第36話 ぐーたらな、生活
3人でパーティーを組んでから早いこともう1週間。
その間私はただ!ひたすらに!怠惰な!!生活を送っていた。
冒険者になって2日。たった2日間の出来事の忙しさの反動でまじぐーたらしていた。
もちろん?シリカちゃんとフォイルと依頼も毎日こなしてはいる。
でもこの3人だとどんな依頼でもすぐに終わってしまうので終わってからはわりかし暇なのである。
「ふ~疲れた~。シリカちゃんただいま~」
ある仕事を終えた私はスキルで家へのポータルを作り、くぐる。
くぐった先にはバカ広い家と、シリカちゃん。
そして、ヒナを筆頭としたスライムたち。
「あ、おかえり!リーンちゃん。お疲れ様っ」
帰って早々この笑顔である。疲れが吹き飛ぶわ~。
「それにしてもリーンちゃん。フォイルさんの屋敷のお仕事辞めなかったんだね?」
「今日からまた働くなんて」
そう、私はまだフォイルの屋敷のメイドとして働いている。
理由は────
「ま、給料も出るし、それにスキルの熟練度も上げられるからね。損は無いし」
「それにあの屋敷をセバスチャンっていう執事さん1人に任せるのも酷だからね」
「あと、あいつに懇願されたしね」
ご老体に私でさえ大変だった屋敷の事を任せるのは何が何でもひどいからね。
「あ、なるほど~。でもリーンちゃん家出てからまだ2時間ぐらいしか経ってないよね?」
「あ、それはね……」
そう言って私は今日屋敷で働いた内容をシリカちゃんに話す。
────────────
「うぃーっす」
見慣れた屋敷の玄関扉をくぐり、屋敷へと入る。
「あ、リーン。来てくれてありがとうな」
奥からフォイルが顔を出し、遅れてセバスチャンもやって来た。
「リーンさん。本当にありがとうございます。私だけでは流石に」
深く頭を下げてお礼を言うセバスチャン。
「いいの、私にも得はあるからね」
「よし、早速始めようかな」
私は屋敷のリビングへ移動する。
「最初はリビングからするんだね」
「ん?違うよ?《《屋敷全体から》》するんだよ」
「は……?」
戸惑うフォイルを置き去りに私は準備を進める。
「≪掃除《クリーンアップ》≫。範囲指定。屋敷全体!」
すると私の視界のみに映る屋敷の全体図が各部屋ごとに端の方から薄いグリーンに染まっていく。
「お?」
途中で部屋を染める色が薄い赤になった。
「なるほど。魔力が足りないのね」
「じゃあ、赤いところを削って、あ、MPポーション用にもう一部屋削っておこうかな」
よし。これで準備はできた。
「≪掃除、範囲指定【部屋全体掃除】!≫」
「!!」
一瞬視界がぐらっと歪む。
一気に魔力を使いすぎたみたいだね。
「≪飲料水≫、【MPポーション】」
ぽんっ、と手にポーションが現れる。
私はそれを一気に飲んだ。
魔力が回復したのを感じて私はもう一度範囲指定に戻る。
そうやってものの数分で部屋の、いや屋敷全体、庭までをも掃除し終えたのである。
「ふ~いっちょあがりぃ!」
すっきりした様子の私を見て、フォイルはもはやお決まりとなったセリフを吐く。
「やっぱリーン、お前のスキルバグってんな」
それに私もお決まりとなったセリフで返す。
「うん、私もそう思う」




