第54話 騎士団長VSメイド─1
私は名付けた聖剣『ルキア』を正面に構える。
フォイルも私と同じように自身の聖剣を構える。
その間に私はバフを自分にかけていく。
≪身体強化≫、≪六感強化≫、≪剣撃強化≫、≪打撃強化≫、≪俊敏≫、≪ド根性≫、≪魔力自動回復:中≫、≪疲労自動回復:小≫、≪知覚速度10倍≫など。
いつぞやの魔族戦で手に入れた称号の効果で手に入れたスキルがほとんど。
今回≪身体強化≫と≪六感強化≫は全てに同じぐらいでパラメーターを振っている。
よし、これで粗方の準備はできた。
あとは向こうがどう来るか……。
───!?
≪六感強化≫で強化された第六感──つまり直感による危険表示!!
右斜めうしろ───ヒュンッ!!
何かが勢いよく私の頬を掠める。
これは前回もあった飛ぶ斬撃!!
でも、あれは実体がなかったはず……。
飛んでいった何かはフォイルの方へと向かい、《《彼の聖剣と融合した》》。
!!
なるほど。そうか!
あの例の飛ぶ斬撃は聖剣から小さな欠片を生み出し、それを高速飛翔させることで飛ばしていたのか。
何故それが前回は分からなかったのか。
これにも考えがついた。
多分、私の動体視力が追いついていなかっただけのこと。
欠片の残す残像は見えてもその正体までは見切ることは出来なかったのである。
それがここ1ヶ月の戦闘経験、そしてスキルの熟練度アップによる補正で上がったことにより見えるようになったわけだね。
「なに乙女の顔に傷作ってくれちゃってんの?」
「よく言うぜ。そんなの一瞬で治せるくせに」
フォイルの言う通りだけどね。
もう既に【戦乙女】の効果で傷は一瞬にして塞がっていた。
「それは気持ちの問題だっつーの!!」
そう言いながら今度は私から仕掛ける。
なんの芸もなしの直線攻撃。
しかし、私の≪身体強化≫と【戦乙女】の相乗効果による高速飛翔は相手の虚をつくのには強力な一手となる。
「ぐぅ!?」
案の定フォイルは碌な回避行動も取れず、聖剣で受けるのが精一杯の様子。
しかし、私が力で勝てるはずもなく押し返される。
それに合わせて下段からの反撃が来るが、私は空中に舞い上がり躱す。
「はぁ!?お前、飛ぶのは卑怯じゃねぇか?!」
「何言ってんの?戦いにおいて卑怯もクソもねーだろ?生憎こっちは騎士道なんて持ち合わせていないんでね!」
はぁ、それを騎士団長ともあろうお方が知らないわけないよね?
と付け足しておく。
「うるせぇな!!文句ぐらい言わせろ!このチート野郎!」
そう言いつつも欠片を生成して飛ばしてくる。
「ぐっ、さっきよりも数が多い!!」
私の飛行技術が足りないせいで何発か貰ってしまう。
中には刺さったのもあった。
「うっ!!」
私はそれを無理に引き抜き【戦乙女】による治療を待つ。
「回復させないよ!!」
フォイルは回復中の私目掛けて追加で欠片を放ち、自分自身も地をけり向かってきた。
くっそ、このままじゃジリ貧だ。
何か打開策は!?
その時、私の頭に福音が鳴り響く。
やはり、私は神か何かに見られているのだろう。
毎度タイミングが良すぎる。
そして私は────
────欠片とフォイルを置き去りにする速さでの飛翔を始める。




