第50話 属性(以下略)─3 私の気持ち味わえ!!
「おい、リーン!!」
ですよねー。絶対何か言われると思ったもん。
「なに……?」
「ここまでやっていいとは言ってないぞ?!魔石を一つ潰すって言うからなんだと思えば……なんだ?この威力は?!」
私は火の魔石の熱で火傷した手に【HPポーション】を振りかけながら答える。
「だって、雨をどうにかしろって言ったのフォイルだし……あ、治った……それにさっきみたいに地面も被害受けてないでしょ?実害はなかった訳だしいいんじゃないの?」
「実害がなかったのは誰のおかげだと思ってんだ……?」
「え?」
「俺が聖結界を張ってたからなのわかってるか?」
「それは知ってる。ハヤトに張ってたの見たし」
それを言ったら『はぁ……』とため息をつかれた。
「俺がハヤトだけに結界を張ってたと思ってんのか?お前も見ただろ?さっきの冒険者たちを」
確かにあの様子のおかしな冒険者たちも無事だった……。
「もしかして……」
「そうだ。俺が周りのみんなにも結界を張り、かつ、認識阻害の結界も張ったんだぞ?効果を内側に向くようにしてな」
様子がおかしかったのはそういうことか。
「爆発を見てから爆風が届くまでの一瞬でそんなこと……」
やはり、騎士団長という肩書は馬鹿にはならないんだね……。
「まぁな、俺は騎士団長として皆を守る責務があるからな」
「……それは悪かったわ……んで、ありがと」
「お、おう……。ま、まぁ、雨を止ませろって言ったのは俺だからな。俺にも責任はある」
騎士団長としては立派なんだよな、こいつ。
私の主人としてはダメダメだけど。
尊敬できるところが一ミリもない。
「あの……そろそろ再開しない?」
今の今まで空気となっていたハヤトからそう提案される。
「そうだね。そうしよっか!んで、フォイル、次は何するの?」
そうだそうだ。こんな事言い合っている暇はないのだ。今日はいろいろやんなきゃだからね。
「んーそうだな。今丁度リーンが持っているし風にでもするか」
「おっけー。じゃあ、どうぞ、ハヤト」
「ありがとう」
そう言って受け取り、ハヤトは魔石に魔力を込める。
すると、ぶわっ、と辺りにそよ風が吹いた。
まるで春の野原に吹くそよ風のようでとても心地がいい。
「気持ちいい~」
「リーンもやる?」
ハヤトにそう聞かれた。
「んーん。いっかな~。さっきもやったし、それに私風苦手っぽいんだよね。なんか魔力が通りにくかったっていうか」
「あれで苦手なのかよ……」
フォイルに少し呆れられてる。いつものことだけど。
「なぁ、ハヤト。こいつのスキル見たことあるか?」
「うん。確か≪生活魔法≫だっけ?家事とかのスキルだよね?」
「あぁ、そうなんだがな?戦いにも使えて、魔族を単独討伐できるぐらい強いんだぜ?」
「え……魔族を???」
ゲームの知識で魔族のことを知っているのか若干引き気味のハヤト。
「おい、フォイル!いらんこと言わんくていい!!」
「それに散々人のことバケモノ呼ばわりするけど、そのバケモノに普通に勝ってくれちゃったの誰ですか???」
「え、魔族を単独討伐するような人に勝った……?」
「まあな……」
そこまで言ってフォイルはハヤトのドン引きの視線に気づいたみたい。
そして、私の方にスーッと視線を向けてこう言った。
「なぁ、リーン。俺、引かれる側の気持ちが分かったよ今」
「うむ。よろしい」
私は満足げな顔でそう応じるのだった。




