第38話 新たな日常へ、
また空けてしまいました……申し訳ない
それからの日々は楽しくて毎日が秒で過ぎ去っていった。
私とシリカちゃん、それとフォイル。
この三人のパーティー、【血塗れた騎士】の活動も順調に進んでいる。
今日は三人でBランクダンジョン『雹霧の森』に挑み、ボスモンスターを討伐してきた。
今はその帰り道。
もちろんまだダンジョン内なので警戒しつつ、談笑していた。
「リーンちゃん、今日もありがとね~また助けてもらっちゃった」
「それにフォイルさんも」
「いいよ、シリカちゃん。そんなに気にしないで」
そんな顔で謝られたらなんでも許せるわぁ。
「そうだよ、シリカちゃん。こいつは働かせといたらいいんだよ。なんてたってメイドだからな~」
「しばくぞ、クソ」
私とフォイルのこのやりとりはいつも通りである。
「それにしても私たちほんとに強くなったよね!って言ってもリーンちゃんとフォイルさんは元から強かったけどね~」
「確かにそうだね~。でも私まだレベル20のまんまやけどね」
そう。何度ダンジョンに潜っても私のレベルは1も上がらず、屋敷にいるときのレベル20のまんまなのだ。
「本当に不思議だよな。魔族も倒して、ダンジョンで一番モンスター倒して、ダンジョンボスも倒したのに1レベルも上がらないんだもんな」
「マジで、それな?頑張りに見合ってないわぁ」
タダ働きしてるようなもんじゃん。
「でもさ、その代わりスキルは育ってるよな」
そうそう。スキルの熟練度は順調に溜まってるんだよね。
「あ!もしかしてさ?リーンちゃんの経験値全部スキルに吸われてるんじゃ?」
「「!?」」
私とフォイルはバッ!とシリカちゃんの方を見る。
「リーン!この仮説マジであるんじゃないか?!」
「だな、フォイル。私のスキル使ってないのまで熟練度上がってるからね」
「シリカちゃんマジグッジョブ」
がばっ!とシリカちゃんに抱き着く。
「リーンちゃん?!ちょっ……」
くぅっ、照れてるシリカちゃん可愛い。
「おーいリーン。興奮するのは分かるけどさっさと帰るぞー」
「はいほーい。行こっか、シリカちゃん」
「うんっ!」
そうして3人仲良くダンジョンを飛び出した。
「ふい~たでまたでま~」
私はいつも通り異空間家屋へのゲートをくぐり、わが家へ。
「うおっ、こんな感じなんだな。例の異空間家屋ってのは」
今日はフォイルも一緒である。
どうしてかというと……
「ありがとうな、リーン。俺もここに住まわせてくれるとは」
そう。今日からこいつとセバスチャンもここの住人なのだ。
「ま、家は別なんだけど……」
「別ってどういうことだ?」
「まぁまぁ、見ればわかるって」
フォイルの手を引き、私とシリカちゃんの家から出る。
ちなみにシリカちゃんは今、ダンジョン探索で汚れたからスライムのヒナとお風呂に入っている。
ヒナと一緒に入ると汚れがすごく落ちて、肌のケアにもなるらしい。
「ほい、これがフォイルの家ね」
ちょうど私たちの家の向かい。
そこにもう一軒家が建っていた。
「最近もう一つ増えたんだよね。だから丁度いいかなって」
「あれーフォイルさーん?聞いてますかー?」
おーい、と目の前に手をかざしてみる。
「あ、ごめんごめん。ちょっと驚いてしまって……」
「もう、分かってるんだけど。言わせてくれ。やっぱリーンのスキルおかしいわ。マジで。こんな巨大な空間を作るスキルとか……しかもそれがスキルの権能の一部に過ぎない?本当におかしいだろ」
「それはもう慣れてもらわんとやね」
そんなこんなでフォイルも異空間家屋に住むことになり、パーティーメンバーがより近くなった。
ちょっとわくわくするね。
「おやすみ、シリカちゃん」
「うん、おやすみ、リーンちゃん」
暗闇の中目を閉じて、目覚ましをセットする。
もう慣れたものだ。
でも、この動作でさえ楽しいんだよな、私は。
前は眠る前っていうのは次の日のスケジュール確認。
そしてそれが終わると死んだように眠る日々だったからね。
ベッドていうのは私の親友であり、墓場だった。
でも、今はどうだろうか?
隣にはもうすでにすやすやと安らかな寝息を立てるシリカちゃん。
適度な疲労感で倒れ込むふかふかのベッド。
「あーなんか生きてるって感じがするね」
そして、冒険者になってから朝を気にすることが無くなったのを思い出し、私はいつもよりも遅めに目覚ましをセットし直す。
そして、今度は前向きな意味で胸に誓うのだ。
『明日も頑張ろう』ってね。
新年度って色々忙しいですよね(言い訳)




