第24話 リミッター
おい、なんで寝てるんだよ、私!!
起きろよ!!
何度呼びかけたって起きることのない私の体。
それと同時に私の心には絶望が渦巻く。
あれだけ、あれだけの事をしてもまだ届かなかった。
なんで、なんで私がこんな目に。
それにシリカちゃんだって。
今日は2人で楽しくダンジョンに潜りに来ただけなのに。
あぁ、元はと言えば私が悪いのか。
ダンジョンなんかに誘ってしまった私が。
まだ町の周りとかなら人目についてすぐにでも助けが来ただろうな。
でも、ここ、ダンジョンだし。
人なんて来るわけがないし。
ここで終わりだ。
せっかくメイドも辞めれるのにな……。
あ、まだフォイルにちゃんと辞める許可取ってないや……。
まぁ、後でで良いよね。うん。
もう眠いし寝よう。
おやすみ。
……て!!
……てってば!!
起きてって言ってるでしょ!!!
誰かの声でまた呼び戻される。
……ヒナ?
『わたし、ますたーさんのそんな姿見たくない!!』
『昨日あったばっかのますたーさんだけど、いつも笑ってるの知ってるよ?』
『なのに、今は笑ってない!』
『それに、ますたーさんは今まで頑張って来たんでしょ!!』
『じゃあ、ここも頑張ってよ!!』
『いつまでもくよくよしてるますたーさんなんて嫌い!!』
ありがとう、ヒナ。
てか、喋れたんだね。
それは置いといて、行くよ。私。
ぱぁぁぁと視界が白くなる。
頑張れ、ますたーさん。
──────────────────
「かはっ、ごほっ!」
目を覚ます。
そばにはヒナがいた。
そして周りにはシャボン玉が浮いていた。
「ありがとう、ヒナ。回復してくれたんだね」
これは【水魔法:しゃぼんの癒し】。
ヒナの水魔法。
「きゃっ!!!」
「!?シリカちゃん!!」
シリカちゃんの元へ向かう。ルア。
今にも炎の剣を振り下ろそうとしている。
「間に合えぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
「≪身体強化≫、脚力+100%ぉぉぉ!!!」
メリッ!
ダンジョンの床が捲れる。
<ほら、見ててごらんよ。ニンゲンのリミッターが外れる瞬間さ>
天界からリーンを見守る一柱の神。
<ニンゲンは神の意図していないことすらやってしまうんだ>
その神は周りの神々を見回し言った。
<だから、ボクの最高傑作なんだぜ?>
その少年の神は自慢するようにニヤリと笑う。
≪身体強化≫、脚力+────300%。
魔法最速と言われる雷魔法と同じスピードで地面スレスレを駆ける。
グン、と後ろに引く力さえも置き去りにし、ルアの振り下ろす剣とシリカちゃんの間に駆けていく。
そして、到達する直前、何か手に熱いものを感じた。
『リミッター解除。制限を緩和。能力を一部開放しま───』
その声が何かを言い終わるより早く私の体はルアとシリカちゃんの間に滑り込み、《《それ》》を私は前に出していた。
それはルアの炎の剣容易くを弾く。
私は目を疑った。
私の手に握られていた《《それ》》は魔剣と対を成し、対魔族戦に於いてあり得んばかりの効果を発揮するもの。
神々が勇者に与えし祝福の剣。
────人々はそれを、≪聖剣≫と呼ぶ。




