第60話 私は出会う
閉じていた目を開ける。
『認証完了。』
『認証ナンバー、No.3 リーン』
『登録シマシタ。』
『ヨウコソ、管理人室ヘ』
そのシステム音と共に目の前の扉が開かれる。
ここに来るのは初めてだ。
いつもはYes/NoでNoを選択していたからね。
「うっ、眩しい……」
眩しさに目が眩む。
徐々に慣れて、見えたものは出入り口が私の立っている扉のみの部屋。
私の目の前には椅子に座り込み、目の前の映像に目が釘付けになっている男性が一人。
両手で突起が2つ、それに小さいボタンがいくつかついたものをカチャカチャ動かしている。
「割った!!デブマジミリ!!ないす、味方ナイス」
なんていきなり意味不明なことを叫ぶからびっくりした。
私にまだ気付いてないっぽいので後ろに回って映像をのぞき込む。
中に人?
魔法行使の杖を持ってる?
うわ、なんていう速射性能。
それに相手へのダメージも可視化されてる。
お、敵を一人倒した。
そこで私はある考えに思い当たる。
「もしや、これがハヤトの言っていたゲーム?!」
「お、お客さんか。そこに座ってていいよ」
そこ……?と思ったとき、私の後ろにソファが出現。
そこに腰を下ろし、ゲームの画面を見る。
なるほど、画面に映っている二人は味方ね。
で、左下に映っているのがHPゲージ?
2本あるけど……。
「大砲女のアーマー割った!デブも瀕死!詰めるよ」
なるほど。アーマー、つまり鎧ね。
回復できるってことは体に魔力を纏わせてるのかな?
となると、あの青いのはMPポーションか。
大きさによって回復量が違うと。
そんなこと考えてるうちに1部隊を壊滅させたらしい。
ふむふむ、このゲームは模擬戦争システムなのね。
残った最後の1部隊が勝ち。みたいな感じかな?
ってことは残り1部隊。
相手に勝てば勝ちってことか。
画面の中では男が操作する人物が長い杖を取り出す。
「これは拡大魔法?私の≪五感強化≫の視覚強化の様にズームされてる……」
そして、拡大された先には敵の姿が映っており……。
ダァン!
その音のすぐ後に敵にダメージが表示され、倒れる。
鎧を貫通して、その上HPも削り取った?!
なんてダメージなのよ。
「やっぱこれだよね~ワンパンワンパン~次もどーん!」
どーん!の掛け声で倒れる敵。
またかよ、すごいな。
「じゃあ、最後も……どーん!」
「あちゃぁ、頭に当たらなかったな、胴体か。お、味方ナイス~」
ちょっと待って、さっきのが一発で倒れたのは頭に当たっていたからなの?
あんな長距離から頭に当てるなんてすごいな……。
なんて魔法の腕だ。
「ほい、お疲れ様っと……あ、ごめんね。良い所だったからさ」
「改めてようこそ、管理人室へ」
「私はF。よろしくね、リーン」
Fと名乗った男は親し気に手を差し出してくる。
私はおずおずとその手を握り、握手を交わす。
「もう知ってるみたいですけどリーンです。それで、あなたは神か何かなのですか?それとここはどこ?」
「うーん、神、とは違うかな。ちょっと特殊な位置に入るんだけど。神ではないけど神っぽい何かだと思ってくれたらいいよ」
「それとここは、君の世界、異世界、そして神の世界が繋がっている場所さ」
「そして私の自室でもあります」
なるほど、そんなすごいところに私は【カスタムメニュー】で来れてしまっていると。
てか、自室に来られて平気なのもおかしいと思うけど。
「で、なんで私のスキルでここに飛ぶようになってるんですかね?」
そうなんだよね、なんでここへ行けるようになってるのかが分からないよね。
「えぇと…君のスキル≪生活魔法:カスタム≫は私が開発したものですからねぇ。
そりゃこのような抜け道も用意されていて当然です」
「極めてありふれたスキルが神をも殺すほどの力を持つスキルに進化する。これってロマンがあるじゃないですか?」
この男……Fが開発した?このスキルを?そして……
「神を殺すってどういうこと?」
その問いにFは急に真面目な顔になる。
「単刀直入に言いましょう。あなたには神を殺してほしいのです」




