第42話 救いの手
なんとかして身振り手振りで伝え、街に入る事は出来た。
でも、それだけ。
言語の壁は解決していない。
「すいません!誰か!誰か俺の言葉の分かる人はいませんか!!」
でも諦めない。
もしかしたらわかる人だっているかもしれない。
そう思って叫び続けもう何分経っただろうか。
喉はカラカラに乾ききって、もうほとんど声も出せないでいた。
「誰か……誰か俺の言葉を……」
タッタッと軽快な足音が二つ。
あぁ、この人たちもきっと優しい人なんだろう。
今までもあった。
無視され続けている俺に声をかけてくれた人たちが。
でもその人たちも俺の言葉が分からないから困り顔で離れていくのだ。
どうせ通じないから大丈夫です。と、通じないのだけれども、言いかけたその時だった。
「《《あの、君。大丈夫?》》」
思わず顔を勢いよく上げた。
目の前には俺より年上であろう女性が二人。
正直嬉しかった。
もう遠くに忘れて来てしまったかのように感じていた日本語をシステム音ではなく、人の口から聞くことが出来たのだから。
「良かった!!やっと言葉の通じる人がいた!!」
喉の渇きなんか忘れて自然と口から出ていた。
それを聞いて困り顔の女性。
俺に声をかけてくれた方だ。
メイド服を着ているからきっとメイドさんなのだろう。
そして、彼女が困り顔になるのも頷ける。
だって、彼女からしたら俺は意思疎通を図れる相手。
言葉の通じる相手。
なのに、先の発言だもん。
まぁ、俺の言葉を聞いてもっと困り顔になってる人がメイドの彼女の後ろにいるのだけれども。
多分、門で初めてこちらの世界の言葉を聞いた時、俺もこんな顔をしていたんだろうな。
そこから少し話をしてこのメイドさんだけには俺の言葉が通じることが分かった。
「ハヤト君ね。ステータスの見方って分かる?」
そういやそんなのあったなと思い出す。
色々ありすぎて忘れてました。
んー正直説明あんまり聞いてなかった。
ま、こゆのは頭の中で『ステータスウィンドウ!』って叫んだら何とかなるだろうろいう考えで叫んでみる。
『ステータスウィンドウ!!』
「あ、開けた!!」
見てもいいかと聞かれたので見せてみる。
どうやら話してることは分かっても日本語は読めないらしい。
「あ、お姉さんでもこれは読めないのか……日本語対応はしてないんだな……」
問題はこの発言の後だった。
この世界には日本語という言語は存在しない。
まぁ、これは身を以て体験した。
もちろん日本という国も存在しない。
そして、もっと問題なのはその後。
俺が≪万能言語≫というスキルをSPを消費して取って、二人と円滑にコミュニケーションをとれるようになってからの事。
俺はこの二人、リーンさんと、シリカさんの会話の流暢さに驚いていた。
まるで本当の人と話しているような感覚。
普通こういうNPCは定型文しか話さないものだが、よく周りを見ると周囲の人々も流暢に会話をしていた。
高度なAIにしてもおかしい。
そこで俺はこの場所の地名を聞いてみることにした。
帰ってきた答えは……『ライネス王国、ウィアルス領』。
……知らない地名だった。
ゲームの前情報に無かった地名だ。
俺が特別プレイヤーだから別マップ?
いや、違う。
最初のシステムアナウンスでマップ名は同じだとはっきりと言っていた。
今までの情報から整理すると結論はこう。
一つ目。
マジで特別プレイヤーとして公式発表に無いマップに案内された。
二つ目。
《《ここはマジの異世界である》》。
ゲームなんかではない。ガチの。




