頭の中の音は
ゲーニーせんせ、にはなしをきくと、よくなったといってわらった。
せんせ、は、よくオレのことを、せわしてくれていた。
さいしょ、はなしをきいてもらったとき、オレのあたまのなかで、なにかきこえるんだと、いったとき、せんせ、はわらいながら、すぐよくなる、よくなるといった。
せんせ、ほんとはよくなってはいないんでしょう。
オレは、じぶんのことだからわかる。
て、すら、まんぞくに、うごかせなくなったのに、よくなったなんて。
せんせ、は、やさしいから。
きおく、に、あるのは、てにひろがるいたみ、からだった。
うみにいって、くらげでもさされた、かなとおもった、のが、さいしょだった。
でもちがったみたいで、ひどく、はれたり、そういう、しょうじょう、はなかった。
あったのは、うでから、あたまに、のびてくるように、はいあがるようにいたみが1しゅうかん、くらいつづいた。
うみには、あるはこを、ひきあげるためにむかっていた。
むかしから、だいびんぐ、がすきで、もぐっていたんだ。
ちょうど1しゅうかん、まえに、そのはこをみつけた。
そのときは、きっとだれかの、いたずら、だろうとおもった。
きれいな、はこだった。
きんいろに、ふちどられた、そのはこは、きっと、ざいほうみたいな、なにかが、はいっていると、おもえるほどだった。
むかしばなしに、でてくる、たからばこ、っていえばわかりやすい。
このあたりは、ちゅうせのじだい、ふねがなんどか、しずんだことがあって、こっとうひんや、びじゅつひんがたまにしゅつどする。
でも、かぎがかかっていて、すぐにあけるには、どうぐがたりなかったから、すぐさま、めじるしになるもの、をきおくして、かえったんだ。
じゅんびをして、つぎのやすみのとき、そのはこがあったあたりに、さいどもぐってみた。
まえ、きたときとおなじ、で、きれいないろをした、はこが、あった。
さいしょきた、ときは、あまりみなかったけれど、よくみるといつつぼしのようなきごうがきざまれていて、どこかのくにのこっきか、あるいは、まじない、のような、なにかきごうにみえた。
うみから、ひきあげるために、いちぶ、さんごでうもれていたから、ほんとうは、そんなことは、してはいけないのだけど、そのさんごを、すこしだけ、けずって、ひきあげた。
ふねにもどって、あけてみると、なかには、ひとつのいしのかけら、がはいって、いた。
みたこと、ないもじ、がかかれて、いて、こうこがく、てきに、たかねになるんだろうな、とおもった。
そのいしのかけら、に、きざまれた、もじをなぞると、とてもおかしなかんじがした。
そのことば、しらないのに、あたまにひびく、ようなかんじをした。
そうしたら、ゆびに、げきつう、がはしった。
いまでは、もう、みぎうでうごかない。
ひだりて、だけで、かいてるから、よみにくい、とおもう。
ゲーニーせんせ、にあいにいったのは、はれ、とかがなくて、いたがっていたから、ひふかの、せんせ、に、しょうかいして、もらった。
せんせ、はやさしく、わたしに、はなしかけてくれた。
「きみの、あたまの、なかに、なにが、ひびくのか」と、せんせは、くびをかしげていった。
ずっと、ずっとひびいてるんだ。
みずが、はいって、くるような、そのおとが、「ビちゃ…びチャ…」と、はいよる、ように、ことばじゃなくて、おとがきこえるんだ。
さいしょ、オレが、ひろった、そのいしのかけらをみて、けんびきょうみたいなもので、その、ひょうめんを、ながめて、いた。
けつえき、けんさ、したけど、もんだいないって、せんせは、いった。
よくじつ、もっとおとがするから、せんせ、にいった。
まるで、こうずいでもおきてるみたいな、「ゴおお…ゴおお…」って、ひびくって。
そういったら、せんせ、は、くすりを、くれた。
きんぞく、みたいな、ぴかぴかしたこなで、なんでも、からだのみねらる、がたりない、からなるんだろうって。
あたまに、みずがたまるようなかんじも、きっとそのせいだろう、って。
せんせ、は、やさしいから、えがおではなしをきいてくれる。
オレのあたまの、なかで、ふくらむかんじが、する。
せんせ、のくすり、をのんだら、もっと、かんじる。
せんせ、あたまが、おもい、どうなって、いるの。
みずのおとがきこえる。
せんせ、が、かがみを、もってきて、オレにみせた。
じぶんでも、わかる、きっとわるくなっている、かおが、ひどく、みずでふくれている。
せんせ、ぜったい、おかしい。
なんでわらって、いるの。
「ほら、良くなっただろう」