第19話 わたしと……
ピピピ……ピピピ。
いつも通りの音で目を覚ます。
でも、決定的にいつもとは違うこと。
私の隣にはまだすぅすぅと寝息を立てるシリカちゃん。
今日、私はこれを見るためだけにシリカちゃんより5分早く≪目覚まし≫をセットした。
同い年のはずなのに何故こうも私より可愛いのだろう。
別に、幼いとかそういうのじゃなくてただ単に可愛く、美しいのだ、この子は。
「私がスレてしまっただけなのかもね……」
すると、隣のシリカちゃんがもぞもぞと動いた。
「ん……んぅ。あ、リーンちゃん、おはよ」
天使の目覚めである。
おい!誰か宮廷絵師を読んで来い!
天使様がおいでなすったぞ!!
「おはよ、シリカちゃん。どう?よく眠れた?」
「うん、バッチリだよ~。目覚めも最高だよ!」
「やっぱ凄いね、リーンちゃんのスキル」
そこから私たちは私の作った朝食を食べ、家を出てギルドへ向かった。
いま、シリカちゃんは裏で着替えている。
私服姿も良いけれど、やっぱり受付嬢姿も似合ってるよね。
私が依頼を眺めていると、面白そうなものがあった。
『初心者必見!!初心者でも安心して潜れる迷宮出現!ギルドランクFの方でも安心してご利用いただけます!』
とのこと。
Fからなら、始めたての私でも安心して行けそうだよね。
そんなことを思いつつ待つこと数分。
受付にシリカちゃんが出てきた。
途端にできる列。
「さすがここのナンバーワン」
近くの男の冒険者がつぶやいていた。
どうやって決めているかは知らないけど、どうやらシリカちゃんはここの1番人気らしい。
ま、当たり前だよね。
そんな子と友達で、昨日一緒に寝た私を崇めたまえ諸君。
なんて、バカなことを考えつつ、私も列に並ぶ。
今日は彼女に《《あること》》を提案しようと思うのだ。
そして、私の順が来た。
「やほ、シリカちゃん」
「あ、リーンちゃん!本日はどのようなご案件で?」
受付嬢モードのシリカちゃんこんな感じなのか。
うん、いいね。
「えっと、パーティー申請をしたくて……」
今日はパーティー申請をしたかったのだ。
パーティーというのは数人でダンジョンや冒険に行くチームのようなもの。
ソロで潜るより効率的かつ、安全に冒険を進めることができる。
もちろん報酬が分割されるけど、もともと仲の良い人たちで組むことが多いため、そう問題は起きないみたい。
「ふむふむ、ちなみにメンバーは誰ですか?」
そんなのもちろん決まってる。
「もし、良ければだけど、私はシリカちゃんと組みたいかなって。昨日会ったばっかだけどね?」
シリカちゃんは黙る。
やっぱダメ、なのかな……。
「リーンちゃん……」
「は、はい」
「もちろんだよ!!組もうよ!私と!」
良かった。
てか、口調が受付嬢モードじゃなくなってるよ~。
後ろに並ぶ冒険者たちもおぉ!と驚いている。
どうだ?男たち。私の前ではこの子もっと可愛いんだぜ?
そんな事考えてる間にシリカちゃんは紙を取り出し何かを書いている。
「はい!書類これね。私のは今書いたからリーンちゃんの分を書いて、後でまた持ってきてね!」
ざわざわ……。
周りからは驚きの声がたくさん上がっている。
そりゃそうだろう。
リーンちゃんほど人気な子が今までパーティーに誘われなかったことなんてあるわけがないと思うし、つまりほかの人の誘いは断ってきたということ。
なのに、昨日会ったばかりなんて言う私と組んだものだから驚くのも無理はない。
私は近くの机に行き、書類に必要事項を書き込んだ。
といっても、名前、ギルドランク、スキルの二つだけだったけど。
全部記入したとき文字がスーと消えたのはびっくりした。
多分個人情報を守るためだと思うけど。
「よし、これでいいかな」
そして私はまた列に並んだ。
「チッ、あのガキ、私が前から誘ってたっていうのに!!」
「絶対許さない……」
後ろから刺さる憎しみの目線にも気付かずに。




