⑦(最終話)
最終話ですが短いです。
京香と言葉を交わしながら、段々と体が消えていくのが感覚で分かる。それに気づいたらしい京香は、次第に笑顔が歪み悲しそうな顔でこちらを見てくる。
……ごめんね、京香。でもせっかく僕の好きな笑顔をしてくれたのに。もっと笑ってよ、京香。
僕が京香の笑顔を消した張本人だというのに、そんな身勝手な思いをぶつけてしまいそうになる。だからせめて、京香より先に逝ってしまう前に伝えよう。
恐らくすぐに成仏出来ずに現実世界に留まってしまったのは、いつもは恥ずかしくて言えなかった言葉があるから。隣にいれば京香には伝わると思って、今まで一度も言葉にしなかった五文字の言葉があるから。
きっと幽体でも京香に会わせてくれたことは、神様がくれた最後のチャンスだ。次はない、正真正銘の最後。そう気づいた時、あれだけ照れ臭くて言えなかった五文字の言葉が僕の口からするりと消える直前に出てきた。
まさか京香の姿を最後見ることができて、しかも京香も僕の姿を見れるなんて驚いたけれど、言うなら今しかきっとない。もう、この体はあと数秒で跡形もなく消えるだろう。だから、大好きな京香に僕の最後のプレゼントとして。
「京香、僕は君を愛しているよ。だから、幸せになって」
いつも恥ずかしくて、照れ臭くて、一度も伝えることが出来なかった愛してるの言葉。京香は何気ない日常を過ごす中できちんと言葉で伝えてくれていたのに、僕は誤魔化して不安にさせていた。気付いていたくせにこうなるまで言えなかった僕を、京香は笑いながらもう! 遅いよ亮司って口を尖らせるかな。その姿を見ることが僕にはもう出来ないけれど。ねぇ、京香。ちゃんと受け取ってくれるよね。
──好きよりも最上級の愛の言葉を、大切な君にもう一度。
「京香愛してる」
そうして僕は、最愛の京香の前からいなくなった。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
最初に書きましたが、このお話は別サイトで初めて完結させたお話になります。中学生の頃に書いたお話だったので、小説のイロハも分からないなか手探りで書いていました。
改めて読み直すと書き直したい部分が多かったですが、今回は中学生らしい表現を残したかったため矛盾しているところや状況が分かりにくい部分のところを加筆だけしています。