②
え、京香!?
都内にあるこの地区で、一番大きな病院からずっと探していた京香と誰かが出てきた。病院は探していない場所だ。よく見ると、その誰かは僕の知らない男性で、京香はそいつに寄り掛かっているようだ。
京香、その男は誰? しかもなんで、病院にいるんだ?
疑問が新たな疑問を呼び、僕の小さな頭ではキャパを超え混乱する。こちらに向って来る二人から身を隠さないと、と頭では分かっていても金縛りにあったように身体は動かない。そんな時、風向きが変わり二人の話が聴こえてきた。
『──今でも────信じられ──』
『────ついて──君が──だと────ないかな』
『──ない! ──がいない────生きて──の?』
会話の全部は聞こえてこなかったが、それでも聞き取れた言葉の端々から重たい内容だと分かる。
なぁ、どうして京香はそんなに悲しそうなんだ?
なぁ、どうして京香は泣いているんだ?
なぁ、どうして京香は僕の知らない男性に寄りかかってるんだ?
二人が寄り添う姿を見ながら、僕は働かない頭を懸命に動かしてまとまらない思考で考える。悲しいとき、困ったとき、嬉しいとき、なんでも僕に話してくれたじゃないか、と。
なのになんで、今日に限って僕の隣にお前はいない?
なのになんで、今日に限って僕の知らない男性のそばにいる?
誰か僕に答えを教えてくれよ!
さらに耳を立てて、二人の会話を盗み聞く。と、ある言葉が聞こえた瞬間、僕は全てを思い出した。
なぜ、僕の隣にいつもいるはずの京香はいないのか。
なぜ、京香は話しながら悲しそうに泣いているのか。
なぜ、京香は僕の知らない男性に寄り掛かっているのか。
いくら必死で考えても分からなかった謎は、その言葉で簡単に糸が解けるみたいに解けてしまった。しかし、幾ら頭ではその言葉の意味を理解していても、心の中で信じたくない僕がいる。嘘だろう、と今すぐ二人の間に入り込んで真実を問い質したい。
──だけど、それができないのは、僕はもう、
「亮司くんはもう死んでいるんだ」
残酷で、でもどこか納得できる言葉で京香の隣にいる男はそう言った。
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