第27話 ヴァルキリー
神域装備戦乙女。
天使の名前を冠したこのスキル。
私の全身から聖なるオーラが溢れ出してる。
溢れる量の勢いとは真逆で、そのオーラ自体は木の葉の隙間から覗く木漏れ日のように温かく、包み込まれるよう。
とにかく心地が良い。
人間にとっては。
向かいの魔族、ガリア。
溢れ出たオーラの少しの粒子に中てられさっきから焦っているのが丸わかりだ。
「そ、そんなモノを纏っただけで何になる!」
「所詮、リーン、お前は人間だ。魔族には勝てぬ!」
「このセットの名はヴァルキリー」
「知らないの?ヴァルキリーがどんな天使なのか」
ガリアがゴクリと喉を鳴らす。
「ヴァルキリー、それは《《戦場で生きる者と死ぬ者を定める天使》》」
「この意味が分かる?ここでの生死を決めるのは私。ガリア、お前には死んでもらうね」
そこからの戦いは私が終始優位に立った。
しかし、ガリアも粘った。
炎の魔力弾を飛ばし、私を攻撃。
私は難なく躱したが、飛んで行った魔力弾はダンジョンの天井に穴を開け、空が見えるほどの威力だった。
そんな状態が長く続くはずもなく。
神聖力に中てられ、段々と動きの鈍くなるガリア。
それに私が致命傷を与えるのは造作もないことだった。
「はぁ……はぁ……。や、っと、捕まえた」
「終わりだよ、ガリア」
私は血に塗れ、息も絶え絶えな様子のガリアの体の上に跨る。
見つめるガリアの目にもう敵意は無かった。
「捕まった……みたいだな、リーン」
「ここまでやるか、人間は。正直予想以上だった」
「人間舐めすぎなんだよね」
そう言って私はガリアの剥き出しになった魔核に聖剣を突き刺す。
黒い粒子が辺りに溢れ、それが引くと聖剣を突き立てたところにもうガリアの姿はなかった。
「こうしちゃ、いられない……シリカちゃん……」
緊張が解け、安堵感からか動かなくなってきた体を動かし、シリカちゃんの元へ。
私はHPポーションをありったけの魔力を込めて作り、シリカちゃんへ振りかけた。
徐々に傷の消えていくシリカちゃんを閉じかけている瞼の隙間から確認し、私は意識を手放した。




