第22話 く、狂ってる……
「あはっ、シリカちゃん♪」
煙が晴れ、見えてきたのは私とそう年齢も変わらないであろう女。
その手には燃え盛る炎の玉。
「あはっ、死んじゃった?」
「あれっれ、動かないじゃん」
ケタケタと楽し気に笑う。
「あははははははっ!ざまぁねぇな!」
「私を捨ててそんなガキ選ぶから悪いんだよ!」
「ま、そのガキも今すぐに殺してやるけどなァ!!」
手に持っていた炎の玉を凄い速さで投げつけてきた。
しかし、それは私に当たることは無かった。
「シリカちゃん!?大丈夫なの!?」
私の目の前には剣を構えるシリカちゃん。
だが、先ほどのダメージもあって、肩で息をしている。
「チッ、生きてたか」
「次はないよ?」
悠然と炎の玉を構える女。
「っ、大丈夫だよ、リーンちゃん」
どう見たって大丈夫ではない。
私を安心させるために言っているのがまるわかりだ。
「それに彼女、ルアは私の昔のパーティーメンバーなんだ」
「私は良いからリーンちゃん、逃げて」
「なに2人で話してんの?」
ブゥンッ!!
炎の玉が私の側を掠め、後方へ飛んでいく。
チリッと服が焦げた。
「リーンちゃんに何を!!」
重そうな体を投げ出し、ルアに向かっていくシリカちゃん。
早い。
なのに、平然と受けるルア。
「へぇ、リーンって言うんだぁ、その子」
「アンタを殺した後にたっぷり可愛がってやるよ!!」
ルアはまた火の玉を生成。
それをシリカちゃんに薙ぎ払って攻撃。
正直、私が見えたのはこの程度だった。
二人のレベルが私と違いすぎて目で追えない。
しかし、次の瞬間だけははっきりと見えた。
ルアの《《太くなった》》腕がシリカちゃんをダンジョンの壁に吹き飛ばしたのだ。
明らかにおかしい。
「≪解析鑑定≫!!」
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ルア(呪い:魔族化) Lv.47
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魔族!?
彼女は人じゃなかったの!?
いや、違う。
呪いによって魔族化している……。
「シリカちゃん!!そのルアって人、呪いで魔族になってる!!」
驚きの表情を浮かべるシリカちゃん。
しかし、その顔は弱弱しい。
壁に打ち付けられた事もあり、余裕のない表情を浮かべている。
「なに?お前、鑑定持ち?」
「人の事ジロジロ見てんじゃねぇよ!!」
また炎の玉が飛んでくる。
私はそれを剣で切り伏せる。
「なんで、防ぐかなぁ」
「苦しみが続くだけだよ?」
「ま、いっか。先にシリカちゃん殺しちゃおーっと♪」
ルアは先ほどのよりも何倍も大きい炎の玉をシリカちゃんに投げつける。
「≪身体強化≫!!」
私は≪身体強化≫のスキルを使い、シリカちゃんの前へ躍り出る。
間一髪のところで間に合った。
でも全身に火傷。
痛い。
全身を熱と針の刺すような痛みが駆け巡る。
「っ……≪飲料水≫、【HPポーション】」
HPポーションを自分とそばで苦しそうにするシリカちゃんに振りかける。
「次はアンタが相手ね、耐えられればいいけど」
「ゆーっくり殺してあげるね♡」
「モンスターを殺すのは冒険者の役目だもの♡」
嫌な笑みを口元に浮かべるルア。
「やっぱり、狂ってるね、あなた」
戦わないと。
レベル差があろうとも、戦って勝つ。
シリカちゃんを守るために。




