売られた令嬢、辺境で学者殿下と愛をみつける(短編化)
とびらの様が主催される『あらすじだけ企画』寄稿作です。
そのため、内容は冒頭から終わりまでのあらすじ「だけ」ですので本文はありません。
ご注意ください。
主人公、伯爵令嬢セラスは『成金貴族』と揶揄されていた。
父がカネで爵位を買い、娘のセラスもまた成金と馬鹿にされたのである。
しかし悪評をよそに、セラスは天性の容姿とコツコツ磨いたセンスで社交界の注目を浴びていた。
自分を磨けばいつか物語のように素敵な恋ができるかも、と夢見て。
婚姻の実現は17歳の誕生日。
王族からの求婚だった。
ただしあまり聞かない領地で、しかも辺境。違和感を覚えたが、父の強い勧めもありセラスは避暑も兼ねて領地を訪れる。
けれども到着したセラスは仰天する。すでに婚姻は決定されており、しかも父は娘を置いて帰ろうとした。
問い詰めるセラスに父は理由を話す。
曰く、「この領地にいる方は、王族が隠している超変わり者の王子。妙な研究ばかりしていて『学者殿下』と呼ばれている。いい年(25)して妻がいないので、高いカネを払うから嫁を出してほしいと当家に連絡が来た」
金に飢えた父は申し出を受けた。黙っていたのは、こんな結婚なんて怪しむに決まっているから。
セラスは意思も夢も関係なく売られたのだ。
学者殿下も婚姻を知らず、形式上の新婚夫婦は凍り付く。
◆
婚姻から一月が経過する。
学者殿下は確かに変わり者だった。
屋敷は森のすぐそばで頻繁に虫が出るし、あちこちに怪しい草が生えている。掃除も行き届いていない。
殿下への印象は『偏屈な田舎者』だった。
セラスは使用人にさえ怪しまれ軽んじられたが、殺風景だった屋敷に絵を飾り、おざなりな掃除を指摘し、庭園にも大胆に手を入れた。
近隣の貴族が嫌み半分で尋ねてきても、見事な都会風のもてなしであしらってしまう。
社交界での経験が役立った。
セラスは次第に領民からも慕われ、『奥様』として屋敷を切り盛りするようになる。
そんな妻を、学者殿下はある理由からまるで疎むようにした。
セラスはある日、屋敷で古いドレスを発見する。
気まぐれからそれを身に着け、好きだった恋愛小説を懐かしむ。
その場に学者殿下がやってきて、セラスは慌てて身を隠す。が、慣れない服ですっころぶ。
殿下に助け上げられた時、セラスは恋愛小説で恋に落ちるシーンを思い出した。
学者殿下も着飾った妻に頬を赤らめぎゅっと目を閉じ、「だめだ」と意味深な言葉を残す。
セラスは思う。
この方、もしやわたしに惚れたのでは?
恋への憧れを取り戻したセラスは、殿下から「好きだ」の言葉を引き出し本物の夫婦になるため、行動を起こす。
◆
屋敷で顔を合わせる時間が増え、別々だった食事が一緒になり。
セラスは殿下を『偏屈な田舎者』と思っていたが、注意してみれば素朴な人柄が垣間見えて悪くない(むしろ可愛らしい)。
セラスは研究室にも足を運び、錬金術の研究を知る。
殿下の辺境住まいは、研究する自然が近くにあることと、知識を悪用されないよう人目を避けることだった。
実際、殿下は他の王子から何度か命を狙われたようだ。
使用人は護衛を兼任。セラスが怪まれたのはスパイと疑われたから。
ある日、セラスは森への実地調査へついていき、殿下と一夜を共にする。
昼の暑さと夜の寒さ。けれど自然はそれだけではなくて、発光する虫や静かな夜空がセラスの心を癒す。
王都のような華やかさとも夢見た恋愛小説とも違うが、「これはこれでいい」とセラスは思う。
学者殿下も真意を語る。
殿下はかつて研究を狙われた。突然の婚姻を怪しみ、セラスが研究を狙う何者かの陰謀に巻き込まれていることを懸念した。
そのためあちこちに探りを入れ、セラスを守るため、安全とわかるまで彼女を遠ざけていた。
結局、陰謀の痕跡は見つけられなかったのだが(この時は)。
また、セラスを社交界で見かけたことがあり、努力家な令嬢を密かに見初めてもいた。
「危険な上に華やかでもないが、それでも私の妻でいいのか?」
セラスは頷き、夫婦の思いは通じ合う。
ささやかな結婚式をあげることも決まるが、式の日、殿下は毒を盛られてしまう。
本当はセラスの杯だったが、殿下が庇い代わりに毒杯を飲んでしまった。
◆
看病するセラスは、解毒にとても貴重な材料がいることを発見する。
『青いセイビア』の花だ。
他の王子が派遣したスパイがきて、研究結果の1つ(麻薬の精製)を渡せば、望みの薬草を渡すとセラスに言う。が、夫婦は拒む。
セラスの結婚は他の王子による策略だったことが明らかになる。
研究を守る殿下に妻を持たせ、『人質候補』を作らせたのだ。誤算は毒杯をあおったのがセラスでなく、殿下であったこと。
「死ぬことは怖くないけれど、愛する人を残すのが辛い」
告白する殿下に、セラスは夫を救わなければならないと強く思う。
必死に探すセラスに、領民達が秘密の隠し場所――青いセイビアが自生する洞窟を教えてくれた。
セラスは花を届け、殿下は快方に向かう。
以後、2人は幸せに暮らし、医薬の面から国を支えた。