第33話 さぁ、やろうか
「俺の職業は王国直属騎士団【王室近衛団】の団長だよ」
聞き間違えかな??
そうだよね、うん。
こいつが王国直属の騎士団の団員、ましてや団長とな?
この国イカれてんじゃねーのっ!?
確かに?コイツなんか体使う仕事してんだろーなとは思ってたけどさ?
鍛えてある感じがするっていうか。
それにしてもこんな奴を団長にするとは物好きなもんだねぇ、国も。
「どう?驚いて声も出せないみたいだけど」
ニマニマしながら見んな?
「うるせぇ。あとその顔腹立つからやめろ?」
んーとまた考える素振りをして言った。
「じゃあさ、戦ってみない??戦ったら強さが分かると思うんだ」
うん、一理あるね。
「へー面白いじゃん。いいよ、やろ」
すたすたと歩いて庭の訓練所へ。
掃除のときに来たことはあるけど、自分で使うのは初めてだね。
「≪刃物≫、【鉄剣】!!」
鉄剣を正眼に構える。
「へぇ、それもスキルだよね?」
そう言いつつ、フォイルもゆったりと剣を構える。
「うん、そうだよ」
こっそり≪身体強化≫、≪五感強化≫(どちらもLv.10)を自分にかける。
体が軽くなり、五感が研ぎ澄まされていくのを感じる。
「ふーん、準備ができたみたいだね」
目をすーっと細くしこっちを見やるフォイル。
「うん、いいよ」
背筋に冷たい汗がつたる。
手が震える。
あの魔族と同じぐらい……緊張して、る?
「リーンいい表情してるね」
ひた、と頬に触れる。
あぁ、笑ってるのか。
昨日の魔族戦でも私は笑っていたのだろうか?
戦いに悦びを感じる戦闘狂なのか?私は。
それとも冒険者になれたことへの実感を伴う笑みなのか。
どちらにせよ、シリカちゃんに見られてなくてよかった。
「じゃあ、行くよ?」
地面を一蹴り。
それだけで私とフォイルの距離はぐっと縮まる。
「───!?早ッ!!」
すんでのところで躱される。
さすがの反応速度だね。
騎士団長なだけはあるね。
「でもッ!逃がさない───よッ!!」
私は《《空中を》》蹴り、方向を変える。
「はぁ!?んなのアリかよ!!」
そう言いつつもフォイルは姿勢を立て直し、私の剣と彼の剣は互いの体の前で交差する。
そして互いに押し返す力で二人の距離が開く。
「はぁはぁ。ここまでやるか?予想外だったよ」
肩で息をするフォイルだったけれど、一度の深呼吸ですぐに元通りのリズムに戻る。
「リーン、お前なんかやってるな?」
あーバレたか。
「うん、してるけど?」
さも当然。そういう顔をして受け流す。
「うん、当然だろ?みてーな顔しても無駄だからな?」
「んで、何使ってんの?」
「えっとねー≪身体強化≫と≪五感強化≫かな~」
ほんとはもっと使ってるけどね。と心の中でつけ足しておく。
「はぁ……。なら俺も良いよな」
ぶわっ、とフォイルの体から圧を感じた。
「なんだ、お前も出来んのかよ!」
これは強化のレベルを上げるしかないみたいだね。
「さぁ、こっからが俺の本気だ。やろうぜ」
そう言って前髪を掻き上げ、闘志を剝き出しにするフォイル。
きゃぁ、かっくいー。




