。とりあえず話を聞いても?」
このままじゃ事が進まないと思い、声をかける。
「はっ、はい!なんでも答えますぅ……」
別人だな、こりゃ。
そんな彼女に私は質問を重ねる。
どうしてここに居るのか。
何が目的で人を襲ったのか。
すると彼女は息を整え、つらつらと全ての質問に答えた。
「私がここに居るのは、冒険者と呼ばれる人達と同じだわ。
魔物を倒し、経験値を得てレベルを上げるため。知っての通り私はスキルの熟練度もまだ一流と言うには足りないもの。
それにこのダンジョンは魔力循環率が良いのか、私から溢れた魔力を吸って強力な魔物を生み出し続けるのよ」
なるほど。
彼女の目的もレベル上げ。
そして、このダンジョンが未踏破であった理由も彼女から溢れる魔力により生み出された魔物が強力であったが故のこと、と。
「冒険者を襲った理由に関しては、私を見て襲ってきたのが始まりね。
そして、一度倒して気づいてしまったの。魔物が故の特性なのだろうけど、冒険者からの会得経験値が多かったのね。
それで、味を占めて襲ってたってわけ」
一応悪魔も世界からしたら魔物の扱いなのか……。
経験値のシステムに関しては初耳だ。
まぁ、今までここまで会話の成り立つ魔物と遭遇したことが無かったからね。
今度うちのヒナにも聞いてみようかな。
スライムだから人間を襲った経験があるかどうかだけど。
ていうか、ちゃんと話したらどこか高貴さを感じさせる話し方なんだよな……。
そんなことは置いといて、私はここで、ある疑問が浮かんだ。
「リアリスは高貴な家の生まれなんだよね?そんな君がなぜこんなダンジョンでレベル上げを?」
ここは人間の統治する領地のど真ん中だ。
魔族領からは遠く、わざわざ出てくるような所では無い。
高貴な悪魔の家系ならば、広大な土地を所有し、その土地でいくらでもレベリング出来ると思うんだよね……。
それこそ、魔族領の魔物の方が質がいいと思うし。
そう私が質問すると、彼女は苦い表情を浮かべ、やがて覚悟を決めたように口を開いた。
「こうやって襲っておいて、勝手かもしれないけど、私たちフィニルド家を救って欲しいの!!」
真剣な顔でそう告げるリアリス。
その様子に私たちは顔を見合わせるのだった。




